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アーサーの真実

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「それで、サドは、どんな尻尾を見せた?」

「敵対する神と内通していた様子でした。何か、遠隔で会話ができる魔術を使っており、この国の神を殺すつもりのようでした。この国を守る水神には二人いて、一人が、『すいじん』もう一人が『すいしん』というそうです。『すいしん』は既に殺されており、残る『すいじん』がこの国を守っているようです。その水神を殺そうと、サドは計画しているようです」

「分かった。では、サドは具体的にどのような計画を話していた?」

「この国にスパイを侵入させて、内側から切り崩すつもりです。既にこの国の中には、多くのスパイが活動しているようです。どうにもサドは、主殿のことを知っているようです」

「主とは私のことか?」

「そうです」


 召喚獣には、それぞれ個性があり、それぞれの言い方にも癖があるようで、言い方が少しはっきりしない。
 そろそろ、そのことについても統一しておこう。


「そうか。では、私のことはアーシャと呼べ。それと、スパイの数は特定できるか? 別に、こちらとしてもこの国に介入するつもりはないが、それでも、私たちの身に危険が迫ることだけは避けたい。敵の脅威の大きさを知りたい」

「スパイの数については未調査です。サドは、主殿のことを話していました。アーシャを洗脳すると」

「分かった。では、まずは今すぐにでもここを発つとしよう。補給はまだ済んでいないが、道中で動物でも狩れば、食料は十分に手に入るはず。そちらは先に行って子供たちの警護をしてくれ」

「御意」


 武者は、私に一度頭を下げてから子供たちの元へと向かう。

 私は衣服など最低限の荷物をまとめてからアデ先生を起こすことにした。


「アデ先生。起きてくれ。今すぐここを逃げ出す。やはり、ここは危険だ」

「……ん。分かった……」


 アデ先生は、瞼をこすると、何も聞かずに荷物をまとめ始めてくれた。

 その間、私は子供たちを起こしてまとめた荷物を持たせていく。

 そうすると、寝ていたところを叩き起こされたことでマーラがぐずりだし、仕方なく私が抱えてキャンピングカーの元へと向かうことになった。


─────



 キャンピングカーは中庭に路駐されており、暗い夜道の中、どうにか見つけることはできた。

 しかし、私はこれまでの道中、怪しさを感じていた。逃げる足を見つけるにしても、ここに来るまでが、あまりにも容易過ぎたのだ。


 周りに敵の気配はないか、キャンピングカーに何かされていないか、注意深く見ていく。
 そうして、鳥籠の中にアレクサンダーがいないことに気付いた。

 辺りを観察させるために、アレクサンダーは、普段から放し飼いにはしていたが、窓が開いているのに、戻ってきた気配が無かった。
 が、今はアレクサンダーのことよりも、自分たちの身の方を最優先にしなくてはならない。

 全員が乗り込んで、キャンピングカーのエンジンをかけようとして突然、ドンと音がして、キャンピングカーの上に何かが乗ったような音がした。

 その音の主が、私に向かって話しかけてきた。


「聞いてください。アーシャ様。私です。サドが、こちらに向かって来ています。サドは、転生者という存在を狙っているようです。狙いはアーシャ様です。それと、アーサーという人物についてですが、彼はもう手遅れです。見捨ててください」

「分かった。とにかく今は、振り落とされないように捕まってくれ」


 私は話を途中で遮って、アクセルを踏み込んだ。

 ハンドルを切り、キャンピングカーが急激に速度を上げながら中庭を走っていく。

 タイヤの擦れる音が響きながら、自分たちの居場所を晒しているが、それでも今はここから動くことの方が重要だ。

 今の私には、アーサー相手でも勝てる実力がある。サドの実力は分からないが、それでも勝てる見込みは十分にあるはずだ。


 キャンピングカーのヘッドライトが、閉じた城門を照らし出した。私はルーフに掴まっているであろう武者に命令をして、門を開けさせることにした。


 すると、微かに御意という言葉が聞こえてきて、巨大であるが木製の大扉が吹き飛ぶように切り裂かれた。


 そこを私は突っ切り、城外の平野へと飛び出た。


「アーシャ様。追っては来ていません」

「了解だ」

「さて、アーサーについてですが、彼は半分死んでいたようです」

「半分?」

「ええ。既に脳が半分取り出されていました。アーサーが自ら頭を開頭してサドに見せました。何かのメンテナンスのようなそんな感じでしたが、その時には既に脳は半分無く、それでなぜ生きているのかは分かりませんが、どうにもアーサーは、サドに操られていた様子でした。サドの狙いは、転生者の体を使って、転生者特有の能力を手に入れようという試みのようです」

「そうか。敵の目標が分かったのは大きい。だが、今は逃げることが最優先だ」

「それと、その試みは、我々と敵対する神々の意思であり、神々は、全ての転生者の能力を狙っているようです」

「じゃあ、私もその範疇ってことか」

「そうです。しかし、なぜ、サドがアーシャ様を知っていたのかは分かりません。どこか別の場所から情報が伝わったのであれば、どこへ行っても油断することはできませんし、全てを敵と思うことが一番でしょう」

「そうか。どこにも逃げ場がないのか」

「ならば、なおさらサドを倒し、情報を吐かせることが一番かと。そうすれば、隠れ場所も見つけられるのではないかと」

「それもリスクが大きすぎる。下手に動けない以上、今は私たちは専守防衛に努めるしかない。もしサドを倒してしまえば、さらにこちらが警戒されるだろう。そうなれば、より、逃げ道が無くなる」


 会話を続けていると、ヘッドライトの先に人影がいるのが見えて、私は速度を緩めて迂回することにした。
 が、人影はアーサーで、私たちに向かって剣を抜いていた。

 アーサーがキャンピングカーに飛び乗り、そのせいで車体が大きく揺れた。

 皆が恐怖から悲鳴を上げた。

 アーサーが正面ガラスにへばり付いていた。


「寝込みを襲って、脳を弄ろうとしたんですよ? 明日の朝になれば、全員サド様の肉便器になっていたのに。残念でしたね。犯されるのってすごく気持ち良いのに。勿体ないですよ?」

「そうか死ね」


 私はショットガンを抜き、アーサーを撃ちぬいた。だが、アーサーは頭が半分欠けているというのに、キャンピングカーに乗り上げたまま、ニヤリと笑った。


「大好きですアーシャさん。僕、ずっと、アーシャさんに僕の子供を産んでもらいたいって思ってたんです。でも、全然振り向いてもらえなくて、僕、悲しかったんですよ? だから、今度は無理やり犯します」


 アーサーがガラスを割って侵入してくる。
 私が次弾を撃つ前には既に首を掴まれて拘束をされていた。

 武者が助けに来るが、容易に切り裂かれてしまった。

 私は更なる抵抗を試みるが、アーサーが私の口に舌を入れてきて、股に指を入れてきて、ぎょっとして動きが止まる。


「気持ちいでしょう? 僕も中身は女だから気持ちいいやり方だって知ってるんです」

「お前がまともだったら、私の家族全員の同意さえあれば、逆にお前に子供を産ませてやっても良かったが、今のお前ではピクリともこんよ。安らかに死ね」


 近距離のショットガンが炸裂し、アーサーの内臓が吹き飛んだ。

 
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