21 / 34
21
しおりを挟む
少し休んでから登校した学校は、心臓がドキドキして緊張した。数日休んだこともあり、再び視線が集まっている気がするがもう気にすることはやめた。
俺を襲った先輩はもちろん学校をクビになったらしい。そして、伯爵家の怒りだけでなく、様々なところから怒りを買ったことから、爵位略奪だけでなく国外追放となったらしい。
アルフは一つ呼吸をすると教室の扉を開けた。一斉に視線が向けられると、その次は席を立って駆け寄ってきた。
「アルフ様ー!」
「アルフ様、大丈夫でしょうか?」
こんなに心配してくれる人がいると思っていなかったので、じんわりと胸が温かくなる。だから、アルフは恥ずかしく感じながらもお礼の言葉を述べた。
「心配してくれてありがとう。」
その瞬間、クラスメイトたちの表情は固まった。そして、すぐに騒ぎ出してはもう一度言ってくださいと言ってくる。
よく分からないが、必死に伝えてくる彼らが面白くて声を出して笑い始まるとピロンという音が耳に届いた。目元を拭いながら視線を前に向けると、今度はこっちが固まる番となった。
「えっ?」
一斉に携帯を向けられていたからだ。その中には涙を流しているものもおり、何が起こったのか目を疑った。後ろに振り返ってみるとそこには少し呆れたように立ち尽くすブラッドとイニスがいるばかりである。
二人と視線が合うと彼らは苦笑いを浮かべながら、近寄ってきて皆んなから隠すように立ち塞がる。
「はいはい、録画止めて。アルが困ってるでしょ?」
「反射神経は凄かったけど、もう止めといた方がいいよ。」
次第にクラスメイトたちは携帯を下ろして画面を覗いたり、嬉しそうに笑い出す。そして、満足すると携帯をしまい始めた。
「なあ、皆んな何を撮りたかったんだ?」
ブラッドの服の裾を引っ張ると溜息を吐かれた。すると代わりに答えるようにイニスが口を開く。
「アルフの満面の笑顔だよ。」
「え?そんなん要らなく「「要ります!!」……はい。」
有無を言わさない圧力を四方から感じて押し黙ると、近くにいたクラスメイトたちが何やら熱弁し始めた。俺の笑顔について…
素晴らしいとか涙が出るとか言われても理解が出来なかった。恥ずかしさの頂点で頬を赤く染めたらまたもや携帯を向けられた。
なるほど…。俺の笑顔は人から好かれるものなのか。異常な反応を受けて、ふっと両親が他の人に笑顔を見せるなと入学式の時に言っていたことを思い出した。
なら、お父様もお母様も俺の笑顔が好きっということか?今更になってようやく気付き、これからはもっと笑顔を見せてみようと思った。
それから昼放課になって昼食を食べ終えた頃に、意外な人物がクラスに訪れた。
自分と同じ伯爵令息のなった男に手を握り締められたかと思うと、それをブラッドが振り払った。
「アンタ、何しにここにきた?」
「お前邪魔!なあ、アルフ俺にも笑顔見せろ!」
「はあ?」
「こっちの階まで噂で持ちきりなんだよ!」
2回生の階はアルフのクラスよりも6階ほど上にある。しかも、学年ごとに閉鎖的なので他学年の情報が回ることは滅多にない。
「カラン、教室に帰れ。」
「なら、笑え。」
「笑えって言われて笑えるほど器用じゃない。」
「なら、俺と婚約し「しない「「ふざけんな!」」
カランに俺の言葉が、俺の言葉にブラッドとイニスが被せてきた。
「何でだよ!好きなやついないんだろ?!」
好きなやつ、その言葉に反応するように肩を震わせると教室は一気にシーンと静まり返る。目の前の男に関してはわなわなと震えて口を開け閉めしている。
「…嘘だろ。え、出来たの?」
「もう、いいから帰れ!!」
扉を指さすとカランはダンっと机を叩いて前のめりになってくる。
「誰だよ?!」
そう怒鳴ると同時に授業がもうすぐ始めるチャイムが鳴る。それでもカランはギリギリまで聞き出そうと粘ってはいたが、ついに諦めて教室から出て行った。
我が高校はズル休みを決して許しておらず、もし行ったら即退学となる。中退は将来にに響いてくるため、皆んな真面目に授業を受けている。
やっと目障りなやつが消えたと思ったが周りからは痛い視線を感じた。自分と特に親しい者の一人は嬉しそうにニヤニヤと笑い、もう一人は複雑そうな表情をしていた。
俺を襲った先輩はもちろん学校をクビになったらしい。そして、伯爵家の怒りだけでなく、様々なところから怒りを買ったことから、爵位略奪だけでなく国外追放となったらしい。
アルフは一つ呼吸をすると教室の扉を開けた。一斉に視線が向けられると、その次は席を立って駆け寄ってきた。
「アルフ様ー!」
「アルフ様、大丈夫でしょうか?」
こんなに心配してくれる人がいると思っていなかったので、じんわりと胸が温かくなる。だから、アルフは恥ずかしく感じながらもお礼の言葉を述べた。
「心配してくれてありがとう。」
その瞬間、クラスメイトたちの表情は固まった。そして、すぐに騒ぎ出してはもう一度言ってくださいと言ってくる。
よく分からないが、必死に伝えてくる彼らが面白くて声を出して笑い始まるとピロンという音が耳に届いた。目元を拭いながら視線を前に向けると、今度はこっちが固まる番となった。
「えっ?」
一斉に携帯を向けられていたからだ。その中には涙を流しているものもおり、何が起こったのか目を疑った。後ろに振り返ってみるとそこには少し呆れたように立ち尽くすブラッドとイニスがいるばかりである。
二人と視線が合うと彼らは苦笑いを浮かべながら、近寄ってきて皆んなから隠すように立ち塞がる。
「はいはい、録画止めて。アルが困ってるでしょ?」
「反射神経は凄かったけど、もう止めといた方がいいよ。」
次第にクラスメイトたちは携帯を下ろして画面を覗いたり、嬉しそうに笑い出す。そして、満足すると携帯をしまい始めた。
「なあ、皆んな何を撮りたかったんだ?」
ブラッドの服の裾を引っ張ると溜息を吐かれた。すると代わりに答えるようにイニスが口を開く。
「アルフの満面の笑顔だよ。」
「え?そんなん要らなく「「要ります!!」……はい。」
有無を言わさない圧力を四方から感じて押し黙ると、近くにいたクラスメイトたちが何やら熱弁し始めた。俺の笑顔について…
素晴らしいとか涙が出るとか言われても理解が出来なかった。恥ずかしさの頂点で頬を赤く染めたらまたもや携帯を向けられた。
なるほど…。俺の笑顔は人から好かれるものなのか。異常な反応を受けて、ふっと両親が他の人に笑顔を見せるなと入学式の時に言っていたことを思い出した。
なら、お父様もお母様も俺の笑顔が好きっということか?今更になってようやく気付き、これからはもっと笑顔を見せてみようと思った。
それから昼放課になって昼食を食べ終えた頃に、意外な人物がクラスに訪れた。
自分と同じ伯爵令息のなった男に手を握り締められたかと思うと、それをブラッドが振り払った。
「アンタ、何しにここにきた?」
「お前邪魔!なあ、アルフ俺にも笑顔見せろ!」
「はあ?」
「こっちの階まで噂で持ちきりなんだよ!」
2回生の階はアルフのクラスよりも6階ほど上にある。しかも、学年ごとに閉鎖的なので他学年の情報が回ることは滅多にない。
「カラン、教室に帰れ。」
「なら、笑え。」
「笑えって言われて笑えるほど器用じゃない。」
「なら、俺と婚約し「しない「「ふざけんな!」」
カランに俺の言葉が、俺の言葉にブラッドとイニスが被せてきた。
「何でだよ!好きなやついないんだろ?!」
好きなやつ、その言葉に反応するように肩を震わせると教室は一気にシーンと静まり返る。目の前の男に関してはわなわなと震えて口を開け閉めしている。
「…嘘だろ。え、出来たの?」
「もう、いいから帰れ!!」
扉を指さすとカランはダンっと机を叩いて前のめりになってくる。
「誰だよ?!」
そう怒鳴ると同時に授業がもうすぐ始めるチャイムが鳴る。それでもカランはギリギリまで聞き出そうと粘ってはいたが、ついに諦めて教室から出て行った。
我が高校はズル休みを決して許しておらず、もし行ったら即退学となる。中退は将来にに響いてくるため、皆んな真面目に授業を受けている。
やっと目障りなやつが消えたと思ったが周りからは痛い視線を感じた。自分と特に親しい者の一人は嬉しそうにニヤニヤと笑い、もう一人は複雑そうな表情をしていた。
33
お気に入りに追加
1,769
あなたにおすすめの小説
顔だけが取り柄の俺、それさえもひたすら隠し通してみせる!!
彩ノ華
BL
顔だけが取り柄の俺だけど…
…平凡に暮らしたいので隠し通してみせる!!
登場人物×恋には無自覚な主人公
※溺愛
❀気ままに投稿
❀ゆるゆる更新
❀文字数が多い時もあれば少ない時もある、それが人生や。知らんけど。
案外、悪役ポジも悪くない…かもです?
彩ノ華
BL
BLゲームの悪役として転生した僕はBADエンドを回避しようと日々励んでいます、、
たけど…思いのほか全然上手くいきません!
ていうか主人公も攻略対象者たちも僕に甘すぎません?
案外、悪役ポジも悪くない…かもです?
※ゆるゆる更新
※素人なので文章おかしいです!
どうやら手懐けてしまったようだ...さて、どうしよう。
彩ノ華
BL
ある日BLゲームの中に転生した俺は義弟と主人公(ヒロイン)をくっつけようと決意する。
だが、義弟からも主人公からも…ましてや攻略対象者たちからも気に入れられる始末…。
どうやら手懐けてしまったようだ…さて、どうしよう。
眠り姫
虹月
BL
そんな眠り姫を起こす王子様は、僕じゃない。
ただ眠ることが好きな凛月は、四月から全寮制の名門男子校、天彗学園に入学することになる。そこで待ち受けていたのは、色々な問題を抱えた男子生徒達。そんな男子生徒と関わり合い、凛月が与え、与えられたものとは――。
平凡な俺、何故かイケメンヤンキーのお気に入りです?!
彩ノ華
BL
ある事がきっかけでヤンキー(イケメン)に目をつけられた俺。
何をしても平凡な俺は、きっとパシリとして使われるのだろうと思っていたけど…!?
俺どうなっちゃうの~~ッ?!
イケメンヤンキー×平凡
過保護な不良に狙われた俺
ぽぽ
BL
強面不良×平凡
異能力者が集まる学園に通う平凡な俺が何故か校内一悪評高い獄堂啓吾に呼び出され「付き合え」と壁ドンされた。
頼む、俺に拒否権を下さい!!
━━━━━━━━━━━━━━━
王道学園に近い世界観です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる