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迎えの時間が近付くとアルフはブラッドの家に待って行く、手土産を買って街を出た。朝、送ってくれた場所に馬車は到着しており、2人は乗り込んでそのままバビントン家に向かった。
久しぶりにこんなに歩いたので足は少し痛く感じた。だが、なんだかんだ言ってブラッドといることは楽しくて時間が来るのはあっという間だった。
アルフは赤いカツラを外すとじっとこちらを見つめてくるブラッドに視線を向けた。
「何だよ?」
「んー、お揃いも良かったけどやっぱその金髪がアルフらしくて良いなって思って。」
ブラッドは手を伸ばしてくるとそのまま弄るように触れてくる。それを真似するようにブラッドの髪に触れると、彼は驚いたように目を見開く。
「ああ、この色はお前じゃないと似合わないよ。」
質の良い髪が光に当たると少し明るい色に見える。毎回、宝石の色みたいで綺麗だと思っていることは本人には内緒だ。
それから半刻経った頃、ようやく馬車は止まった。2人は馬車から降りるとバビントン家に足を踏み入れた。
「アルフ様、よく我が家にお越し頂きました。」
ドレスの裾を持って綺麗に頭を下げるハナリヤ夫人。アルフは作法にならうように挨拶を返し終わると互いに微笑みあった。そして、ハナリヤ夫人はブラッドに視線を向けると、満面の笑みで彼の耳を引っ張る。
「い"っでてててて!」
「この馬鹿、いつになったら無礼な行いを改めるのよ!」
アルフはそのいつもの光景に口元を隠しながら笑った。そして、懐かしい感情が胸に広がる。
「アルフ、いつもごめんね。従者の立ち位置であるこの子が迷惑ばかりをかけて。」
「いや、ハナリヤ夫人は気にしないで。」
顔のまで片手を振って否定するとほっとした表情を見せる。バビントン家では公式的な挨拶はしっかりと行うがそれが終わったら気さくに話す関係であった。アルフが硬い言葉遣いが嫌でそのように頼んだからだ。
「ごめんなさいね。生憎、エラントは仕事で帰ってこないのよ。」
「大丈夫ですよ。それよりもこっちこそすみません。急に泊まることになってしまったので。」
ハナリヤ夫人は全然気にしていないと言うと、逆にもっと泊まりに来て欲しいと言ってくれた。それが嬉しくて笑って見せると、ハナリヤ夫人はブラッドの引っ張っていた耳を離した。
やっと解放されたブラッドは何やらこちらに向けて良くやったと言うように親指を立ててくる。何でだろうと思ったが、話に盛り上がりすぐに忘れてしまった。
後で理由を聞いてみたら、どうやら俺の笑顔が好きだから機嫌が良くなったということらしい。こんな笑みでも需要があるのだと思った日だった。
それからは3人で談笑を行った。終始、話の話題は尽きず話疲れてしまうほどだった。だから、アルフはブラッドのベットに身体を寝かせるとすぐに眠ってしまった。
○
風呂から出てきたブラッドはタオルで髪の毛を乾かしながら、自身のベットの上にいるアルフの顔を確認した。安心したように眠る姿は可愛くて今すぐ襲ってしまいたい衝動に駆られる。
…くそっ、なんでこんなに可愛いんだよ。
ブラッドはアルフのおでこに掛かった金髪の前髪をあげるとそこにキスを落とした。そして、アルフを抱き締めるように身体を横にすると意識を手放したのだ。
久しぶりにこんなに歩いたので足は少し痛く感じた。だが、なんだかんだ言ってブラッドといることは楽しくて時間が来るのはあっという間だった。
アルフは赤いカツラを外すとじっとこちらを見つめてくるブラッドに視線を向けた。
「何だよ?」
「んー、お揃いも良かったけどやっぱその金髪がアルフらしくて良いなって思って。」
ブラッドは手を伸ばしてくるとそのまま弄るように触れてくる。それを真似するようにブラッドの髪に触れると、彼は驚いたように目を見開く。
「ああ、この色はお前じゃないと似合わないよ。」
質の良い髪が光に当たると少し明るい色に見える。毎回、宝石の色みたいで綺麗だと思っていることは本人には内緒だ。
それから半刻経った頃、ようやく馬車は止まった。2人は馬車から降りるとバビントン家に足を踏み入れた。
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ドレスの裾を持って綺麗に頭を下げるハナリヤ夫人。アルフは作法にならうように挨拶を返し終わると互いに微笑みあった。そして、ハナリヤ夫人はブラッドに視線を向けると、満面の笑みで彼の耳を引っ張る。
「い"っでてててて!」
「この馬鹿、いつになったら無礼な行いを改めるのよ!」
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「アルフ、いつもごめんね。従者の立ち位置であるこの子が迷惑ばかりをかけて。」
「いや、ハナリヤ夫人は気にしないで。」
顔のまで片手を振って否定するとほっとした表情を見せる。バビントン家では公式的な挨拶はしっかりと行うがそれが終わったら気さくに話す関係であった。アルフが硬い言葉遣いが嫌でそのように頼んだからだ。
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「大丈夫ですよ。それよりもこっちこそすみません。急に泊まることになってしまったので。」
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後で理由を聞いてみたら、どうやら俺の笑顔が好きだから機嫌が良くなったということらしい。こんな笑みでも需要があるのだと思った日だった。
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