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第二章「別宮編」
涙
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「来てくれてありがとう。」
「いえいえ、こちらこそ、ご利用ありがとうございます。」
俺が例の小屋につくと、彼はもうそこにいた。
冗談半分、そう答えると彼は吹き出した。
「商売がお上手で。」
「いやいや。その後、どう?ちゃんと自分で処理出来てる?」
「ん……その、お陰さまで……。ただ……。」
「うん、中が疼くんだろ?」
もったいぶってても話が進まない。
歯に衣着せずスパンと言うと、彼は困ったように頷いた。
「多分そうなんだろうなって思って、準備してきた。」
「何か……把握されてて、恥ずかしい……。」
「今更俺に恥ずかしがっても仕方ないだろ?」
「そうだが、それこそ仕方ないだろ。」
「まぁ、羞恥も性的興奮に繋がるから、ないよりはあった方がいいかもな。気持ちよくなりやすい。」
「……それ以上、言うな。」
彼は耳を赤くして顔を覆っていた。
理屈ではわかっていても、やっぱり気恥ずかしい。
それが性欲の面白いところだ。
少しからかい過ぎたかなと思いながら荷物を広げる。
「そう言えば、パートナーは見つからなさそうか?」
「………ほっといてくれ。」
突っ込むべきじゃなかったか。
彼は少し不機嫌になった。
奥が疼くのに性具が欲しいと言うのだから、見つかってないのだろう。
「何か自分で突っ込んでみたりしなかったのか?」
「……しようか悩んでたら、お前に会ったから……。」
「なら良かった。変なもの突っ込んで中が傷ついたり、とれなくなって病院行く羽目になるリスクを考えたら、それ用の道具をきちんとした使用方法で使った方がいいからさ。」
「とれなくなって、病院って……。」
「結構、よくある話だよ。だから気をつけろよ?」
「……覚えておく。」
病院という言葉に彼は少し青ざめていた。
そりゃな?ありえない所にありえないもん突っ込んで、取れないって病院に行ったら、貴族の立場じゃかなりヤバイ事になる。
とはいえ、貴族の家じゃかかりつけの医師が何とかしてくれるんだろうけど。
俺はディルドやバイブ等を見やすいように並べた。
初心者だし、オーソドックスなこの辺でいいよな。
「大きさとかって、どれくらいいけそう?」
そう言って振り返る。
彼は少し俯いて考えているようだった。
あまりいい反応じゃない。
「……怖くなったか?」
「少し、な……。」
彼はタチはした事があるのだ。
同性のセックスの仕方を知らない訳じゃない。
自分自身の性欲も理解してるし、中だってすでに疼きだしてる。
でも、それでもやはり、実際に自分の中に入れるとなると戸惑うものだ。
しかも病院送りの話を聞いた直後。
彼はさっきの話を聞いて、実際、自分の中に何か入れるという事に少し躊躇したようだった。
俺はそんな彼に優しく声をかける。
「……いいと思う。怖いくらいで。道具を使うからには、その危険性も把握すべきだと俺は思うし。剣だってその危険性をきちんと理解してから振るうだろ?ちゃんと理解した上で道具を使う事は大事だ。理解して使えば、そんな馬鹿な事はだいたい起こらない。さっきの病院送りの話は、それが抜けてるからだよ。自分の欲望のまま変なものをむちゃくちゃな使い方をするから事故が起こる。欲求に流されず、きちんと考え躊躇するあんたは間違ってないよ。」
そう言うと彼は顔を上げた。
不安そうでもあり、俺の言葉で安心したようでもある。
手が伸びかけ、俺は引っ込めた。
何してるんだろう?
不安がってるからと言って、商売人の俺が彼に触れたって意味がない。
でもちょっと悪戯心が芽生える。
俺は少しだけ彼の耳元に顔を近づけた。
「……それに、少し怖い方が興奮するだろ?」
そう、低く囁く。
その瞬間、彼はカッと赤くなると、俺の脛を蹴っ飛ばした。
結構力強い蹴りで、俺は思わず飛び上がった。
「痛ぁっ!!……酷くない!?」
「酷いのはお前だろっ!」
「……恐怖心を和らげようと思っただけなのに~。」
「馬鹿か!だからってやり方があるだろ!!」
「興奮した癖に~。」
「してない!!」
「じゃあ、どうするんだよ?いらない?」
「…………それは……いる。」
「なら選んで。」
そう言って商品の前に立たせる。
あまりゴタゴタするのはお互いよくない。
初めてを手伝ってしまったせいか、彼といるとどうもいつもの割り切った商売ができない。
俺は気を取り直して商売の説明を始める。
「……大きさは好みと開発具合によるけど、はじめてだから形はノーマルなのがいいと思う。突起とかパールとかない。その方が入れやすいだろうし見慣れたブツだから抵抗も少ないだろ?まだ動かすのにも慣れてないだろうから普通のディルドがいいと思うよ。バイブレーターぐらいならいいけど、激しいヤツは、少しして中が挿入に慣れてきてから自分で動かすのに戸惑うなら自動で動くのを試してみるといいかも。」
俺は実験でも使っているし商品として扱っているから、見慣れているのでホイホイ手にとって説明していく。
しかし彼の方は、自分の中に入るかもしれないものをまざまざと見せられて戸惑っていた。
まぁ、はじめは羞恥心や恐怖心から触るに触れないんだよなぁ……。
けれどきっかけさえあればどうってことないだろうと、俺は何も考えていない感じで、「はい」と適当なものを手渡した。
なんの気なしに差し出され、思わず受け取る彼。
触ってしまっては、戸惑っている場合でもなくなり、迷いながらも彼はそれをまじまじと触っていた。
「なんか……結構、生々しいな……。」
「いや、ナマに比べたらただのおもちゃだよ。」
「おい……。その言い方やめてくれ……。」
「自分の見てんだろ?しかもタチとしてはした事あるんだし、他人の臨戦態勢だって見た事あるんだよな?」
「臨戦態勢って……。」
俺の言い方に彼は苦笑いする。
なんだよ?臨戦態勢は臨戦態勢じゃんか??
生々しいのは嫌みたいだったからそう言ったのに……。
しかしそこにこだわっていても話が進まない。
「とりあえず平均的なのにするか?まだあんまり慣れてなくてアソコが硬いようなら、細いものからだんだん慣らしていくって方法もあるけど、どうする?」
さくさく話を進めると、彼の方も真剣に考え始める。
いくつかディルドを手にとってみたりして、う~んと考えている。
「……正直、どれくらいが入るのか自分でわからない……。はかれればいいんだけどな。まぁ、そんな事はできないだろうけど。」
「え?できるよ?」
「……え??」
「今現在の許容範囲的な大きさだろ??」
「……はかれるのか?」
「できるよ。」
思わず答えると彼はびっくりしていた。
いやいや、俺を誰だと思ってるんですか??
性具販売は副業の副業、本命は性欲研究者ですよ??
実験前と実験後で比較するのに、アナの大きさを測ったりなんてたまにやりますけど?何か??
さも当たり前のようにはかれると言うと、彼は少し間をおいてから言った。
「……なら……はかってくれないか?」
「いいよ、わかった。じゃあまた今度、時間を取ろう。」
「……え?今じゃないのか??」
「いや、はかるには装置を挿入しないといけないから、最低でもそれが入れられるくらい穴が解れて広がってなきゃ無理だし。これからその準備してだと時間かかるだろ?」
「…………。多分、それは大丈夫……だ……。」
彼は真っ赤になって俯き、そう言った。
ん??大丈夫??
何で??
不思議そうな顔をする俺に、彼は小さな声で理由を話した。
俺は準備をして箱の上に深く腰かけた。
そして恥ずかしそうにする彼を見つめる。
「じゃあ、乗って。」
俺は気にせず、そう指示した。
肌を赤らめた彼は俺の体を股ぐようにして膝立になった
当然、下は何も着けていない。
ワイシャツの裾に頼りなく隠された彼の雄は、若干、首をもたげている。
不安的さをカバーする為に、彼の手が俺の肩に置かれる。
その手は少し震えていた。
「大丈夫か?無理しなくても……。」
「……気にするな。」
いや、気にしますけどね。
色々慣れている相手ならこっちもそこまで気を使わないが、彼はこの前まで、穴に触れた事すらなかったのだ。
本当にヤバそうなら止めるのだが、彼の股間は萎えていない。
むしろ角度を上げてきている。
なら大丈夫だろうと、性欲研究者として判断した。
「悪いけどゴム着けてくれる?」
「……わかった。」
はかってる最中に暴発されると、お互いちょっと大変な事になる。
被害を防ぐ為にゴムを手渡すと、彼は案外、躊躇いなくそれをブツに着けた。
つける間、姿勢を崩さないよう俺は両手で彼の腰の辺りを支えながらそれを見ていた。
「……つけるの慣れてるね。」
「うるさい……っ。」
見たまま、素直な感想を述べた。
けれど彼は俺の言葉に少し苛立ったようだった。
慣れてるって、失礼な言い方だったのかな?
避妊具をサッとつけれるのは、とてもいい事だと思うけどな??
「……て言うか、マジで着けてんの?」
「悪いか……。」
つけるつけないで揉めたこともあり、俺は確認する。
いやだってさぁ??この彼がだよ??
この状態まで来て再度確認するのもおかしいが、半ば信じられなかった。
「……いつも着けてんの?」
「そんな事はしてない!き、今日は……お前に会うから……その……試すかも、と……。」
なるほど。
ディルドなりを買う訳だから、試す必要があるかもって考えたのか。
うん、理には適ってる。
理に適ってるけど!普通のよいこはそんな事しませんからね?!
思わずため息をつく。
……俺は大声で叫びたかった。
皆さん!注目~!!
ここに一見タチなのに、実はぐずぐずにエロいネコがいます~!!
彼氏募集中で~す!!
心の中で叫び終えまた溜め息をつく。
だってさ、まさか彼がさ……。
下から見上げるように、その真面目そうで綺麗な顔を見上げる。
信じられなかった。
……彼は何と、アソコにプラグを着けていたらしい。
さっきまで結構、普通に俺と話していたのに、その間もそんなものを着けていたなんて思わなかった。
いや、この前まで触った事もなかったのに、飛ばし過ぎだって!!
「一応聞くけど、いつからつけてたんだよ??」
「……朝。」
ガーンというぐらいの衝撃を受けた。
ちょっと待て?!
あんた、プラグ入れたまま半日働いてたわけ!?
なのにそんな澄ました顔してた訳?!
少し目眩がした。
「まさかとは思うけど?!チョーカーのスイッチまで入ってたりしないよな?!」
そこまでいったらかなりの処女ビッチだ。
誰が引っかかったら即、挿入可能な状態に身も心もなっている訳だから。
何だか気に入らなくて、俺は彼の首についているチョーカーに手を伸ばした。
首元に触れると、彼の体が微かに震えた。
チョーカーのスイッチは……。
良かった、入ってない。
俺は何故かとてもホッとした。
まぁ、まだ慣らしにもあまり慣れてないような人が、いきなりそこまでかっ飛ばしてなくて良かった。
それにしても、え?どうしちゃったのこの子!?
後ろ開発して、色々外れちゃったの!?
そんな見境なくエロスに走る感じには見えなかったのに……。
開いてはいけない扉を開いてしまって戻れなくなってしまったのだろうか……。
はじめてを手伝った手前、言い様のない罪悪感に苛まれる。
「……勘違いしないでくれ。チョーカーはデザインが気に入ったからいつも着けてるだけで……。当然スイッチは、一人で慣らしをする時しか入れてない……。」
俺がかなりびっくりしていたせいか。
彼は不満そうに、しかし不安そうにそう言った。
「……本当だよな?」
でも、快楽というのは人を変える。
生真面目なタイプの方が、一度知ってしまうと抜け出せず過激になる事もある。
そういう事も見てきた俺なので、プラグ入れて半日過ごしていた話を聞いてしまうと不安になる。
「……でっ。」
「え?」
俺の顔色を見たせいだろう。
彼は俯いてた。
そして肩を震わせて何か呟く。
「……え?何??大丈夫か??」
「…………でっ!」
「え??」
「……何で……っ!!……何でそんな意地悪な事言うんだよ!俺だって……っ!俺だって!死ぬほど恥ずかしかったんだからなっ!!」
急に大きな声を出され、俺はびっくりして彼の顔を見上げた。
肩を震わせて、彼は奥歯を噛み締めている。
……ヤバい、泣かせた。
赤く潤んだ目元に涙が溜まっている。
それを見て、俺は凄くショックを受けた。
凄くデリカシーのない事を彼に言ってしまった。
自分が性欲がないから、その羞恥心などが俺にはちゃんと理解できてなかったのだ。
「……ごめん。悪かった、悪かったよ……。」
そう謝る。
ぐずぐず泣き出してしまった彼を引き寄せ足の上に座らせる。
そして軽く抱きしめるようにして、落ち着くよう背中を撫でた。
「……ゴメンな?お前が一番、不安なのに……。マジでごめん。」
性欲がないから、なんていい訳だ。
相手の気持ちに寄り添ってやれなかったのは俺の落ち度だ。
まわりからこうだと決められてしまった中で、自分の本当の欲望をもてあまし、苦しんでいるのは他でもないこいつなのに、俺は心ない事を言ってしまった。
「………………っ。」
彼は何も言わなかった。
少しだけ俺の服を掴んで、体を俺に預けている。
俺はただ、肩に顔を埋めているこいつが落ち着くまで、そっと背中を撫で続けたのだった。
「いえいえ、こちらこそ、ご利用ありがとうございます。」
俺が例の小屋につくと、彼はもうそこにいた。
冗談半分、そう答えると彼は吹き出した。
「商売がお上手で。」
「いやいや。その後、どう?ちゃんと自分で処理出来てる?」
「ん……その、お陰さまで……。ただ……。」
「うん、中が疼くんだろ?」
もったいぶってても話が進まない。
歯に衣着せずスパンと言うと、彼は困ったように頷いた。
「多分そうなんだろうなって思って、準備してきた。」
「何か……把握されてて、恥ずかしい……。」
「今更俺に恥ずかしがっても仕方ないだろ?」
「そうだが、それこそ仕方ないだろ。」
「まぁ、羞恥も性的興奮に繋がるから、ないよりはあった方がいいかもな。気持ちよくなりやすい。」
「……それ以上、言うな。」
彼は耳を赤くして顔を覆っていた。
理屈ではわかっていても、やっぱり気恥ずかしい。
それが性欲の面白いところだ。
少しからかい過ぎたかなと思いながら荷物を広げる。
「そう言えば、パートナーは見つからなさそうか?」
「………ほっといてくれ。」
突っ込むべきじゃなかったか。
彼は少し不機嫌になった。
奥が疼くのに性具が欲しいと言うのだから、見つかってないのだろう。
「何か自分で突っ込んでみたりしなかったのか?」
「……しようか悩んでたら、お前に会ったから……。」
「なら良かった。変なもの突っ込んで中が傷ついたり、とれなくなって病院行く羽目になるリスクを考えたら、それ用の道具をきちんとした使用方法で使った方がいいからさ。」
「とれなくなって、病院って……。」
「結構、よくある話だよ。だから気をつけろよ?」
「……覚えておく。」
病院という言葉に彼は少し青ざめていた。
そりゃな?ありえない所にありえないもん突っ込んで、取れないって病院に行ったら、貴族の立場じゃかなりヤバイ事になる。
とはいえ、貴族の家じゃかかりつけの医師が何とかしてくれるんだろうけど。
俺はディルドやバイブ等を見やすいように並べた。
初心者だし、オーソドックスなこの辺でいいよな。
「大きさとかって、どれくらいいけそう?」
そう言って振り返る。
彼は少し俯いて考えているようだった。
あまりいい反応じゃない。
「……怖くなったか?」
「少し、な……。」
彼はタチはした事があるのだ。
同性のセックスの仕方を知らない訳じゃない。
自分自身の性欲も理解してるし、中だってすでに疼きだしてる。
でも、それでもやはり、実際に自分の中に入れるとなると戸惑うものだ。
しかも病院送りの話を聞いた直後。
彼はさっきの話を聞いて、実際、自分の中に何か入れるという事に少し躊躇したようだった。
俺はそんな彼に優しく声をかける。
「……いいと思う。怖いくらいで。道具を使うからには、その危険性も把握すべきだと俺は思うし。剣だってその危険性をきちんと理解してから振るうだろ?ちゃんと理解した上で道具を使う事は大事だ。理解して使えば、そんな馬鹿な事はだいたい起こらない。さっきの病院送りの話は、それが抜けてるからだよ。自分の欲望のまま変なものをむちゃくちゃな使い方をするから事故が起こる。欲求に流されず、きちんと考え躊躇するあんたは間違ってないよ。」
そう言うと彼は顔を上げた。
不安そうでもあり、俺の言葉で安心したようでもある。
手が伸びかけ、俺は引っ込めた。
何してるんだろう?
不安がってるからと言って、商売人の俺が彼に触れたって意味がない。
でもちょっと悪戯心が芽生える。
俺は少しだけ彼の耳元に顔を近づけた。
「……それに、少し怖い方が興奮するだろ?」
そう、低く囁く。
その瞬間、彼はカッと赤くなると、俺の脛を蹴っ飛ばした。
結構力強い蹴りで、俺は思わず飛び上がった。
「痛ぁっ!!……酷くない!?」
「酷いのはお前だろっ!」
「……恐怖心を和らげようと思っただけなのに~。」
「馬鹿か!だからってやり方があるだろ!!」
「興奮した癖に~。」
「してない!!」
「じゃあ、どうするんだよ?いらない?」
「…………それは……いる。」
「なら選んで。」
そう言って商品の前に立たせる。
あまりゴタゴタするのはお互いよくない。
初めてを手伝ってしまったせいか、彼といるとどうもいつもの割り切った商売ができない。
俺は気を取り直して商売の説明を始める。
「……大きさは好みと開発具合によるけど、はじめてだから形はノーマルなのがいいと思う。突起とかパールとかない。その方が入れやすいだろうし見慣れたブツだから抵抗も少ないだろ?まだ動かすのにも慣れてないだろうから普通のディルドがいいと思うよ。バイブレーターぐらいならいいけど、激しいヤツは、少しして中が挿入に慣れてきてから自分で動かすのに戸惑うなら自動で動くのを試してみるといいかも。」
俺は実験でも使っているし商品として扱っているから、見慣れているのでホイホイ手にとって説明していく。
しかし彼の方は、自分の中に入るかもしれないものをまざまざと見せられて戸惑っていた。
まぁ、はじめは羞恥心や恐怖心から触るに触れないんだよなぁ……。
けれどきっかけさえあればどうってことないだろうと、俺は何も考えていない感じで、「はい」と適当なものを手渡した。
なんの気なしに差し出され、思わず受け取る彼。
触ってしまっては、戸惑っている場合でもなくなり、迷いながらも彼はそれをまじまじと触っていた。
「なんか……結構、生々しいな……。」
「いや、ナマに比べたらただのおもちゃだよ。」
「おい……。その言い方やめてくれ……。」
「自分の見てんだろ?しかもタチとしてはした事あるんだし、他人の臨戦態勢だって見た事あるんだよな?」
「臨戦態勢って……。」
俺の言い方に彼は苦笑いする。
なんだよ?臨戦態勢は臨戦態勢じゃんか??
生々しいのは嫌みたいだったからそう言ったのに……。
しかしそこにこだわっていても話が進まない。
「とりあえず平均的なのにするか?まだあんまり慣れてなくてアソコが硬いようなら、細いものからだんだん慣らしていくって方法もあるけど、どうする?」
さくさく話を進めると、彼の方も真剣に考え始める。
いくつかディルドを手にとってみたりして、う~んと考えている。
「……正直、どれくらいが入るのか自分でわからない……。はかれればいいんだけどな。まぁ、そんな事はできないだろうけど。」
「え?できるよ?」
「……え??」
「今現在の許容範囲的な大きさだろ??」
「……はかれるのか?」
「できるよ。」
思わず答えると彼はびっくりしていた。
いやいや、俺を誰だと思ってるんですか??
性具販売は副業の副業、本命は性欲研究者ですよ??
実験前と実験後で比較するのに、アナの大きさを測ったりなんてたまにやりますけど?何か??
さも当たり前のようにはかれると言うと、彼は少し間をおいてから言った。
「……なら……はかってくれないか?」
「いいよ、わかった。じゃあまた今度、時間を取ろう。」
「……え?今じゃないのか??」
「いや、はかるには装置を挿入しないといけないから、最低でもそれが入れられるくらい穴が解れて広がってなきゃ無理だし。これからその準備してだと時間かかるだろ?」
「…………。多分、それは大丈夫……だ……。」
彼は真っ赤になって俯き、そう言った。
ん??大丈夫??
何で??
不思議そうな顔をする俺に、彼は小さな声で理由を話した。
俺は準備をして箱の上に深く腰かけた。
そして恥ずかしそうにする彼を見つめる。
「じゃあ、乗って。」
俺は気にせず、そう指示した。
肌を赤らめた彼は俺の体を股ぐようにして膝立になった
当然、下は何も着けていない。
ワイシャツの裾に頼りなく隠された彼の雄は、若干、首をもたげている。
不安的さをカバーする為に、彼の手が俺の肩に置かれる。
その手は少し震えていた。
「大丈夫か?無理しなくても……。」
「……気にするな。」
いや、気にしますけどね。
色々慣れている相手ならこっちもそこまで気を使わないが、彼はこの前まで、穴に触れた事すらなかったのだ。
本当にヤバそうなら止めるのだが、彼の股間は萎えていない。
むしろ角度を上げてきている。
なら大丈夫だろうと、性欲研究者として判断した。
「悪いけどゴム着けてくれる?」
「……わかった。」
はかってる最中に暴発されると、お互いちょっと大変な事になる。
被害を防ぐ為にゴムを手渡すと、彼は案外、躊躇いなくそれをブツに着けた。
つける間、姿勢を崩さないよう俺は両手で彼の腰の辺りを支えながらそれを見ていた。
「……つけるの慣れてるね。」
「うるさい……っ。」
見たまま、素直な感想を述べた。
けれど彼は俺の言葉に少し苛立ったようだった。
慣れてるって、失礼な言い方だったのかな?
避妊具をサッとつけれるのは、とてもいい事だと思うけどな??
「……て言うか、マジで着けてんの?」
「悪いか……。」
つけるつけないで揉めたこともあり、俺は確認する。
いやだってさぁ??この彼がだよ??
この状態まで来て再度確認するのもおかしいが、半ば信じられなかった。
「……いつも着けてんの?」
「そんな事はしてない!き、今日は……お前に会うから……その……試すかも、と……。」
なるほど。
ディルドなりを買う訳だから、試す必要があるかもって考えたのか。
うん、理には適ってる。
理に適ってるけど!普通のよいこはそんな事しませんからね?!
思わずため息をつく。
……俺は大声で叫びたかった。
皆さん!注目~!!
ここに一見タチなのに、実はぐずぐずにエロいネコがいます~!!
彼氏募集中で~す!!
心の中で叫び終えまた溜め息をつく。
だってさ、まさか彼がさ……。
下から見上げるように、その真面目そうで綺麗な顔を見上げる。
信じられなかった。
……彼は何と、アソコにプラグを着けていたらしい。
さっきまで結構、普通に俺と話していたのに、その間もそんなものを着けていたなんて思わなかった。
いや、この前まで触った事もなかったのに、飛ばし過ぎだって!!
「一応聞くけど、いつからつけてたんだよ??」
「……朝。」
ガーンというぐらいの衝撃を受けた。
ちょっと待て?!
あんた、プラグ入れたまま半日働いてたわけ!?
なのにそんな澄ました顔してた訳?!
少し目眩がした。
「まさかとは思うけど?!チョーカーのスイッチまで入ってたりしないよな?!」
そこまでいったらかなりの処女ビッチだ。
誰が引っかかったら即、挿入可能な状態に身も心もなっている訳だから。
何だか気に入らなくて、俺は彼の首についているチョーカーに手を伸ばした。
首元に触れると、彼の体が微かに震えた。
チョーカーのスイッチは……。
良かった、入ってない。
俺は何故かとてもホッとした。
まぁ、まだ慣らしにもあまり慣れてないような人が、いきなりそこまでかっ飛ばしてなくて良かった。
それにしても、え?どうしちゃったのこの子!?
後ろ開発して、色々外れちゃったの!?
そんな見境なくエロスに走る感じには見えなかったのに……。
開いてはいけない扉を開いてしまって戻れなくなってしまったのだろうか……。
はじめてを手伝った手前、言い様のない罪悪感に苛まれる。
「……勘違いしないでくれ。チョーカーはデザインが気に入ったからいつも着けてるだけで……。当然スイッチは、一人で慣らしをする時しか入れてない……。」
俺がかなりびっくりしていたせいか。
彼は不満そうに、しかし不安そうにそう言った。
「……本当だよな?」
でも、快楽というのは人を変える。
生真面目なタイプの方が、一度知ってしまうと抜け出せず過激になる事もある。
そういう事も見てきた俺なので、プラグ入れて半日過ごしていた話を聞いてしまうと不安になる。
「……でっ。」
「え?」
俺の顔色を見たせいだろう。
彼は俯いてた。
そして肩を震わせて何か呟く。
「……え?何??大丈夫か??」
「…………でっ!」
「え??」
「……何で……っ!!……何でそんな意地悪な事言うんだよ!俺だって……っ!俺だって!死ぬほど恥ずかしかったんだからなっ!!」
急に大きな声を出され、俺はびっくりして彼の顔を見上げた。
肩を震わせて、彼は奥歯を噛み締めている。
……ヤバい、泣かせた。
赤く潤んだ目元に涙が溜まっている。
それを見て、俺は凄くショックを受けた。
凄くデリカシーのない事を彼に言ってしまった。
自分が性欲がないから、その羞恥心などが俺にはちゃんと理解できてなかったのだ。
「……ごめん。悪かった、悪かったよ……。」
そう謝る。
ぐずぐず泣き出してしまった彼を引き寄せ足の上に座らせる。
そして軽く抱きしめるようにして、落ち着くよう背中を撫でた。
「……ゴメンな?お前が一番、不安なのに……。マジでごめん。」
性欲がないから、なんていい訳だ。
相手の気持ちに寄り添ってやれなかったのは俺の落ち度だ。
まわりからこうだと決められてしまった中で、自分の本当の欲望をもてあまし、苦しんでいるのは他でもないこいつなのに、俺は心ない事を言ってしまった。
「………………っ。」
彼は何も言わなかった。
少しだけ俺の服を掴んで、体を俺に預けている。
俺はただ、肩に顔を埋めているこいつが落ち着くまで、そっと背中を撫で続けたのだった。
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