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013 港のトラブル⑤

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 港へ戻るなり、アーシャは英雄待遇で迎えられた。

「アーシャちゃん、本当に大海賊を倒したんだって!?」

「凄いよアーシャちゃん! 凄すぎるよ!」

「アーシャちゃんに足を向けて眠れないなぁ、俺達漁師は!」

「ははは、違いねぇ!」

 全ての漁師が祝福の言葉と拍手を投げかけてくる。

 漁師以外にも、付近に居る者達まで拍手していた。

 おそらくその者達には、何が何やら分からないはずだ。

「えへへぇ♪ アーシャも嬉しいの!」

 アーシャはやや恥ずかしそうに頭をペコリ、ペコリ、ペコリ。

 ペットとして、俺も誇らしい気持ちでいっぱいだった。

 ご主人様アーシャが褒められると、まるで我が事のように嬉しい。

 これも〈テイミング〉の影響だろうけれど、気にはならなかった。

「アーシャちゃん、今後はタダで食材を提供させてくれ!」

 イカ売りの漁師――ゲンジが言った。

 名前は海賊狩りの帰りに知った。

「俺も今後は無料で提供させてもらうぜ!」

「俺だって!」「俺も!」「俺も!」

「そんなもんこの町の漁師なら当たり前やろがい!」

 海賊狩りの恩から、アーシャは海の幸を無料で食える権利を獲得した。

「お金、払わなくて大丈夫なの?」

「もちろんだとも! むしろ払わないでくれ!
 アーシャちゃんから金を取ったら、漁師として恥ずかしいやい!」

「なんたって、大海賊から俺達を救ってくれたのだからさ!」

「そうだそうだ!」

 漁師の勢いに圧倒されるアーシャ。

 少し目をパチクリさせて固まった後――。

「ありがとぉございます、おじちゃん達!」

 ――ニコッと嬉しそうに微笑んだ。

 かくして、町から海賊の脅威が去るのだった。

 ――……。

「あのさぁ、アーシャちゃん……。
 漁師に感謝されるのはね、凄いことだと思うよ。
 おじちゃんもそれは凄く凄く立派なことだと思うけどさぁ。
 これは多すぎるぞい!?」

 その夜、馴染みの酒場は軽く混乱状態に陥っていた。

 漁師がこれでもかと魚を提供してきたからだ。

 氷の敷かれた箱に積まれた魚が、酒場の至る所に置かれている。

 それは厨房やカウンターの内側だけではなく、客席にも至っていた。

「アーシャが全部食べるのー♪」

 アーシャはニコニコ顔でカウンターに座っている。

 両手で頬杖を突き、宙ぶらりんの足を前後にブラブラ。

 俺は隣の席で身体を丸めている。

「アーシャちゃんなら本当に食べきると思うよ。
 だけどさぁ、その為に捌くのは俺だけなんだぜ?
 こんな安酒場に分不相応な量の魚だぞこりゃぁ」

「なっはっは! マスター、泣き言を言ってないで頑張りな!」

「手抜きで丸焼きばっか作るんじゃねぇぞー!」

 常連客の茶化す声が店内を駆け巡る。

「やってやろうじゃねぇかい!」

 その声に後押しされて、マスターは張り切って料理を作り始めた。

「まずは刺身でい!」

「いただきますなのー♪」

「次は唐揚げでい!」

「美味しいのー♪」

 そして、作られる料理の数々を、アーシャはペロリと平らげていく。

「ほんと、アーシャちゃんの胃袋はすげぇぜ」

「どうなってるんだろうなぁ」

 常連客の面々は、アーシャの食べっぷりを肴に酒を楽しむ。

「きょ、今日はもう腕が痛いから終わりでい」

「ごちそうさまなのー♪」

 結局、マスターが先に音を上げた。

 ◇

 食事の後は俺の大好きなお風呂の時間だ。

 この日も俺は女風呂を盛大に楽しんだ。

「可愛い」を連呼して寄ってくる美女達の胸を揉み揉み。

 揉むだけには飽き足らず、顔を埋めたりもした。

 そんなセクハラの限りを尽くしても、なんら問題ない。

 だって俺はドラゴンのベイビーだから。

 何をしようが可愛いのだ。

「グヘヘェ(役得……! 圧倒的役得……!)」

 本日も盛大にスケベ心を満たすのだった。

 ◇

 そんなこんなで充実した1日が終わる。

 そして、また新たな1日が始まるのだった――。
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