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「何、集まってんだ?」
凛とした声が聞こえて来たので振り返ると、また道を開けるようにクラスメイトは退いていく。視線の先にはラフな格好をした一人の青年が立っていた。
アルフは椅子から立ち上がるとそのまま赤い髪に手を突っ込み怠そうな態度をする彼の元に向かった。そして、目の前にいるブラッド・バビントンを睨む。
「ブラッド!お前、入学式は終わったぞ!」
「知ってるよ。それに合わせて来たんだから。」
鬱陶しそうにヒラヒラと片手を振るブラッドの手を掴むと彼は腕を引いてみせる。ブラッドの力に負けてしまいそのまま倒れるように彼の胸に身体を預けると腰に手を回される。
「相変わらず、力が弱いな。」
「お前が強すぎるんだよ!」
そう応えると子どもをいなすように頭を撫でられる。
その手を振り払おうと顔を上げると、手を出す前に誰かがブラッドの腕を払った。その主を見ようと視線を横に向けると不機嫌そうなイニスが立っていた。その目つきに思わず、肩が震える。
その様子に気付いたのかイニスは柔らかな笑みを浮かべると、ブラッドから奪うように肩を引いてきた。今度はイニスに抱きしめられる形になり、少し困惑をする。
残念ながら、イニスの肩の向こう側に視線を向けることになり、彼らの表情を確認することが出来ない。しかも、恥ずかしいことにクラスメイトやその保護者、そして両親までもがこちらに視線を集中させていた。
「っ、イニス離して!」
胸を両手で押してみると少し余裕が生まれるくらいで彼からは離れられなかった。
アルフは別に力が弱いわけではない。それなりにパワーは持っているはずだが、ブラッドだけではなくイニスまでも負けてしまうようだった。
「なんで、アイツは良くて俺はダメなんだよ。」
頭上から聞こえて来た言葉。その真意を確認しようとイニスの表情を伺うと、寂しさと怒りのようなものが垣間見えた。
どう反応して良いのか分からなくて困惑をしていると、アルフの父親のセドリック伯爵が近付いて来た。そして、イニスから引き剥がすと、自分の後ろに隠すように2人の前に立ち尽くす。
「ブラッド、初日から遅刻をしてどうする。」
「いやー、今日は伯爵様もいるから大丈夫かなって。」
悪びれもしないその言葉に溜息を吐くと、セドリック伯爵はどこか諦めた声で諭す。
「明日からはしっかりとやりなさい。」
「ええ。」
ブラッドはイニスに視線を向けると口角を上げて答える。
「明日からはアルの側を一時も離れずに護衛させて頂きます。なんてたってアルの専属騎士ですから。」
入学初日からバチバチに火花を交わせる2人にアルフは首を傾げた。なぜ、こんなに敵対視しているのか理解が出来なかったからだ。
伯爵は頭を抱えたがもう関わりたくないのか、もう口を開くことはなかった。かわりに妻であるメリッサに視線を向ける。その意図を見計ったようにメリッサ夫人は側にやって来るとアルフの手を握った。そして、伯爵の後に続くようにそのまま教室を後にしたのだ。
アルフは教室にいる2人が気になったが、口にすることは止めた。どうせ、明日から同じ場所で学ぶのだから大丈夫かと思ったのだ。
そうして、彼らの入学式は終わったのだ。
凛とした声が聞こえて来たので振り返ると、また道を開けるようにクラスメイトは退いていく。視線の先にはラフな格好をした一人の青年が立っていた。
アルフは椅子から立ち上がるとそのまま赤い髪に手を突っ込み怠そうな態度をする彼の元に向かった。そして、目の前にいるブラッド・バビントンを睨む。
「ブラッド!お前、入学式は終わったぞ!」
「知ってるよ。それに合わせて来たんだから。」
鬱陶しそうにヒラヒラと片手を振るブラッドの手を掴むと彼は腕を引いてみせる。ブラッドの力に負けてしまいそのまま倒れるように彼の胸に身体を預けると腰に手を回される。
「相変わらず、力が弱いな。」
「お前が強すぎるんだよ!」
そう応えると子どもをいなすように頭を撫でられる。
その手を振り払おうと顔を上げると、手を出す前に誰かがブラッドの腕を払った。その主を見ようと視線を横に向けると不機嫌そうなイニスが立っていた。その目つきに思わず、肩が震える。
その様子に気付いたのかイニスは柔らかな笑みを浮かべると、ブラッドから奪うように肩を引いてきた。今度はイニスに抱きしめられる形になり、少し困惑をする。
残念ながら、イニスの肩の向こう側に視線を向けることになり、彼らの表情を確認することが出来ない。しかも、恥ずかしいことにクラスメイトやその保護者、そして両親までもがこちらに視線を集中させていた。
「っ、イニス離して!」
胸を両手で押してみると少し余裕が生まれるくらいで彼からは離れられなかった。
アルフは別に力が弱いわけではない。それなりにパワーは持っているはずだが、ブラッドだけではなくイニスまでも負けてしまうようだった。
「なんで、アイツは良くて俺はダメなんだよ。」
頭上から聞こえて来た言葉。その真意を確認しようとイニスの表情を伺うと、寂しさと怒りのようなものが垣間見えた。
どう反応して良いのか分からなくて困惑をしていると、アルフの父親のセドリック伯爵が近付いて来た。そして、イニスから引き剥がすと、自分の後ろに隠すように2人の前に立ち尽くす。
「ブラッド、初日から遅刻をしてどうする。」
「いやー、今日は伯爵様もいるから大丈夫かなって。」
悪びれもしないその言葉に溜息を吐くと、セドリック伯爵はどこか諦めた声で諭す。
「明日からはしっかりとやりなさい。」
「ええ。」
ブラッドはイニスに視線を向けると口角を上げて答える。
「明日からはアルの側を一時も離れずに護衛させて頂きます。なんてたってアルの専属騎士ですから。」
入学初日からバチバチに火花を交わせる2人にアルフは首を傾げた。なぜ、こんなに敵対視しているのか理解が出来なかったからだ。
伯爵は頭を抱えたがもう関わりたくないのか、もう口を開くことはなかった。かわりに妻であるメリッサに視線を向ける。その意図を見計ったようにメリッサ夫人は側にやって来るとアルフの手を握った。そして、伯爵の後に続くようにそのまま教室を後にしたのだ。
アルフは教室にいる2人が気になったが、口にすることは止めた。どうせ、明日から同じ場所で学ぶのだから大丈夫かと思ったのだ。
そうして、彼らの入学式は終わったのだ。
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