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恋? 愛? 金?

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 俺は伯爵との話をそうそうに切り上げ、足早に逃げ、手に入れた資金で馬を買い、荷馬車を作り、独自に流通ルートを作っていった。

 欲しいものはリスト化し、それをメモだよりに毎回買わせているのだが、問題が起きたことに、殆どの人が文字が読めないということがわった。これでは、買わせるどころではない。なので、絵にして、書くのだが、これが一番大変だった。

 最初は間違った物を買ってくるしで、不良在庫が貯まるのだ。それでも、何とか売りさばいたが、殆どは倉庫に置きっぱなしの物ばかりだ。

 コップと見間違えた鍋なんて、そうそうありえることじゃないと思っていたのだが、起きてしまった。

 しかし、そうしたことも乗り越えてどうにか軌道に乗せると、出店数を2、3、4と増やしていき、毎月、4000万シニーの利益をあげるようになっていた。

 伯爵に定期報告を行い、借金を返します。

「さて、素晴らしいことに、君は借金を一月で返しただけでなく、さらに、毎月100万もの税を納めてくれている。これほどよろこばしいことはない。もし、更なる投資の話しがあるのであればぜひとも協力したいのだが?」

「ええ。まだまだ沢山ありますが、その前に私に対する街の人たちの誤解を解いてもらいたいのです。私もこの街に恩を返すために、お金を使いたいのです。街の人たちを全員参加させたパーティーを二月後に開催したいのです」

「主は中々に強かな男よ。先に足元を固めようとしているな? 反抗は一番厄介だからな」

「ええ。そうです」

 この時の俺と伯爵はとても悪い顔をしていました。実は同じ腹黒同士気が合うようです。

 そうして、来月の売り上げが出るとそのお金で盛大なパーティー開催することにしました。材料を買い付け、それを料理してもらうためにお金を支払う。そうすることで、経済は活性化し、よりよく生まれ変わることができます。

 俺も工務店での腕を使い、巨大ガラガラを作り、ビンゴ大会なんてものを作りました。この世界の紙は高級品だですが、俺としては大した額ではありません。

 一等が100万シニ―。二等がハンバーガー一年分。三等が……。とビンゴ大会に景品も付けてみました。

 そうして、500万シニーものお金を使ったパーティが開催されると、みんなが腹を空かせ、並べられた無料の料理に一斉に食いつきました! ビール樽がなん十個も出てきて、好きなだけ飲むことができます! みんなだけじゃありません。俺自身も楽しかった!

 人のためにするのってこんなにも満たされた気持ちになるのだと初めて分かったような、そんな気がしました。
 並べられた肉や魚、それとパン。そのどれもがこの街で生産されたものです。
 最初は俺のことを嫌っていたパン屋のおっちゃんも、早々に酔っていましたし、俺に直接謝ってきて、誤解も解けたようです。

 そんなこんなで街は夜になってもパーティーは続き、俺は夕涼みに歩いていました。そう言えば、そろそろ夏のニオイを感じます。

「ねえ」
 そう話しかけてきたのは、ロレーヌでした。今ではロレーヌもすっかり身の回りが綺麗になっていて、以前の野良猫みたいな見た目は無くなっていました。

 すると、ロレーヌが俺の歩調に合わせて隣にきました。なんでしょうか? また面倒くさいことをしようとでもいうのでしょうか?

「どうしたんだ?」
「あのさ。なんでこんなに凄いことができるのに死のうとしていたの?」
「そりゃあ、だって、俺なんか彼女もできないし、俺のいた国ではみんな俺以上のことができていたからだよ。俺はコンプレックスの塊なんだよ」
「でも、ここではそんな凄いことできる人はいないよ。じゃあ、もう、死ななくて良くなったね」

 そう言ってニコッとロレーヌが笑いました。そして、俺の隣に来ると、なぜか手を触ってきました。

「ねえ、生きるのって楽しい?」
「上手くいってりゃあ楽しいし、上手くいってなけりゃあ楽しくないさ。人生なんてそんなもんさ。それに俺は何でも欲しがる強欲だからな」
「へえー。ごうよくなんだね」
「オレは何でも欲しい。でも、手に入れられないものばかりさ。つまり、俺は楽しくない。そういうことさ」
「でも、そんな強欲な人がこんなにも街のためにお金を使う?」
「俺は、人に気に入られるっていう対価のために金を使っただけなんだよ。俺の根は強欲さ。つまらん自分さ」
「じゃあさ、もう、楽しいってことはないの? 楽しければ生きていけるんじゃない?」
「楽しいっていってもな……。そうだな……、女が欲しい。女がいれば人生も変わるかもな」
「じゃあさ……。私はダメかな……?」
「はい?」
「私とお付き合いしてくれないかなって……」

 そう言うロレーヌは、まるで、女の子の顔をしていました。
 いや、女の子なんだけど! 言いたいこと伝われ!

 俺が言葉に困っているとロレーヌは深く落ち込んだようでした。まさか、冗談で言われているつもりだったが、ロレーヌは本気だったようでこれは悪いことをしてしまったようです。

「ああ、悪かったよ。ちょっと困ってしまったんだ……」
「まあ、冗談みたいな空気だったもんね……」

 よく見なくとも、ロレーヌは可愛いし、まあ、幼いですが、俺としてもなんだか年下相手に変な気を起こすような気がしてきました。

 俺自身には愛される理由が良く分からず金目当てかとも思い、答えに迷っていると、後ろから突然、誰かに抱き着かれました。

「丈様!!」
「ふぁっ!!」
「丈様って凄い人だったんですね。尊敬します! ぜひともその経営手腕を直接お傍でお目にかかりたいものです! 私をお嫁さんにしていただけないでしょうか!?」

 ああ、あれね。お金目当てなんですね、みなさん。そりゃそうだ。お金を持った途端にみんなすり寄ってくるんですもの。

「金目当てなら結婚なんてしねえぞ。つか、それなら失礼だぞ」
「違います! お金ではなく、丈様の優れた頭脳に惚れたのです! さあ、ここにいても何もありませんよ! 一緒にパーティーを楽しみましょう! ちょうど大道芸人が来たので、今、すっごく盛り上がっているところなんですから!」
「わっ! ちょっと! 強引じゃない!? 丈さんが困ってる!」

 ロレーヌが寂しそうに、一瞬手を伸ばしたものの、俺はモナに引っ張られたせいで届くことはなく、パーティー会場に戻されたのであった。

 それからビールを飲むが、この年のせいか、なぜか今日はビールが酷く苦く感じる。

「丈様。次はいったいどのような事業を考えておられるのですか?」
「さてね。秘密だよ」
「もしかして、私鬱陶しいですか?」
「いや、そんなことは……」

 モナが潤んだ瞳を向けてくるから、俺は直視できなくて、つい、視線を逸らす。

「申し訳ございません……。ですが、私は、心の底から丈様と一緒にいたいのです」
「まあ、一緒にいても良いさ」
「ありがとうございます!」

 そうしてモナが、また勢いよく抱き着いてきた。その衝撃でビールがコップから零れかけてしまった。
 それから夜が明け、また、いつも通りの日がやってくる。俺も事業経営に戻り、出店をし続けていると、それからまた、一か月後、領主である伯爵に呼び出された。
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