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第025話 大規模作戦 村の殲滅編③

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 何の問題もなく、村の包囲が完了した。
 大丈夫だろうけれども、一応は探知スキルの【ディテクティング】を警戒して、村の周囲五〇メートルには近づかない。
 なにせ一週間前に冒険者の半数を失っているからな。
 監視していた限りは確認できなかったが、本土から高ランクの冒険者を援軍として呼んでいる可能性もある。

 村は静寂に包まれていた。
 木の柵で囲まれているが、衛兵の姿はない。
 北と南に門があり、中には木造の家が並んでいる。
 窓からは灯りが漏れていた。かがり火は門の周囲にしかない。

「聞こえるか、お前達」

 俺は【交信】を使って全てのゴブリンに話しかけた。
 一斉に「聞こえます!」と張り切った言葉が返ってくる。
 声が脳に響きすぎて、身体がビクッと震えてしまった。
 凄まじいやる気だ。

「よし、では作戦を開始する。村にブルーマを投げ込め!」

 俺の合図で、九〇の小隊が四方八方から村に駆け寄る。
 一つの小隊につき、ゴブリンの数は四体。つまり三六〇体だ。
 そいつらは皆、左右の手にブルーマを持っている。つまり七二〇瓶。
 前回の大爆殺とは比較にならない数のブルーマだ。

「ゴブリンに栄光を!」
「これが新時代のゴブリン戦術だぁ!」
「くたばれ人間! 滅せよ!」

 ゴブリン達が好き勝手に叫び、ブルーマを投げつける。
 その間、導火線担当は必死に導火線を引いていた。
 せわしなく走り、あくせく作業に取りかかっている。

「なんだ?」
「外が騒がしいぞ」
「それに何か臭うわ」

 民家から村人達が出てくる。
 そして、飛び交うブルーマ瓶と大量のゴブリンを視認。

「「「ゴ、ゴブリンだぁ!!」」」

 絶叫が周囲の森に響き渡る。

「導火線に火を付けろ!」
「「「「了解!」」」」

 着火担当のゴブリン四体が返事する。
 その次には、四体から同時に「完了しました!」の報告が入った。
 前回とは規模の違うフレイムロードが村に襲い掛かる。
 まずは村を囲む木の柵が炎上した。

「きゃあああ!」
「火事よ! ゴブリンが火を付けた!」
「どうして……! ゴブリンにそんな知能があるはず……!」
「なんでもいい! 消火しないと!!」
「ダメ! 火の回りが早すぎて間に合わない!」

 村人共がパニックに陥る中、炎は次の段階に移行する。
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