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…眩しい。

もう少し寝たいのに意識が覚醒し出したため、嫌でも朝日が目に入る。身体を反転させて窓に背中を向けると、ふと可笑しいことに気付く。

…なんで、カーテンが開いてるんだ?

再び身体を戻して手で影を作ると、じっと窓辺に視線を向ける。窓の中央には1人の男の子が立っており、こちらに気付くと嬉しそうに駆け寄ってきた。

「アルフー!」

勢い良くベッドに飛び込んで来たので思わず息が詰まる。

「っ、お前なんでいる?!」

「え、アルフに会いに?」

目をパチクリさせているのは自分と同い年のイニス・パーリィである。

「良い加減、朝から来んな!家で寝てろ!」

「ごめん!でも、アルフ。寝る子は育つって言葉は嘘だよ。」

急に言われて頭を傾げるとイニスも同じように首を傾げてきた。

「え、2年前に言ってたじゃん。」

「そんな前のこと覚えてるわけないだろ。」

「嘘ん。俺との会話、覚えててよ。」

イニスは身体を起こすと、目元に手を当ててシクシクと泣く真似をする。アルフはその姿に溜息を吐くと、布団を退かして立ち上がった。

イニスが来るといつも早く起こされる。子どもにとっては寝る時間は大切なのに…。

「で、アルフ。寝る時間が嘘なのは俺とアルフを見たら明らかだと思うんだ。」

「はあ?」

その言葉に振り返るとイニスは両手を腰に当ててふんぞり返っている。いや、そんな態度を取られても今が分からない。

「どういうこと?」

「俺の方が寝てないのにアルフよりも身長が高いじゃん。だから、早く起きても大丈夫だよ。」

笑顔でそのようなことを言われても、どう返事をしたら良いのか分からない。もし自分の内面までもが幼かったら反感していたのだろう。だが、生憎俺は15年プラス10年の人生を歩んでいる。

「そうだね。ほら、もう部屋から出ていって。」

「話し始めたばかりじゃん…。」

先程とは違い、シュンと落ち込む姿に胸が痛む。正直、小学5年生相手にどうやって関われば良いのか分からない。さすがに前世の記憶があるといえど、そんな昔のことは覚えていない。でも、同級生よりは大人びていると言われてたような気はする。

「ごめん、言い方が悪かったな。」

そう口にするとイニスは首を横に振って近寄ってくる。

「ううん、俺の方が悪かったよ。アルフに会いたいからといって、起きる前から来ちゃダメだよね…。」

「いや、…もう良いよ。」

「…本当に?!アルフ、ありがとう!」

イニスは両手を広げると抱き締めてきた。アルフはそれを黙って受け入れると一つ大きく呼吸をした。

また失敗したなと思った。どうも自分はイニスの落ち込む姿に弱く、その姿を見ると彼を許してしまう癖があるようだ。

嫌われたいならもっと拒否しないといけないのだが、可哀想という思いが現れてしまう。アルフはこう考えてしまうのも前世の記憶のせいなのだろうと感じていた。

…まあ、イニスにここまで冷たい態度をとっているのだから好かれることはないだろう。気にしても無駄か。



イニスはアルフの肩から窓に映る自分の姿を見ると思わず、笑った。我ながら、嫌な性格をしていると。

アルフは昔から自分が悲しむ姿を見るのが嫌いなことは気付いていた。彼が自分と距離を置きたがっていることも。

…そんなの俺が許さない。

腕に力を込めるとアルフが苦しいと言ったので仕方なく離してやる。アルフと視線が合うと彼は溜息を吐いて、下を向いてしまう。

その姿さえも愛おしくて仕方がない。自分と同じく大人びている彼は、自然と人を惹きつける力があるようだ。

俺もアルフと初めて会った瞬間、身体に電流が走ったような衝撃を受けた。こんなに綺麗な人がいるのかと。親同士が親友でアルフと幼馴染になれたことは俺の1番の自慢だ。

かわいいアルフ…。

自分よりも少し小さな頭を撫でてやると彼は恥ずかしそうに視線を外す。振り払えばいいものの、彼は決してそんなことをしない。イニスは柔らかな笑みを見せるとそっと手を下ろす。

アルフ、待っててね。今はウザいくらい構って、2年後には冷たく接してあげるから。そして、15歳になったら誰よりも優しく接してあげるね。それで、俺に依存してね。

「アルフ、大好きだよ。」

「…俺は嫌いだ。」

その言葉さえもイニスにとっては嬉しくて仕方がなかった。



それから2年後。イニスわざとアルフと違う中学校に行き3年間遊ぶこともなく過ごした。

アルフはイニスの思惑通り急に来なくなってしまった彼に気を取られながら、生活を送ることになった。あれほど懐いていた彼が突然来なくなったのだから、不安な気持ちを抱かずにはいられなかったのだ。
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