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第016話 資本提携①
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「ふ、深い、関係……!?」
俺は唾をゴクリと飲み込んだ。
さらにその後、唾をゴクリと飲み込んだ。
ダメ押しでもう一度、唾をゴクリと飲み込んだ。
アリサに「ゴクゴクしすぎ!」と注意されて正気に戻る。
「あはは、トウヤ君は面白いなぁー。でもね、深い関係っていうのは、別にいやらしい意味じゃないのよ」
「え、そうなんですか?」
ちょっと、いや、かなり落胆する。
どうやらその気持ちが顔に表れていたらしい。
アリサから「ちょっと!」と注意される。
「具体的にいうとね、私とトウヤ君の株を一〇パーセントずつ交換しよって提案なの」
「株式の交換ですか」
「うん。そうやって互いが互いの株式を保有することで、言葉だけの“仲間”だけにとどまらない結びつきを生み出すの」
「たしかに……」
言わんとしていることは理解出来る。
「この提案は別に特別なことじゃないよ。投資ギルドで訊いても教えて貰えるけど、互いに株式を持ち合う行為を『資本提携』って呼ぶの。投資家らしい言い方でいうと、私と資本提携しましょってことね」
資本提携……。
地球に居た頃も聞いたことのあるワードだ。
小難しい経済ニュースでたまに登場していた。
「本来は互いの立場を考慮して、両者の株式保有比率を決めるの。Aランクのベテラン冒険者とFランクの新米冒険者がどちらも同じ比率を保有するのは、価値に差が生じるでしょ?」
その言い分も理解出来た。
要するに、この提案は俺にとって有利過ぎるのだ。
何の価値もない俺と明らかに経験豊富なこの女が同じ比率。
通常であれば考えられないだろう。
だからこそ、二つ返事で「喜んで!」とは言えなかった。
「提案者に訊くのは間違いだと分かっているのですが、俺にとって明らかに好条件過ぎる内容で話を持ちかける理由はなんですか? また、今の質問をしておいてなんなのですが、サラさんと資本提携することで俺に生じるメリットって何があるんですか?」
サラが声を上げて笑った。
「本当にぶっ飛んでいるわね。それでもって素直。しかし抜け目がない。やはり、私の見る目に狂いはなかったよ」
サラはひとしきり笑ってから、俺の質問に答えた。
「現時点での評価だと、たしかにトウヤ君よりも私の方が遙かに高いでしょうね。株価にすると一〇倍を優に超す差があると思う。でもそれはあくまで現状での話。私の能力は既に上限が近づいていて、これ以上の伸び代はそれほど期待できないのよ。でも、トウヤ君は別。これからグングン成長していく可能性があるわけ。その成長性を含めて考えると、私と同等の価値があると判断したわけ。これで、最初の質問に対する答えになったかしら?」
俺は「まぁ、ある程度……」と呟く。
それにしても、えらく評価されたものである。
ゴブリンから逃げ帰る前の俺なら、「妥当な評価だな」と思ったはず。
しかし、今の俺は、もう現実を知ってしまったのだ。
自分がモンスターをバキバキにシバキ倒す英雄ではないと気づいてしまった。
だから、サラが俺のどこに成長性を感じているのかはよく分からない。
「で、次の質問は私と資本提携をすることによってトウヤ君に生じるメリット……だっけ?」
「そうです」
サラは「ふふ」と笑った。
大人の優雅さと、思考を停止させる魅力がある。
うっとりしていると、アリサにテーブルの下で脛を蹴られた。
「トウヤ君のメリットは――」
苦痛で歪みそうになる俺の表情。
それを知ってか知らずか、サラは気にせず話を進めた。
俺は唾をゴクリと飲み込んだ。
さらにその後、唾をゴクリと飲み込んだ。
ダメ押しでもう一度、唾をゴクリと飲み込んだ。
アリサに「ゴクゴクしすぎ!」と注意されて正気に戻る。
「あはは、トウヤ君は面白いなぁー。でもね、深い関係っていうのは、別にいやらしい意味じゃないのよ」
「え、そうなんですか?」
ちょっと、いや、かなり落胆する。
どうやらその気持ちが顔に表れていたらしい。
アリサから「ちょっと!」と注意される。
「具体的にいうとね、私とトウヤ君の株を一〇パーセントずつ交換しよって提案なの」
「株式の交換ですか」
「うん。そうやって互いが互いの株式を保有することで、言葉だけの“仲間”だけにとどまらない結びつきを生み出すの」
「たしかに……」
言わんとしていることは理解出来る。
「この提案は別に特別なことじゃないよ。投資ギルドで訊いても教えて貰えるけど、互いに株式を持ち合う行為を『資本提携』って呼ぶの。投資家らしい言い方でいうと、私と資本提携しましょってことね」
資本提携……。
地球に居た頃も聞いたことのあるワードだ。
小難しい経済ニュースでたまに登場していた。
「本来は互いの立場を考慮して、両者の株式保有比率を決めるの。Aランクのベテラン冒険者とFランクの新米冒険者がどちらも同じ比率を保有するのは、価値に差が生じるでしょ?」
その言い分も理解出来た。
要するに、この提案は俺にとって有利過ぎるのだ。
何の価値もない俺と明らかに経験豊富なこの女が同じ比率。
通常であれば考えられないだろう。
だからこそ、二つ返事で「喜んで!」とは言えなかった。
「提案者に訊くのは間違いだと分かっているのですが、俺にとって明らかに好条件過ぎる内容で話を持ちかける理由はなんですか? また、今の質問をしておいてなんなのですが、サラさんと資本提携することで俺に生じるメリットって何があるんですか?」
サラが声を上げて笑った。
「本当にぶっ飛んでいるわね。それでもって素直。しかし抜け目がない。やはり、私の見る目に狂いはなかったよ」
サラはひとしきり笑ってから、俺の質問に答えた。
「現時点での評価だと、たしかにトウヤ君よりも私の方が遙かに高いでしょうね。株価にすると一〇倍を優に超す差があると思う。でもそれはあくまで現状での話。私の能力は既に上限が近づいていて、これ以上の伸び代はそれほど期待できないのよ。でも、トウヤ君は別。これからグングン成長していく可能性があるわけ。その成長性を含めて考えると、私と同等の価値があると判断したわけ。これで、最初の質問に対する答えになったかしら?」
俺は「まぁ、ある程度……」と呟く。
それにしても、えらく評価されたものである。
ゴブリンから逃げ帰る前の俺なら、「妥当な評価だな」と思ったはず。
しかし、今の俺は、もう現実を知ってしまったのだ。
自分がモンスターをバキバキにシバキ倒す英雄ではないと気づいてしまった。
だから、サラが俺のどこに成長性を感じているのかはよく分からない。
「で、次の質問は私と資本提携をすることによってトウヤ君に生じるメリット……だっけ?」
「そうです」
サラは「ふふ」と笑った。
大人の優雅さと、思考を停止させる魅力がある。
うっとりしていると、アリサにテーブルの下で脛を蹴られた。
「トウヤ君のメリットは――」
苦痛で歪みそうになる俺の表情。
それを知ってか知らずか、サラは気にせず話を進めた。
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