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少し休んでから登校した学校は、心臓がドキドキして緊張した。数日休んだこともあり、再び視線が集まっている気がするがもう気にすることはやめた。

俺を襲った先輩はもちろん学校をクビになったらしい。そして、伯爵家の怒りだけでなく、様々なところから怒りを買ったことから、爵位略奪だけでなく国外追放となったらしい。

アルフは一つ呼吸をすると教室の扉を開けた。一斉に視線が向けられると、その次は席を立って駆け寄ってきた。

「アルフ様ー!」

「アルフ様、大丈夫でしょうか?」

こんなに心配してくれる人がいると思っていなかったので、じんわりと胸が温かくなる。だから、アルフは恥ずかしく感じながらもお礼の言葉を述べた。

「心配してくれてありがとう。」

その瞬間、クラスメイトたちの表情は固まった。そして、すぐに騒ぎ出してはもう一度言ってくださいと言ってくる。

よく分からないが、必死に伝えてくる彼らが面白くて声を出して笑い始まるとピロンという音が耳に届いた。目元を拭いながら視線を前に向けると、今度はこっちが固まる番となった。

「えっ?」

一斉に携帯を向けられていたからだ。その中には涙を流しているものもおり、何が起こったのか目を疑った。後ろに振り返ってみるとそこには少し呆れたように立ち尽くすブラッドとイニスがいるばかりである。

二人と視線が合うと彼らは苦笑いを浮かべながら、近寄ってきて皆んなから隠すように立ち塞がる。

「はいはい、録画止めて。アルが困ってるでしょ?」

「反射神経は凄かったけど、もう止めといた方がいいよ。」

次第にクラスメイトたちは携帯を下ろして画面を覗いたり、嬉しそうに笑い出す。そして、満足すると携帯をしまい始めた。

「なあ、皆んな何を撮りたかったんだ?」

ブラッドの服の裾を引っ張ると溜息を吐かれた。すると代わりに答えるようにイニスが口を開く。

「アルフの満面の笑顔だよ。」

「え?そんなん要らなく「「要ります!!」……はい。」

有無を言わさない圧力を四方から感じて押し黙ると、近くにいたクラスメイトたちが何やら熱弁し始めた。俺の笑顔について…

素晴らしいとか涙が出るとか言われても理解が出来なかった。恥ずかしさの頂点で頬を赤く染めたらまたもや携帯を向けられた。

なるほど…。俺の笑顔は人から好かれるものなのか。異常な反応を受けて、ふっと両親が他の人に笑顔を見せるなと入学式の時に言っていたことを思い出した。

なら、お父様もお母様も俺の笑顔が好きっということか?今更になってようやく気付き、これからはもっと笑顔を見せてみようと思った。

それから昼放課になって昼食を食べ終えた頃に、意外な人物がクラスに訪れた。

自分と同じ伯爵令息のなった男に手を握り締められたかと思うと、それをブラッドが振り払った。

「アンタ、何しにここにきた?」

「お前邪魔!なあ、アルフ俺にも笑顔見せろ!」

「はあ?」

「こっちの階まで噂で持ちきりなんだよ!」

2回生の階はアルフのクラスよりも6階ほど上にある。しかも、学年ごとに閉鎖的なので他学年の情報が回ることは滅多にない。

「カラン、教室に帰れ。」

「なら、笑え。」

「笑えって言われて笑えるほど器用じゃない。」

「なら、俺と婚約し「しない「「ふざけんな!」」

カランに俺の言葉が、俺の言葉にブラッドとイニスが被せてきた。

「何でだよ!好きなやついないんだろ?!」

好きなやつ、その言葉に反応するように肩を震わせると教室は一気にシーンと静まり返る。目の前の男に関してはわなわなと震えて口を開け閉めしている。

「…嘘だろ。え、出来たの?」

「もう、いいから帰れ!!」

扉を指さすとカランはダンっと机を叩いて前のめりになってくる。

「誰だよ?!」

そう怒鳴ると同時に授業がもうすぐ始めるチャイムが鳴る。それでもカランはギリギリまで聞き出そうと粘ってはいたが、ついに諦めて教室から出て行った。

我が高校はズル休みを決して許しておらず、もし行ったら即退学となる。中退は将来にに響いてくるため、皆んな真面目に授業を受けている。

やっと目障りなやつが消えたと思ったが周りからは痛い視線を感じた。自分と特に親しい者の一人は嬉しそうにニヤニヤと笑い、もう一人は複雑そうな表情をしていた。
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