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001 プロローグ
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中世の欧風感が漂うファンタジーライクな異世界。
そこに元日本人の俺が転生したのは、随分と昔のことだ。
不慮の事故で死に、天国で神様と話した後、この異世界に転生した。
今となっては、詳しいことはよく覚えていない。
◇
第二の人生は、モンスター牧場を営む両親の一人息子として始まった。
タケルと名付けられ、大きさだけは立派な地方都市の牧場で育った。
しかし、牧場の作業には殆ど携わっていない。
なぜなら、俺は冒険者を志していたからだ。
冒険者とは、モンスターを狩ることを生業とする者。
一方、モンスター牧場では、名の通りモンスターの飼育を行っている。
調教や販売、それに配合といったブリーダー的な一面も。
卵から育てたり、酪農に励んだり、とにかくモンスター愛に溢れていた。
当然、そんなところで作業をすれば、魔物に対して愛着を持つだろう。
その感情は、冒険者になった時に足を引っ張る気がした。
両親も同意見だったので、よほどの時以外は手伝わせなかった。
◇
15歳の時、俺は念願の冒険者になった。
冒険者の基本はパーティーの仲間と戦うチーム戦。
例に漏れることなく、俺もとあるPTに参加することとなった。
驚くことにAランクのPTだ。
Aランクは上から2番目のランクであり、新米の俺には強すぎる。
冒険者ギルドでおろおろしていた俺を見て、リーダーが誘ってくれたのだ。
メンバーは俺よりも一回り以上も年上の人達ばかり。
「ウチに入るからには強くなってくれよな。
いつまでも弱いままじゃ、PTから追放しちゃうぜ?」
笑顔でそう云ったリーダーの顔は、今でも忘れていない。
◇
PTメンバーはランクに恥じない強さをしていた。
俺は最年少だが、それを理由にかまけてはいられない。
仲間達に追いつく為、誰よりも鍛錬に励んだ。
仲間であり先輩でもある皆に、ビシビシとしごいてもらった。
あらゆる系統のスキルを叩き込まれ、武器の扱いも教わった。
「タケル、お前は筋がいいよ」
「タケルは物覚えがいい上に努力家だから教えていて楽しい」
そうやって俺が成長する間、仲間達も成長していく。
俺が追いつくよりも前に、PTのランクはAから最上位のSになっていた。
多くの冒険者から一目を置かれる存在だ。
そんなPTに恥じないよう、もっと頑張ろうと思った。
◇
Sランクになってしばらくした頃。
正確にはPTに入ってから4年が経過した19歳のある日。
「信じられん……!」
「タケル……お前は化け物か……!」
「いつかそんな日がくるとは思っていた。
だがこれは……あまりにも……」
俺の実力が、PTの仲間達と同等の水準に達した。
もう、仲間の足を引っ張ることはない。
むしろ今後は、仲間達を引っ張っていこうと思う。
これまで育ててもらったことに対する恩返しだ。
もっともっと強くなって、PTの格を更に上げよう。
そう心に誓った。
◇
その後も、俺は鍛錬を絶やさなかった。
更に1年が経過した、冒険者5年目。20歳。
慢心してもおかしくない程に、俺は成長していた。
一般的なSランクのPTがチームで倒す敵すらも、ソロで軽く倒せる。
仲間の期待に応えようという思いが、俺をここまで強くした。
「タケル、すまないがPTを抜けてくれ」
だから、こんな瞬間が訪れるとは思わなかった。
◇
王都〈バルフレア〉にある馴染みの溜まり場で、リーダーが云った。
その表情は暗くて、本気だと一目で分かる。
他のメンバーも同じような表情をしていた。
「えっ、それって……追放ですか?」
「そうだ」
理由が分からなかった。
「俺、何かしちゃいました?」
恩に報いるために努力する日々を送っていた。
期待を裏切るようなことは何もしていないはずだ。
「いや、お前は何も悪くない。
品行方正だし、戦闘でも大活躍だ」
「じゃあ、どうして!?」
「強すぎるんだよ、お前は」
「えっ」
頭が真っ白になる。
「成長速度が異常過ぎる。
大半が血反吐を吐いても届かない境地に、俺達は15年掛けて到達した。
それをお前は、たった3・4年で到達した挙げ句、更に進化していった。
正直、お前を見ていると、頼もしさ以上に絶望を感じるんだ」
最近、PTの空気はお世辞にも良くなかった。
揉め事は起きていないはずなのに、どんよりしていたのだ。
理由は不明だったが、俺には関係のないことだと思っていた。
それがまさか、俺が原因だなんて……。
「タケル、すまん」
「ごめん」
「すまない」
「申し訳ない」
メンバーが口々に謝ってくる。
謝られても、どうすることも出来なかった。
「拒否権は……?」
「すまないが、もう決めたことなんだ。
お前の存在は頼もしいが、これ以上は一緒に居られない」
仲間の為に……その思いが裏目に出た。
『いつまでも弱いままじゃ、PTから追放しちゃうぜ?』
PTに加入した当時に、リーダーが云ったセリフが脳裏によぎる。
強すぎるが故に、俺はPTを追放されることになった。
そこに元日本人の俺が転生したのは、随分と昔のことだ。
不慮の事故で死に、天国で神様と話した後、この異世界に転生した。
今となっては、詳しいことはよく覚えていない。
◇
第二の人生は、モンスター牧場を営む両親の一人息子として始まった。
タケルと名付けられ、大きさだけは立派な地方都市の牧場で育った。
しかし、牧場の作業には殆ど携わっていない。
なぜなら、俺は冒険者を志していたからだ。
冒険者とは、モンスターを狩ることを生業とする者。
一方、モンスター牧場では、名の通りモンスターの飼育を行っている。
調教や販売、それに配合といったブリーダー的な一面も。
卵から育てたり、酪農に励んだり、とにかくモンスター愛に溢れていた。
当然、そんなところで作業をすれば、魔物に対して愛着を持つだろう。
その感情は、冒険者になった時に足を引っ張る気がした。
両親も同意見だったので、よほどの時以外は手伝わせなかった。
◇
15歳の時、俺は念願の冒険者になった。
冒険者の基本はパーティーの仲間と戦うチーム戦。
例に漏れることなく、俺もとあるPTに参加することとなった。
驚くことにAランクのPTだ。
Aランクは上から2番目のランクであり、新米の俺には強すぎる。
冒険者ギルドでおろおろしていた俺を見て、リーダーが誘ってくれたのだ。
メンバーは俺よりも一回り以上も年上の人達ばかり。
「ウチに入るからには強くなってくれよな。
いつまでも弱いままじゃ、PTから追放しちゃうぜ?」
笑顔でそう云ったリーダーの顔は、今でも忘れていない。
◇
PTメンバーはランクに恥じない強さをしていた。
俺は最年少だが、それを理由にかまけてはいられない。
仲間達に追いつく為、誰よりも鍛錬に励んだ。
仲間であり先輩でもある皆に、ビシビシとしごいてもらった。
あらゆる系統のスキルを叩き込まれ、武器の扱いも教わった。
「タケル、お前は筋がいいよ」
「タケルは物覚えがいい上に努力家だから教えていて楽しい」
そうやって俺が成長する間、仲間達も成長していく。
俺が追いつくよりも前に、PTのランクはAから最上位のSになっていた。
多くの冒険者から一目を置かれる存在だ。
そんなPTに恥じないよう、もっと頑張ろうと思った。
◇
Sランクになってしばらくした頃。
正確にはPTに入ってから4年が経過した19歳のある日。
「信じられん……!」
「タケル……お前は化け物か……!」
「いつかそんな日がくるとは思っていた。
だがこれは……あまりにも……」
俺の実力が、PTの仲間達と同等の水準に達した。
もう、仲間の足を引っ張ることはない。
むしろ今後は、仲間達を引っ張っていこうと思う。
これまで育ててもらったことに対する恩返しだ。
もっともっと強くなって、PTの格を更に上げよう。
そう心に誓った。
◇
その後も、俺は鍛錬を絶やさなかった。
更に1年が経過した、冒険者5年目。20歳。
慢心してもおかしくない程に、俺は成長していた。
一般的なSランクのPTがチームで倒す敵すらも、ソロで軽く倒せる。
仲間の期待に応えようという思いが、俺をここまで強くした。
「タケル、すまないがPTを抜けてくれ」
だから、こんな瞬間が訪れるとは思わなかった。
◇
王都〈バルフレア〉にある馴染みの溜まり場で、リーダーが云った。
その表情は暗くて、本気だと一目で分かる。
他のメンバーも同じような表情をしていた。
「えっ、それって……追放ですか?」
「そうだ」
理由が分からなかった。
「俺、何かしちゃいました?」
恩に報いるために努力する日々を送っていた。
期待を裏切るようなことは何もしていないはずだ。
「いや、お前は何も悪くない。
品行方正だし、戦闘でも大活躍だ」
「じゃあ、どうして!?」
「強すぎるんだよ、お前は」
「えっ」
頭が真っ白になる。
「成長速度が異常過ぎる。
大半が血反吐を吐いても届かない境地に、俺達は15年掛けて到達した。
それをお前は、たった3・4年で到達した挙げ句、更に進化していった。
正直、お前を見ていると、頼もしさ以上に絶望を感じるんだ」
最近、PTの空気はお世辞にも良くなかった。
揉め事は起きていないはずなのに、どんよりしていたのだ。
理由は不明だったが、俺には関係のないことだと思っていた。
それがまさか、俺が原因だなんて……。
「タケル、すまん」
「ごめん」
「すまない」
「申し訳ない」
メンバーが口々に謝ってくる。
謝られても、どうすることも出来なかった。
「拒否権は……?」
「すまないが、もう決めたことなんだ。
お前の存在は頼もしいが、これ以上は一緒に居られない」
仲間の為に……その思いが裏目に出た。
『いつまでも弱いままじゃ、PTから追放しちゃうぜ?』
PTに加入した当時に、リーダーが云ったセリフが脳裏によぎる。
強すぎるが故に、俺はPTを追放されることになった。
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