47 / 51
奴隷商人と皇太子
45
しおりを挟む
「ルーカスちゃん、おめでとう!」
「皇ご「ん"?」お母様!」
一気に冷たい雰囲気を醸し出されたので慌てて言い直すと一瞬にして柔らかな微笑みへと変わる。それに夫である皇帝は声を出して笑う。
「はは、ルーカスちゃんおめでとう。」
「ありがとうございます。」
「俺は言ってくれないのか?」
「お、父様。」
2人は何かと会う度にそう呼ばせようとしてくる。こちらも人前で言うのは流石に気まずくて逃れようと思惑しているが上手くいった試しがない。
「ルーカスちゃん、おいで!」
「私のところにも。」
「大丈夫です!」
両手を広げ、胸に飛び込んでくるように言われるが全力で首を横に振った。ただでさえ視線が集中しているのに、これ以上恥ずかしい思いはしたくなかった。
特にノアやカールの前ではやりたくない。
「皇帝陛下と皇后陛下に失礼だから、行ってこいよ!」
「そうだ!ノアの言う通りだ!」
「お前らはうるさい!」
2人はすぐ悪ノリをして、後で揶揄う材料を増やそうとするのだ。こう言われては尚更、やりたくない。
どうしようかと思い悩んでいると、見覚えのある後ろ姿が視界に映る。久しぶりの姿に胸が弾み、ノアとカールを皇帝と皇后の方に押し出すと俺はそっちに走り寄った。
足音か気配に気付いたのか、彼はこちらに身体を向けると両手を広げて待ち構えてくれる。だから、安心して彼の胸に飛び込むことが出来た。
「兄ちゃん!」
「ルーカス、誕生日おめでとう。」
「ありがとう!久しぶり!」
「ああ。」
挨拶を交わして身体を離すと、彼の背後にラドリエン帝国の皇帝であるイーサンと部下であるベルクとブレアンもいた。
「3人もいらっしゃい。」
「普通、一纏めして挨拶するか?まあ、誕生日おめでとう。」
イーサンの言葉に続くように2人からもお祝いの言葉を受け取る。
「ありがとう!で、兄ちゃんはいつ帰ってくるの?」
「あと、数ヶ月は無理だな。」
「そっかー。」
少し残念だが、セスの楽しそうな顔を見ると仕方がないと諦めがつく。
セスはまだラドリエン帝国で過ごしている。剣術や武術を習うためだ。やりとりを行っている手紙には、こちらの形と違うらしく学ぶことが面白いと書かれていた。
「今はどれくらい強い?」
「今はイーサン以外には勝てるようになった。」
「え、凄いじゃん!」
「まだ、俺には1度も勝ってないけどな。」
イーサンはセスの頭を上から潰すように力を加える。少し低くなった彼はイーサンに殺気を向けているが、当の本人は痛くも痒くもないと言うように頭をぐちゃぐちゃと撫でる。
「ルーカスは元気か?」
「元気ですよ。」
「そうか。」
どこか安心した表情を見せると彼は目尻を下げて優しい微笑みを浮かべて手を伸ばしてくる。でも、その手は俺に触れることなく空中で止まる。
「相変わらずだな。」
「そちらこそ、いい加減触ろうとしないで下さい。」
睨み合う2人のやりとりにはもう慣れてしまった。
「リアム、手を離して。」
「分かったよ。」
大人しく言うことを聞いたリアムに微笑むと彼の手を握り締める。でも、すぐに手を離されて恋人繋ぎへと直される。
「セス、元気か?」
「ああ。」
2人は身体を寄せると互いに軽く背中を叩いて離れる。それだけで、強い絆があるのだと見ているだけで感じた。
それが羨ましく思うが、自分だって特別な立ち位置にあることを知っているのでやきもちはそこまで焼かなかった。
「それじゃー、ルーカス前に行こう。」
「分かった!」
主役である自分が今日のパーティーを開会することを宣言することになっている。未だにこんなに人が集まっていることは慣れないが、気持ちが昂っているせいかテンションが高くなっている自信があった。
楽しくて、嬉しくて仕方がない。
周囲が自分に向けてくれる視線が温かかった。繋がれた温もりが優しくて、愛おしかった。自分が生きてて良かったと思え始めた瞬間だった。
リアムと共に皆んなの前に立つ。
ここで出会った人達がじっと見つめてくれる。専属護衛となってから出会った者達だけでなく、自分が故郷で出会った人達まで来てくれた。
ここにいる人達は自分を奇怪な存在ではなく、ずっと普通の人間として関わってくれる。それがどんなに有難くて嬉しくて仕方がないことだろうか。
「皆様、本日は私のためにお越し頂きありがとうございます。これほど、多くの方々に祝杯を挙げて頂けることになり、嬉しく思います。皆様と出会えたことが私の人生で何よりの宝物です。どうか、今後とも宜しくお願い致します!」
本当はもっと伝えたいことがある。でも、あまり長々と開会の言葉を言いたくないので短く纏める。
頭を下げると大きな拍手が耳に届いて、泣きたくなった。いや、泣いてしまった。
泣き顔を見られたくなくてリアムの背後に隠れるように動くと、会場が騒つく声が聞こえてくる。笑っている声や祝福の言葉をあげる声、揶揄う声が聞こえてくる。
「ルーカス。」
「前向け…」
「えー、嬉し泣きしてる姿見たいんだけど。」
「うるさい…」
「はいはい。」
頭をポンポンと撫でると彼は言った通りに前を向く。
ーああ、好きだ、大好きだ。
胸が苦しいが別に嫌じゃなかった。どこか心地が良いとさえ感じてしまう。
俺はこの人とずっと一緒にいたい。自分を救ってくれて、幸せを与えてくれるこの人にずっとついていきたい。
いや、彼の隣に立ち続けられるように胸を張って生きていきたいんだ。
「皇ご「ん"?」お母様!」
一気に冷たい雰囲気を醸し出されたので慌てて言い直すと一瞬にして柔らかな微笑みへと変わる。それに夫である皇帝は声を出して笑う。
「はは、ルーカスちゃんおめでとう。」
「ありがとうございます。」
「俺は言ってくれないのか?」
「お、父様。」
2人は何かと会う度にそう呼ばせようとしてくる。こちらも人前で言うのは流石に気まずくて逃れようと思惑しているが上手くいった試しがない。
「ルーカスちゃん、おいで!」
「私のところにも。」
「大丈夫です!」
両手を広げ、胸に飛び込んでくるように言われるが全力で首を横に振った。ただでさえ視線が集中しているのに、これ以上恥ずかしい思いはしたくなかった。
特にノアやカールの前ではやりたくない。
「皇帝陛下と皇后陛下に失礼だから、行ってこいよ!」
「そうだ!ノアの言う通りだ!」
「お前らはうるさい!」
2人はすぐ悪ノリをして、後で揶揄う材料を増やそうとするのだ。こう言われては尚更、やりたくない。
どうしようかと思い悩んでいると、見覚えのある後ろ姿が視界に映る。久しぶりの姿に胸が弾み、ノアとカールを皇帝と皇后の方に押し出すと俺はそっちに走り寄った。
足音か気配に気付いたのか、彼はこちらに身体を向けると両手を広げて待ち構えてくれる。だから、安心して彼の胸に飛び込むことが出来た。
「兄ちゃん!」
「ルーカス、誕生日おめでとう。」
「ありがとう!久しぶり!」
「ああ。」
挨拶を交わして身体を離すと、彼の背後にラドリエン帝国の皇帝であるイーサンと部下であるベルクとブレアンもいた。
「3人もいらっしゃい。」
「普通、一纏めして挨拶するか?まあ、誕生日おめでとう。」
イーサンの言葉に続くように2人からもお祝いの言葉を受け取る。
「ありがとう!で、兄ちゃんはいつ帰ってくるの?」
「あと、数ヶ月は無理だな。」
「そっかー。」
少し残念だが、セスの楽しそうな顔を見ると仕方がないと諦めがつく。
セスはまだラドリエン帝国で過ごしている。剣術や武術を習うためだ。やりとりを行っている手紙には、こちらの形と違うらしく学ぶことが面白いと書かれていた。
「今はどれくらい強い?」
「今はイーサン以外には勝てるようになった。」
「え、凄いじゃん!」
「まだ、俺には1度も勝ってないけどな。」
イーサンはセスの頭を上から潰すように力を加える。少し低くなった彼はイーサンに殺気を向けているが、当の本人は痛くも痒くもないと言うように頭をぐちゃぐちゃと撫でる。
「ルーカスは元気か?」
「元気ですよ。」
「そうか。」
どこか安心した表情を見せると彼は目尻を下げて優しい微笑みを浮かべて手を伸ばしてくる。でも、その手は俺に触れることなく空中で止まる。
「相変わらずだな。」
「そちらこそ、いい加減触ろうとしないで下さい。」
睨み合う2人のやりとりにはもう慣れてしまった。
「リアム、手を離して。」
「分かったよ。」
大人しく言うことを聞いたリアムに微笑むと彼の手を握り締める。でも、すぐに手を離されて恋人繋ぎへと直される。
「セス、元気か?」
「ああ。」
2人は身体を寄せると互いに軽く背中を叩いて離れる。それだけで、強い絆があるのだと見ているだけで感じた。
それが羨ましく思うが、自分だって特別な立ち位置にあることを知っているのでやきもちはそこまで焼かなかった。
「それじゃー、ルーカス前に行こう。」
「分かった!」
主役である自分が今日のパーティーを開会することを宣言することになっている。未だにこんなに人が集まっていることは慣れないが、気持ちが昂っているせいかテンションが高くなっている自信があった。
楽しくて、嬉しくて仕方がない。
周囲が自分に向けてくれる視線が温かかった。繋がれた温もりが優しくて、愛おしかった。自分が生きてて良かったと思え始めた瞬間だった。
リアムと共に皆んなの前に立つ。
ここで出会った人達がじっと見つめてくれる。専属護衛となってから出会った者達だけでなく、自分が故郷で出会った人達まで来てくれた。
ここにいる人達は自分を奇怪な存在ではなく、ずっと普通の人間として関わってくれる。それがどんなに有難くて嬉しくて仕方がないことだろうか。
「皆様、本日は私のためにお越し頂きありがとうございます。これほど、多くの方々に祝杯を挙げて頂けることになり、嬉しく思います。皆様と出会えたことが私の人生で何よりの宝物です。どうか、今後とも宜しくお願い致します!」
本当はもっと伝えたいことがある。でも、あまり長々と開会の言葉を言いたくないので短く纏める。
頭を下げると大きな拍手が耳に届いて、泣きたくなった。いや、泣いてしまった。
泣き顔を見られたくなくてリアムの背後に隠れるように動くと、会場が騒つく声が聞こえてくる。笑っている声や祝福の言葉をあげる声、揶揄う声が聞こえてくる。
「ルーカス。」
「前向け…」
「えー、嬉し泣きしてる姿見たいんだけど。」
「うるさい…」
「はいはい。」
頭をポンポンと撫でると彼は言った通りに前を向く。
ーああ、好きだ、大好きだ。
胸が苦しいが別に嫌じゃなかった。どこか心地が良いとさえ感じてしまう。
俺はこの人とずっと一緒にいたい。自分を救ってくれて、幸せを与えてくれるこの人にずっとついていきたい。
いや、彼の隣に立ち続けられるように胸を張って生きていきたいんだ。
22
お気に入りに追加
2,152
あなたにおすすめの小説
秘匿された第十王子は悪態をつく
なこ
BL
ユーリアス帝国には十人の王子が存在する。
第一、第二、第三と王子が産まれるたびに国は湧いたが、第五、六と続くにつれ存在感は薄れ、第十までくるとその興味関心を得られることはほとんどなくなっていた。
第十王子の姿を知る者はほとんどいない。
後宮の奥深く、ひっそりと囲われていることを知る者はほんの一握り。
秘匿された第十王子のノア。黒髪、薄紫色の瞳、いわゆる綺麗可愛(きれかわ)。
ノアの護衛ユリウス。黒みかがった茶色の短髪、寡黙で堅物。塩顔。
少しずつユリウスへ想いを募らせるノアと、頑なにそれを否定するユリウス。
ノアが秘匿される理由。
十人の妃。
ユリウスを知る渡り人のマホ。
二人が想いを通じ合わせるまでの、長い話しです。
悪役側のモブになっても推しを拝みたい。【完結】
瑳来
BL
大学生でホストでオタクの如月杏樹はホストの仕事をした帰り道、自分のお客に刺されてしまう。
そして、気がついたら自分の夢中になっていたBLゲームのモブキャラになっていた!
……ま、推しを拝めるからいっか! てな感じで、ほのぼのと生きていこうと心に決めたのであった。
ウィル様のおまけにて完結致しました。
長い間お付き合い頂きありがとうございました!
買われた悪役令息は攻略対象に異常なくらい愛でられてます
瑳来
BL
元は純日本人の俺は不慮な事故にあい死んでしまった。そんな俺の第2の人生は死ぬ前に姉がやっていた乙女ゲームの悪役令息だった。悪役令息の役割を全うしていた俺はついに天罰がくらい捕らえられて人身売買のオークションに出品されていた。
そこで俺を落札したのは俺を破滅へと追い込んだ王家の第1王子でありゲームの攻略対象だった。
そんな落ちぶれた俺と俺を買った何考えてるかわかんない王子との生活がはじまった。
運命を変えるために良い子を目指したら、ハイスペ従者に溺愛されました
十夜 篁
BL
初めて会った家族や使用人に『バケモノ』として扱われ、傷ついたユーリ(5歳)は、階段から落ちたことがきっかけで神様に出会った。
そして、神様から教えてもらった未来はとんでもないものだった…。
「えぇ!僕、16歳で死んじゃうの!?
しかも、死ぬまでずっと1人ぼっちだなんて…」
ユーリは神様からもらったチートスキルを活かして未来を変えることを決意!
「いい子になってみんなに愛してもらえるように頑張ります!」
まずユーリは、1番近くにいてくれる従者のアルバートと仲良くなろうとするが…?
「ユーリ様を害する者は、すべて私が排除しましょう」
「うぇ!?は、排除はしなくていいよ!!」
健気に頑張るご主人様に、ハイスペ従者の溺愛が急成長中!?
そんなユーリの周りにはいつの間にか人が集まり…
《これは、1人ぼっちになった少年が、温かい居場所を見つけ、運命を変えるまでの物語》
バッドエンドの異世界に悪役転生した僕は、全力でハッピーエンドを目指します!
あ
BL
16才の初川終(はつかわ しゅう)は先天性の心臓の病気だった。一縷の望みで、成功率が低い手術に挑む終だったが……。
僕は気付くと両親の泣いている風景を空から眺めていた。それから、遠くで光り輝くなにかにすごい力で引き寄せられて。
目覚めれば、そこは子どもの頃に毎日読んでいた大好きなファンタジー小説の世界だったんだ。でも、僕は呪いの悪役の10才の公爵三男エディに転生しちゃったみたい!
しかも、この世界ってバッドエンドじゃなかったっけ?
バッドエンドをハッピーエンドにする為に、僕は頑張る!
でも、本の世界と少しずつ変わってきた異世界は……ひみつが多くて?
嫌われ悪役の子どもが、愛されに変わる物語。ほのぼの日常が多いです。
◎体格差、年の差カップル
※てんぱる様の表紙をお借りしました。
俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き
toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった!
※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。
pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/100148872
スキルも魔力もないけど異世界転移しました
書鈴 夏(ショベルカー)
BL
なんとかなれ!!!!!!!!!
入社四日目の新卒である菅原悠斗は通勤途中、車に轢かれそうになる。
死を覚悟したその次の瞬間、目の前には草原が広がっていた。これが俗に言う異世界転移なのだ——そう悟った悠斗は絶望を感じながらも、これから待ち受けるチートやハーレムを期待に掲げ、近くの村へと辿り着く。
そこで知らされたのは、彼には魔力はおろかスキルも全く無い──物語の主人公には程遠い存在ということだった。
「異世界転生……いや、転移って言うんですっけ。よくあるチーレムってやつにはならなかったけど、良い友だちが沢山できたからほんっと恵まれてるんですよ、俺!」
「友人のわりに全員お前に向けてる目おかしくないか?」
チートは無いけどなんやかんや人柄とかで、知り合った異世界人からいい感じに重めの友情とか愛を向けられる主人公の話が書けたらと思っています。冒険よりは、心を繋いでいく話が書きたいです。
「何って……友だちになりたいだけだが?」な受けが好きです。
6/30 一度完結しました。続きが書け次第、番外編として更新していけたらと思います。
案外、悪役ポジも悪くない…かもです?
彩ノ華
BL
BLゲームの悪役として転生した僕はBADエンドを回避しようと日々励んでいます、、
たけど…思いのほか全然上手くいきません!
ていうか主人公も攻略対象者たちも僕に甘すぎません?
案外、悪役ポジも悪くない…かもです?
※ゆるゆる更新
※素人なので文章おかしいです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる