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アマリア・アルバートン/フローラ・エインズワース

私が望むこと

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もうこれでいいのかもしれないと遠のく意識の中で思っていた。

私が生きる以上、ヘンドリックとラウルの争いを避けられないのかもしれないと。

そもそも、私がいなければよかったんじゃないかと体から力がどんどん抜けていくのを感じながら考えていた。

ああ、それでもやっぱりもう一度会いたい。

そう思っていたとき、私の愛しい人達の声が聞こえた。神様、神様、欲深い私のためにこんな最後の夢を見せてくださってありがとうございます。私の最後の望みを叶えてくださってありがとうございます。



「私の愛しい人達…私の大事な息子達…争わないで…私が死んでも、誰も責めないで…自分を責めないで…。私は…幸せだったから…」



喉を塞ぐように溢れる血が私の声を奪っていく。私を呼ぶ声がするのに、私を抱きしめる温もりを感じるのに、もう何も返してあげられない。



あなたを一生愛すると誓ったのに、もうできないみたい。あなたの裏切りを知っても、あなたを想う気持ちが消えなかったことに自分で自分が愚かだと思うほど、あなたを愛していたわ。



あなたとやり直すと言ったばかりなのに、やっぱり私は言葉だけの頼りない母親だったみたい。



あなたの愛に応えると言いながら、あなたに何も打ち明けられなかった…。最後まで私を愛してくれてありがとう。あなたの妻になりたかった。



あなたが笑顔で私を母として受け入れてくれた喜びを私は決して忘れない。あの人をお願いね。



私の想いが私の手からこぼれ落ちていくと、体も心もすっと軽くなった。

ああ、これで私が逝くことに後悔はないわ。



瞼を閉じてから、どれほどの時間が経ったのだろう。

私の髪を優しく撫でる感触に泣きたくなった。心地よくてこのまま深く眠ってしまいたかった。

頬に触れる柔らかい感触にふと目を開けた。私の顔を覗き込む赤ちゃんの顔があった。

黒い髪に青い瞳、白い肌。

その子は美しい女性に抱きあげられた。どこか見覚えがあるのに、誰なのか思い出せない。でも、どこか懐かしくて、その瞳の奥にどこか愛おしさを感じてしまう。

その女性は私の腕をそっと握り、笑顔を見せて歩き出した。私はまるで幼子のように手をつなぎ彼女の腕に抱かれた赤ちゃんに微笑みかけた。

私に手を伸ばしたその子を彼女の腕から受け止め、ぎゅっと抱きしめた。私の肩に置かれた手に気づいてふと顔を上げると、目の前には私が会いたくて会いたくてたまらなかった人達がいた。



「お義父様…お義姉様…」



クリスティお義姉様はご自分の足で立たれていた。お義父様も元気そうに微笑まれていた。そして、その横に私の手を引いてくれていた女性がそっと寄り添っていた。

涙が溢れる私の頬をぺちぺちと叩く子を見下ろして、泣きながら笑った。

私とその子ごと、お義姉様とお義父様が抱きしめてくれた。



「ごめんなさい、アマリア。あなたをこんなに苦しめて。こんなに痛い思いをさせて。こんなに…泣かせてしまって…」



「何の役にも立たずに逝ってしまってすまなかった」



「いいえ、いいえ、お義父様、お義姉様。私はお二人に支えられてきました。幸せでした。それに、この子のこともこうしてみてくださっていたんですね」



胸に抱かれた我が子はにこにこと笑いながら指をしゃぶっている。それをぎゅうぎゅうと抱き寄せ、何度も何度も口付けた。



「愛しい子。私のもとに生まれてきてくれたのに、長い間一人にしてごめんなさい。でも、もう大丈夫よ」



額を合わせ、にこりと微笑みもう一度抱きしめた。



「私がこちらに来たときにはね、ジョスリンがこの子と遊んでいたんだよ。まだそのときはこんな風に上手に抱かれてもくれなかった」



え?と不思議に思いお義父様を見ると、息子はきゃっきゃっと声を上げてお義父様の元へといってしまった。



「こっちの時間はあっちの時間よりとてもゆっくりなんだよ。だから、そんなに急いでこっちに来る必要はないから。もう少しあっちで自分の生きたいように生きてごらん?」



「ええ。もう何にも縛られずに、あなたの生きたいように生きてちょうだい」



「そんな…やっとお会いできたのに…」



「もう死んでしまった私達より、あちらの人達と過ごしてきて?大丈夫。この子はあなたが来るまで決して一人にはしないわ」



我が子はあーあーと言いながらお義父様の髪を引っ張っている。

お義姉様がそっと私に歩み寄り、耳元で囁いた。



「もうひとつだけ、私のお願いを聞いてほしいの。私の最後の心残りをあの人に伝えてくれる?」



そう言って笑顔で告げられた言葉に驚くと、お義姉様は目を細めた。

お義父様とお義母様が私とお義姉様を包み込み抱きしめた。私の頬に愛しい我が子の手が触れた時、その世界が消えてしまった。







瞼を開けるとそこには、ぼろぼろの顔をしたラウルがいた。「ひどい顔ね…」とつぶやくと、赤い瞳からいくつもの雫がこぼれ落ち、彼が握りしめていた私の手を濡らした。
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