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旅立ちの準備を終えて、馬車に乗り込もうとした時のこと、王子は、俺のことが忘れられないと言って、しつこく付いて来ようとしていた。
王子が長く国を離れるなど常識的にもあり得ないのことなのだが、俺が戻ってくるというと、渋々ながらも見送ってくれた。
今は、俺とカンナは、食料などを乗せて、南のアリシア海岸にあるという漁村に向けて進んでいる。
「ねえ、王子様はあのまま捨てるの?」
「いーや。いまさら捨てらんないだろ」
「ヒロトってばやっさしー」
「元はといえば、お前のせいでもあるんだぞ」
「だから、言ってるじゃん。三人で家族になれば良いって。ボクも王子様のこと好きだし。問題ないよ」
「まあ、こればっかりは、愛情なのか分からん」
「何言ってんのさ! 愛情だよ! 王子様もボクのこと好きだし、みんな愛し合ってるんだもん!」
「まあ、問題にならなければいいか……」
しばらく旅をしていると、漁村の近くで、レストランを見つけた。といっても、小さい民家みたいなところなのだが。
腹も減っていることだし、馬を止め、水と干し草を与えて、俺たちも食事をとろうと中に入った。
恰幅の良いおばさんが注文を取りに来て、おすすめだというシーフードパスタを指差すので、俺たちは流されるままにその料理を注文した。
運ばれてきたスパゲティは、ガーリックバターソースのムール貝がふんだんに乗せられていて、エビやイカなどの肉厚な魚介にも丁寧に切れ込みが入っており、甘じょっぱいパスタソースによく絡んでいる美味しそうな匂いを漂わせてくる料理だった。
「これ、美味しいよ!」
「たしかにな」
カンナが、バキュームみたいに吸い上げて一皿を平らげると、またおかわりを注文する。
その食事が体のどこに消えているのか永遠の謎だが、俺も腹いっぱいになるまで食べ続けた。
「まだおかわりはいるかい?」
「いや、もう食べられないや。あのさ、ここらへんで秘宝があるって伝説みたいなの聞いたんだけど何か知ってませんか?」
「うーん。分かんないわね」
「そっか。やっぱ嘘だったのかなー」
「まあ、しばらく探してみようぜ」
「そうだね」
王子が長く国を離れるなど常識的にもあり得ないのことなのだが、俺が戻ってくるというと、渋々ながらも見送ってくれた。
今は、俺とカンナは、食料などを乗せて、南のアリシア海岸にあるという漁村に向けて進んでいる。
「ねえ、王子様はあのまま捨てるの?」
「いーや。いまさら捨てらんないだろ」
「ヒロトってばやっさしー」
「元はといえば、お前のせいでもあるんだぞ」
「だから、言ってるじゃん。三人で家族になれば良いって。ボクも王子様のこと好きだし。問題ないよ」
「まあ、こればっかりは、愛情なのか分からん」
「何言ってんのさ! 愛情だよ! 王子様もボクのこと好きだし、みんな愛し合ってるんだもん!」
「まあ、問題にならなければいいか……」
しばらく旅をしていると、漁村の近くで、レストランを見つけた。といっても、小さい民家みたいなところなのだが。
腹も減っていることだし、馬を止め、水と干し草を与えて、俺たちも食事をとろうと中に入った。
恰幅の良いおばさんが注文を取りに来て、おすすめだというシーフードパスタを指差すので、俺たちは流されるままにその料理を注文した。
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「これ、美味しいよ!」
「たしかにな」
カンナが、バキュームみたいに吸い上げて一皿を平らげると、またおかわりを注文する。
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「まだおかわりはいるかい?」
「いや、もう食べられないや。あのさ、ここらへんで秘宝があるって伝説みたいなの聞いたんだけど何か知ってませんか?」
「うーん。分かんないわね」
「そっか。やっぱ嘘だったのかなー」
「まあ、しばらく探してみようぜ」
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