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副流煙の話
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「うわ、先輩、やめて下さいよ。俺まで臭くなるじゃないっすか」
次の取引先まで少し会いた時間にコンビニに寄った。上司はニヤニヤしながらフーッと煙を吹きかけてくる。
「いーじゃん。シュッシュってやつするしマウスウォッシュもあるし、この一服で切り替えるんだよ」
「いやほんとに、やめさせる気ないけど、良いことないっすよ。それに副流煙って主流煙の何十倍もやばいって聞いたことありますし。やめた方がいいっすよ。ウッ…絶対アイスの方がいいって」
強い日差しに溶かされる前にガリガリ君を頬張った。
「キーンてしながらよく言うよな。しかもやめさせる気あんじゃん笑 まあ明日から休みだし今日は付き合えや」
俺は非喫煙者だ。飲み会もよく行くしたまにパチンコもやる。あとは同僚や友人。受動喫煙はしてるだろう。
明日からお盆休みに入るので帰省の準備を始めた。冷蔵庫も空にしてしまったし、今日はコンビニで済まそうかな。週に5日はコンビニ飯だけど。
家の近くのファミマで冷やし中華とファミチキと缶ビールをカゴに入れた。あっそうだ。
「えーっと、178番ください」
「はい。…全部で1280円です。」
煙草どんどん値上がりしてるなあ。
「ありがとうございましたー」
ビールを飲みながらさっき買った煙草を見てみる。タール17ミリだって。よくわかんないけど強そう。これが体に悪いんだよね。1日2箱だと340ミリ、3センチちょいあるぞ。いや単位がミリグラムとミリメートルから違うわ。とか1人でノリツッコミしてみたりした。
新幹線で3時間の実家。最寄駅のひとつ手前の駅で降りた。
「よ、お父さん、久しぶり。元気してた?」
転がったビールの缶を片付けながら話しかける。
「ほら、お父さんの好きなやつ。たまにしか吸えなくて待ってたんじゃない?1日2箱くらい吸ってたもんな。」
そう言って俺は煙草に火をつけた。案の定むせる。
「よくこんなの吸ってたよなあ。何が良いんだよ。俺の上司も同じの吸ってるけど、でも自分で吸うとなんか臭い違う気がする」
いつもは浴びている細い煙が父の方に向かう。
何とか一本吸い終わって、残りは父にあげた。
「じゃーな。また正月くらいにくるわ」
父にそう言って実家に帰った。
「××!少し遅かったから心配してたけど良かった。おかえりなさい。元気?仕事はどう?」
「あれ、LINEしたんだけど見てない?元気。仕事も元気。」
「うそ!気づかなかった。仕事も元気って何よ笑…あ、お父さんの匂いがする。寄ってきたのね。きっと喜んでるわ。毎年ありがとうね」
俺は煙草が嫌いだ。だけど20歳になってからは年に2本吸う。父はヘビースモーカーだった。外仕事をしていた父は冬でも日焼けしてて、腕も逞しかった。
中学生の頃やっと父に背が追いつきそうになった時、父は急性心筋梗塞で亡くなった。あまりにも突然だった。その後は母と姉と3人で力を合わせながら生活してきた。姉弟2人を1人で大学まで出させてくれた母にはとても感謝をしている。
昨年姉が結婚した時に知ったのだが、学費や俺達を育てる為のお金はほとんど父が用意しておいてくれたらしい。自分が学歴で苦労したからと。お陰で俺は国立大学を卒業できた。かっこ良すぎるんだよな。父よりも背が高くなったけれど、いつまで経っても何をしても父には敵わないと思う。
だけど。父と同じ煙草を吸っている時だけは、父に少し追いついた気がする。先端から上がる煙のフィルターをかけて見た世界は少しいつもと違う。俺にはまだ美味しさが分からないから、まだまだなんだろうなってその度に自分に喝を入れる。亡くなっても尚、叱咤激励してくれる父は本当に偉大だ。
3日程、母の飯を食った。
よし。また帰ったら頑張ろう。
次の取引先まで少し会いた時間にコンビニに寄った。上司はニヤニヤしながらフーッと煙を吹きかけてくる。
「いーじゃん。シュッシュってやつするしマウスウォッシュもあるし、この一服で切り替えるんだよ」
「いやほんとに、やめさせる気ないけど、良いことないっすよ。それに副流煙って主流煙の何十倍もやばいって聞いたことありますし。やめた方がいいっすよ。ウッ…絶対アイスの方がいいって」
強い日差しに溶かされる前にガリガリ君を頬張った。
「キーンてしながらよく言うよな。しかもやめさせる気あんじゃん笑 まあ明日から休みだし今日は付き合えや」
俺は非喫煙者だ。飲み会もよく行くしたまにパチンコもやる。あとは同僚や友人。受動喫煙はしてるだろう。
明日からお盆休みに入るので帰省の準備を始めた。冷蔵庫も空にしてしまったし、今日はコンビニで済まそうかな。週に5日はコンビニ飯だけど。
家の近くのファミマで冷やし中華とファミチキと缶ビールをカゴに入れた。あっそうだ。
「えーっと、178番ください」
「はい。…全部で1280円です。」
煙草どんどん値上がりしてるなあ。
「ありがとうございましたー」
ビールを飲みながらさっき買った煙草を見てみる。タール17ミリだって。よくわかんないけど強そう。これが体に悪いんだよね。1日2箱だと340ミリ、3センチちょいあるぞ。いや単位がミリグラムとミリメートルから違うわ。とか1人でノリツッコミしてみたりした。
新幹線で3時間の実家。最寄駅のひとつ手前の駅で降りた。
「よ、お父さん、久しぶり。元気してた?」
転がったビールの缶を片付けながら話しかける。
「ほら、お父さんの好きなやつ。たまにしか吸えなくて待ってたんじゃない?1日2箱くらい吸ってたもんな。」
そう言って俺は煙草に火をつけた。案の定むせる。
「よくこんなの吸ってたよなあ。何が良いんだよ。俺の上司も同じの吸ってるけど、でも自分で吸うとなんか臭い違う気がする」
いつもは浴びている細い煙が父の方に向かう。
何とか一本吸い終わって、残りは父にあげた。
「じゃーな。また正月くらいにくるわ」
父にそう言って実家に帰った。
「××!少し遅かったから心配してたけど良かった。おかえりなさい。元気?仕事はどう?」
「あれ、LINEしたんだけど見てない?元気。仕事も元気。」
「うそ!気づかなかった。仕事も元気って何よ笑…あ、お父さんの匂いがする。寄ってきたのね。きっと喜んでるわ。毎年ありがとうね」
俺は煙草が嫌いだ。だけど20歳になってからは年に2本吸う。父はヘビースモーカーだった。外仕事をしていた父は冬でも日焼けしてて、腕も逞しかった。
中学生の頃やっと父に背が追いつきそうになった時、父は急性心筋梗塞で亡くなった。あまりにも突然だった。その後は母と姉と3人で力を合わせながら生活してきた。姉弟2人を1人で大学まで出させてくれた母にはとても感謝をしている。
昨年姉が結婚した時に知ったのだが、学費や俺達を育てる為のお金はほとんど父が用意しておいてくれたらしい。自分が学歴で苦労したからと。お陰で俺は国立大学を卒業できた。かっこ良すぎるんだよな。父よりも背が高くなったけれど、いつまで経っても何をしても父には敵わないと思う。
だけど。父と同じ煙草を吸っている時だけは、父に少し追いついた気がする。先端から上がる煙のフィルターをかけて見た世界は少しいつもと違う。俺にはまだ美味しさが分からないから、まだまだなんだろうなってその度に自分に喝を入れる。亡くなっても尚、叱咤激励してくれる父は本当に偉大だ。
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よし。また帰ったら頑張ろう。
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