上 下
29 / 34
おまけ

3

しおりを挟む
「あーあ、何でここにいるんだろうね。」

「さあ。」

「本当なら、家でイチャイチャしてアルのエロ「黙れ!」…ちっ。」

こんな大勢が行き交う道で話す内容ではないことを平気で口にしてくるものだから、慌てて口を塞いだのに舌打ちをされる。

「ブラッドが1日中って言うからだろ!」

「何が?」

「なっ?!」

「何を1日中って言ったけ?」

すっとぼけて見せるが可愛くない。逆にイラつかせ、機嫌を悪くするだけなのに何故こうも揶揄ってくるのだろうか。

そんなにも俺に卑猥じみた言葉を言わせたいのだろうか。

「もう、知らねえ。」

相手をすることが面倒臭くなり、ブラッドを置いていくことにした。まあ、くっつき虫みたいにずっとついて回るんだけどね。

そもそも、ブラッドが部屋に篭ってヤリまくろうと言ったせいだ。俺には絶倫に付き合う体力なんかない。

「ん?」

少し先にどこか見覚えのある人が見える。でも、誰なのかが分からなくて首を傾げてみると、向こうは一直線に駆け寄ってきた。

「アルフ・クラークソン様!」

「ゔぇ?!」

いきなり手を握り締めて、顔を近付けてくるものだから変な声が出る。

「ああ、お会いしたかったです。」

「へっ?!」

涙を溢しているものだから、顔が引き攣ってしまう。

いや、誰…

「触るな。」

「あっ!」

ブラッドは容赦なく女性の腕を振り払って、俺を背後に隠してくる。

「貴方、何するんです?!」

「アル、行こう。」

「え?!」

女性の言葉を無視して足を進めようとするので、抵抗するように身体に力を込める。そうすると、予想通りに不機嫌MAXの表情を向けてくる。

「御令嬢、護衛のご無礼をお許し下さい。」

兼護衛です。」

「おい!」

ブラッドを睨み付けると、フンという効果音が付きそうなくらいにそっぽを向く。

お願いだから、話をややかしい方向に向けないでくれ…!

「いえ、大丈夫です。私の方こそ、ご無礼をお許し下さい。」

「はい、大丈夫ですよ。」

愛想笑いを浮かべると御令嬢は両手を広げてグッと力を込める。何をしようとしているのか分からずに首を傾げると、彼女は恥ずかしそうに咳払いをする。

「すみません、つい抱き締めたくなってしまって…」

……は?

両手を頬に添えて赤る姿が目に映る。

この人、ヤバい。そう直感したと同時に背中に冷や汗が流れる。

表情が強張ったせいだろうか。多分、そうだろう。御令嬢は慌てて両手と首を振って見せる。

「警戒しないで下さい!ただ、私は10歳の頃からアルフ・クラークソン様のファンなんです!ただ、クラークソン様との時間を空想して楽しんでるだけです!」

「…そうなんですか。それはありがとうございます。用事がありますので失礼致します。」

御令嬢が何やら言葉を発していた気がしたが、俺はブラッドの手を掴んで少し早歩きで歩いた。

何、あれ…怖い。

あんな人に勝手に想像されていると考えると身震いがする。別に想像されるくらいなら良い。でも、あの人の君の悪い笑みを見た瞬間、寒気がした。

「アルフ。」

「あっ。」

急に方向転換をして人気のない道に連れ込まれるとブラッドに抱き締められた。それによって、自分の身体が震えていたことに気付いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

顔だけが取り柄の俺、それさえもひたすら隠し通してみせる!!

彩ノ華
BL
顔だけが取り柄の俺だけど… …平凡に暮らしたいので隠し通してみせる!! 登場人物×恋には無自覚な主人公 ※溺愛 ❀気ままに投稿 ❀ゆるゆる更新 ❀文字数が多い時もあれば少ない時もある、それが人生や。知らんけど。

案外、悪役ポジも悪くない…かもです?

彩ノ華
BL
BLゲームの悪役として転生した僕はBADエンドを回避しようと日々励んでいます、、 たけど…思いのほか全然上手くいきません! ていうか主人公も攻略対象者たちも僕に甘すぎません? 案外、悪役ポジも悪くない…かもです? ※ゆるゆる更新 ※素人なので文章おかしいです!

悪役令嬢に転生したが弟が可愛すぎた!

ルカ
BL
悪役令嬢に転生したが男だった! ヒロインそっちのけで物語が進みゲームにはいなかった弟まで登場(弟は可愛い) 僕はいったいどうなるのー!

眠り姫

虹月
BL
 そんな眠り姫を起こす王子様は、僕じゃない。  ただ眠ることが好きな凛月は、四月から全寮制の名門男子校、天彗学園に入学することになる。そこで待ち受けていたのは、色々な問題を抱えた男子生徒達。そんな男子生徒と関わり合い、凛月が与え、与えられたものとは――。

過保護な不良に狙われた俺

ぽぽ
BL
強面不良×平凡 異能力者が集まる学園に通う平凡な俺が何故か校内一悪評高い獄堂啓吾に呼び出され「付き合え」と壁ドンされた。 頼む、俺に拒否権を下さい!! ━━━━━━━━━━━━━━━ 王道学園に近い世界観です。

どうやら手懐けてしまったようだ...さて、どうしよう。

彩ノ華
BL
ある日BLゲームの中に転生した俺は義弟と主人公(ヒロイン)をくっつけようと決意する。 だが、義弟からも主人公からも…ましてや攻略対象者たちからも気に入れられる始末…。 どうやら手懐けてしまったようだ…さて、どうしよう。

平凡な俺、何故かイケメンヤンキーのお気に入りです?!

彩ノ華
BL
ある事がきっかけでヤンキー(イケメン)に目をつけられた俺。 何をしても平凡な俺は、きっとパシリとして使われるのだろうと思っていたけど…!? 俺どうなっちゃうの~~ッ?! イケメンヤンキー×平凡

さむいよ、さみしいよ、

moka
BL
僕は誰にも愛されない、、、 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 人を信じることをやめた奏が学園で色々な人と出会い信じること、愛を知る物語です。

処理中です...