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第019話 ダイエットプラン
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太ってしまった。
この世界に来てから、明らかに数キロ肥えている。
ポッコリし始めたお腹を見てそう思った。
「そんな……! 運動量は日本の頃より多いのに……!」
今で絶望に打ちひしがれる私。
理由は単純明快であり、自分でも分かっていた。
「良い物の食べ過ぎだ……」
この世界の食材はとんでもなく安い。
だから、自ずと日本では高くて手が出ないものをよく食べていた。
最高級の牛肉や、フォアグラ、キャビア、トリュフ、エトセトラ……。
頬がリアルに蕩けそうな程に美味しいから、思わず食べ過ぎてしまう。
――その結果がコレだ。
体型を維持することは大事だ。
自分が女であると自覚出来る数少ないポイントだから。
体型まで気にしなくなると完全に女を捨てたことになる。
色恋沙汰に縁の無い私でも、女としての矜持はもっていた。
「よし! ダイエットだ!」
「ワンッ!」「「「ゴブッ!」」」
こうして、私のダイエット生活が幕を開けるのであった。
◇
女性の多くがダイエットで失敗する。
持続不可能なことや不健康な取り組みをするからだ。
食事制限、一過性の激しいエクササイズ、エトセトラ……。
居間にて。
私はレオンに言った。
「ダイエットで大事なのは無理をしないことだよ、分かる?」
レオンは「ワゥン?」と首を傾げた。
それから、「ワンッ!」と元気よく吠える。
本当は分かっていないのに、分かったフリをした!
可愛らしい我が子の知ったかぶりを笑う私。
その頃、ゴブリン達は警備に励んでいた。
「そんなわけで、まずは食材の制限!」
食事量の制限は失敗の源だ。
だから満腹まで食べるという方針は変えない。
その代わり、食材を調整することにした。
「ここで炭水化物を抜く……とかしちゃうと失敗するの!」
「ワンッ!」
脂質や糖質を抑えることは大事だ。
しかし、それらを過剰に抑えると無理が出る。
「今後、私がステーキを食べるのは2週間に1回とする! トリュフにフォアグラ、キャビアはどれか1つのみ月に1回だけ食べてもよいこと!」
食材制限はこの程度でいいだろう。
最近は高級食材ばかり食べていたから、これで十分に効果的。
「そして、今後これまでよりも歩くよ!」
「ワゥーン♪」
私の野外活動時間は、冒険者の中だとかなり少ない。
ゆっくりとした始まりに対し、終わりはとても早いのだ。
もう少し頑張って、今後は夕暮れまで活動しようと思う。
「最後に! 筋トレを始めるよ!」
「ワゥ!?」
私は「ふっふっふ」と不敵な笑みを浮かべる。
それからレオンのモフモフな体毛をなんとく撫でた。
撫でて撫でて、撫で回して、満足したところで説明する。
「筋肉を増やすと消費カロリーが増えるのだ! つまり、同じ運動量でもより効率的に痩せられる!」
腕や脚に筋肉を付けることは大事だ。
勘違いしている人は見た目の変化を恐れて抵抗しがち。
しかし、多少の筋肉を付けたところで見た目は変わらない。
むしろ引き締まることで、よりスタイルがよく見えるのだ。
それはただガリガリに痩せるだけよりもよほど効果的である。
「日本で暮らしていた頃にネットで得た知識をフル活用して、私はスリムなお姉さんに生まれ変わるよ! ファイトー! オー!」
私の「オー」に合わせて、レオンが「ワォーン♪」と吠えた。
「そうと決まれば細かいプランを紙に書こう!」
「ワンッ!」
私は紙に計画を書く作業が好きだ。
残念なことに計画表を作って満足するタイプである。
それはこの国でも遺憾なく発揮された。
「この紙に、この羽根ペンを使い、サクサクッとー♪」
メモメモ、メモメモ。
自己流最強ダイエット法を書き込んでいく。
こうして、無駄に凝った計画表が完成する。
「あとはこれを寝間に張り……」
いちいち口に出しながら実行する。
寝間に移動して、丁寧に作成した計画表をペタリ。
レオンは私の後ろを静かについてきていた。
「これでよし! 準備完了!」
無理のないダイエットプラン。
それを記した分かりやすい計画表。
あとはこのプランを実行に移すのみ。
……なのだけれど。
「今日は計画を考えたから終了! ダイエットは明日からだ!」
「ワォーン♪」
私はお得意の『引き延ばし大作戦』を発動するのであった。
この世界に来てから、明らかに数キロ肥えている。
ポッコリし始めたお腹を見てそう思った。
「そんな……! 運動量は日本の頃より多いのに……!」
今で絶望に打ちひしがれる私。
理由は単純明快であり、自分でも分かっていた。
「良い物の食べ過ぎだ……」
この世界の食材はとんでもなく安い。
だから、自ずと日本では高くて手が出ないものをよく食べていた。
最高級の牛肉や、フォアグラ、キャビア、トリュフ、エトセトラ……。
頬がリアルに蕩けそうな程に美味しいから、思わず食べ過ぎてしまう。
――その結果がコレだ。
体型を維持することは大事だ。
自分が女であると自覚出来る数少ないポイントだから。
体型まで気にしなくなると完全に女を捨てたことになる。
色恋沙汰に縁の無い私でも、女としての矜持はもっていた。
「よし! ダイエットだ!」
「ワンッ!」「「「ゴブッ!」」」
こうして、私のダイエット生活が幕を開けるのであった。
◇
女性の多くがダイエットで失敗する。
持続不可能なことや不健康な取り組みをするからだ。
食事制限、一過性の激しいエクササイズ、エトセトラ……。
居間にて。
私はレオンに言った。
「ダイエットで大事なのは無理をしないことだよ、分かる?」
レオンは「ワゥン?」と首を傾げた。
それから、「ワンッ!」と元気よく吠える。
本当は分かっていないのに、分かったフリをした!
可愛らしい我が子の知ったかぶりを笑う私。
その頃、ゴブリン達は警備に励んでいた。
「そんなわけで、まずは食材の制限!」
食事量の制限は失敗の源だ。
だから満腹まで食べるという方針は変えない。
その代わり、食材を調整することにした。
「ここで炭水化物を抜く……とかしちゃうと失敗するの!」
「ワンッ!」
脂質や糖質を抑えることは大事だ。
しかし、それらを過剰に抑えると無理が出る。
「今後、私がステーキを食べるのは2週間に1回とする! トリュフにフォアグラ、キャビアはどれか1つのみ月に1回だけ食べてもよいこと!」
食材制限はこの程度でいいだろう。
最近は高級食材ばかり食べていたから、これで十分に効果的。
「そして、今後これまでよりも歩くよ!」
「ワゥーン♪」
私の野外活動時間は、冒険者の中だとかなり少ない。
ゆっくりとした始まりに対し、終わりはとても早いのだ。
もう少し頑張って、今後は夕暮れまで活動しようと思う。
「最後に! 筋トレを始めるよ!」
「ワゥ!?」
私は「ふっふっふ」と不敵な笑みを浮かべる。
それからレオンのモフモフな体毛をなんとく撫でた。
撫でて撫でて、撫で回して、満足したところで説明する。
「筋肉を増やすと消費カロリーが増えるのだ! つまり、同じ運動量でもより効率的に痩せられる!」
腕や脚に筋肉を付けることは大事だ。
勘違いしている人は見た目の変化を恐れて抵抗しがち。
しかし、多少の筋肉を付けたところで見た目は変わらない。
むしろ引き締まることで、よりスタイルがよく見えるのだ。
それはただガリガリに痩せるだけよりもよほど効果的である。
「日本で暮らしていた頃にネットで得た知識をフル活用して、私はスリムなお姉さんに生まれ変わるよ! ファイトー! オー!」
私の「オー」に合わせて、レオンが「ワォーン♪」と吠えた。
「そうと決まれば細かいプランを紙に書こう!」
「ワンッ!」
私は紙に計画を書く作業が好きだ。
残念なことに計画表を作って満足するタイプである。
それはこの国でも遺憾なく発揮された。
「この紙に、この羽根ペンを使い、サクサクッとー♪」
メモメモ、メモメモ。
自己流最強ダイエット法を書き込んでいく。
こうして、無駄に凝った計画表が完成する。
「あとはこれを寝間に張り……」
いちいち口に出しながら実行する。
寝間に移動して、丁寧に作成した計画表をペタリ。
レオンは私の後ろを静かについてきていた。
「これでよし! 準備完了!」
無理のないダイエットプラン。
それを記した分かりやすい計画表。
あとはこのプランを実行に移すのみ。
……なのだけれど。
「今日は計画を考えたから終了! ダイエットは明日からだ!」
「ワォーン♪」
私はお得意の『引き延ばし大作戦』を発動するのであった。
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