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第024話 絶望のプロローグ

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 ――時は遡り、ケルベロスジュニアが消えた直後の魔王城にて。
 ヴェルサスアークメイジのミスにより我が子を失ったママケルベロスは、魔王に嘆願していた。地上に行って我が子を捜索し、連れ戻させてくれと。

「まぁ……そういう事情ならば仕方あるまい。よかろう」

 魔王、あっさりと承諾。
 こうして、ママケルベロスの地上行きが決定した。

「速やかに妾を飛ばせ」

 ママケルベロスは謁見の間を出ると、アークメイジに言った。
 アークメイジは楽しそうにゴブリンと戯れながら、首を横に振る。

「ヨホホ、それは無理デース!」
「なぜじゃ? 殺されたいのか、お主」
「違うのデース。貴女様は力が強大故に、転移するには時間を要するのデース。ですから、まずはじっくりと魔力を蓄えなければなり――」
「だったらそこの間抜けと戯れずに頑張らぬか!」

 間抜けとはゴブリンのことだ。
 ゴブリンは両手を広げて、ゴブゴブと嬉しそうに走り回っている。しかし次の瞬間には何もないところで勝手に躓いた。勢い余ってコロコロと転がり、ケルベロスの前足にコテンと頭をぶつける。それが痛かったらしく、頬を膨らませて泣き出した。

「この間抜け、ぶち殺してやろうか」
「わわわ、落ち着いてくだされ。こやつもベイビーですぞぃ」
「何がベイビーじゃ。お主が異次元より召喚した雑魚じゃろう」
「まぁそうでございますが……。それより、準備を始めるのデース」
「うむ。時間を要すると言っておったが、どのくらいかかるのだ?」
「貴女様のような方ですと、呼び戻す為の力も含めて1ヶ月は……」
「長い! 長いが……ジュニアの為ならば仕方あるまいか」

 ママケルベロスは賢いから、ゴネても意味がないと悟る。
 ゴブゴブと泣き喚く雑魚を前足で払い飛ばすと、眠りに就いた。

 ――それから1ヶ月後。

「いよいよでございますぞ!」

 ヴェルサスアークメイジの準備が整った。
 専用の巨大魔方陣を用意し、転移に必要な魔力も十分。

「ところで、お主は転移したモンスターの場所を把握しておるのだろ? 我がジュニアだけ分からぬというのはどういうことじゃ?」

 転移の直前にママケルベロスが尋ねた。

「場所の特定は異界より召喚したモンスターのみ可能なのデース。貴女様のジュニアは貴女様がお腹を痛めて産んだものですから、特定はできないのデース」
「ふん、使えん奴だ」

 アークメイジは「ヨホホホ」と笑って流した。

「正確な位置は分かりませんが、転移先自体は分かっていマース。同じ場所に転移しますから、きっとジュニアを見つけることができマース」
「そうだな。そうでなければ困る」
「ヨホホホ。では、転移を始めマース」

 アークメイジはかつてない力で転移魔法を発動させる。

「ホンダラケッタラハンニャー!」

 謎の詠唱と共に、ママケルベロスの姿が消える。
 その瞬間、アークメイジは「ホッ」と安堵の息をついた。
 転移が無事に成功したのだ。

 こうしてSSS級の最強魔獣が地上に姿を現すことになった。
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