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野良烏
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「あ~!また幼女を連れて帰ってこんかった!!」
「……何度も言うが、俺は保育園に行った訳じゃない。仕事に行ったんだ。」
最近、レイがおかしな事を言うようになった。
疲れて帰ってきてこれだと、ほとほと嫌になる。
「何でや?!殺し屋ゆうたら!!幼女やろ!!」
「だから、何でそうなるんだ……。」
「『LE○N』かて!幼女連れてるやん!!凄腕の殺し屋は幼女って決まっとるやん!!」
どうやら映画や漫画の影響らしい。
かと言って、こうも毎日「幼女」「幼女」言われては気持ちが悪い。
だが、レイは止まらない。
「こう~!帰り血まみれのロングコートをなびかせ、片腕に軽々幼女を抱っこしてんねん!!ええやろ?!ええと思わん?!」
「ナイフメインでない限り返り血は浴びない。そもそも見つからない様に相手を暗殺するのが仕事なのだから、そんな接近戦は余程の緊急事態でなければ行わないのがマトモな暗殺者だ。」
「え~!「返り血&幼女」!かっこええやん~!!」
足をジタバタさせてレイは言う。
殺しの何が格好良いんだか、意味がわからない。
だいたい、返り血を浴びたという事は、その血を吹いた人間の死体がある訳で……。
昔は血まみれになって暗殺を行う者もいたが、今は感染症の危険性からどの暗殺者も返り血を浴びる事は極力避けている。
それに返り血を浴びるという事は、ペイントボールをぶつけられたようなものだ。
逃走時に思わぬ痕跡を残しかねない。
「だいたい幼女など、どこから連れてくる気なんだ、お前?」
「え~?!そやな~??殺しの現場で巻き込まれて両親殺されちゃった子とか~。」
「そう言うのは警察なりが保護して、親族に引き取られるものだ。勝手に連れ去ったら誘拐犯に格下げだ。」
「え~??したら~??謎の施設に囚われとった女の子とか~??」
「俺はエージェントではない。暗殺者だ。そう言った施設に潜入することは無い。」
「え~?!なら!!どこで幼女をゲットしてくるんや~!!カラスぅ~?!」
「だから、知らん。」
レイは俺の答えが不満らしく、ムスッと頬を膨らませて足をジタバタさせている。
そして何故か俺の顔をじっと見上げてくるのだが、何が言いたいんだかよくわからん。
「……お前、いい歳になったんだ。いい加減、子供じみた真似はやめろ。」
そう、まるで小さな子供の様な態度を取っているが、レイはそこまで小さな子どもではない。
幼少期の栄養状態が良くなかったのか体は小さめなのでギリギリ少年でも通るかもしれないが、俺の記憶が間違っていなければレイは10代後半ぐらいのはずだ。
「殺し屋と言えば幼女やのに~!!何でカラスはいつまでたっても幼女拾ってきいへんのや~!!」
そんなホイホイ子供が殺しの現場に落ちててたまるか。
俺は深々とため息をついた。
「……幼女は拾った事はないが、お前、何か忘れてないか??」
そう、俺は幼女は拾った事はない。
だがやもおえず子供は拾った事はある。
硝煙の臭いが立ち込める中、片手に乗せて鉛の雨の中を駆け抜けた事だってある。
本人は忘れているようだが……。
「……いや、幼女やないとアカン。」
レイは真顔でそう言った。
何なんだ?妹でも欲しいのだろうか??
かと言って人間なんてホイホイ拾って来れるものでもない。
「アカンもクソもないだろう。妹が欲しいなら、さっさと自立して俺の元を去れ。適当な身分は用意してやるから……。」
「え~?!何言うてんの?!それじゃ!殺し屋&幼女の組み合わせが見れへんやん!!だいたいカラス、家事全般全くできひんのに、俺を追い出してどないすんねん?!」
「……そんなもんはどうとでもなる。いいか、レイ。お前はもういい歳なのだからさっさと……。」
「その話するんやったら、カラスの秘蔵のウイスキー、めんつゆに変えてやる。」
「……それはやめろ。」
どうして秘蔵のウイスキーがある事を知っているのかは突っ込まなかった。
昔、無理矢理追い出した後、酷い目にあった事を思い出し、俺は手で顔を覆った。
あれは酷かった……。
ウイスキーがめんつゆどころではない。
歯磨き粉は靴クリームにされているわ、砂糖と塩は置き換えられどちらにもクエン酸や重曹が混ぜられているわ……。
生活の全てを預かられているというのは、命を握られている事に等しいのだと、我が身に降り掛かって改めて理解した。
はぁ……とため息をつく。
「俺がまた万が一何か拾うとしたとしても……先に拾ったもんが巣立ってからだ……。わかったか、レイ。」
「ん~それだと「BL」展開なんよなぁ~。」
「……ビ……お前……そういう趣味が?!」
「ちゃうねん!俺は幼女展開推しや~!!」
「はぁ……。どっちでも俺は迷惑だがな……。」
「BL展開やと~、俺、そろそろカラスの事抱かなあかんやろ~??」
「?!?!」
「まぁ……カラスがええんのやったら~……。」
「待て待て待て待て?!は?!何故、俺が抱かれる?!拾われた少年はお前だろうが?!レイ?!」
「せやな?せやから、拾われた少年は成長して大人になって、殺し屋を……。」
「やめろ。それ以上、聞く気もない。」
「だからなぁ~?!そろそろ幼女拾ってきてくれへんと~、俺も対応に困んねん~。」
俺は頭を抱えた。
何故、そのどちらかを選ばなければならないのか……。
第一レイが出ていけば済む事だ。
第二に、ここにまだいたいからと言って、そういう展開にする必要はないのだ。
第三に、それと幼女は全く関係ない。
「なぁ~、いつ、幼女連れてくるん~?!」
ニコニコ笑う無邪気な笑顔。
だがそこに、そこ知れぬ狂気が混ざっているように見え、俺はほとほと疲れきって、椅子にへたり込んで頭を抱えたのだった。
「……何度も言うが、俺は保育園に行った訳じゃない。仕事に行ったんだ。」
最近、レイがおかしな事を言うようになった。
疲れて帰ってきてこれだと、ほとほと嫌になる。
「何でや?!殺し屋ゆうたら!!幼女やろ!!」
「だから、何でそうなるんだ……。」
「『LE○N』かて!幼女連れてるやん!!凄腕の殺し屋は幼女って決まっとるやん!!」
どうやら映画や漫画の影響らしい。
かと言って、こうも毎日「幼女」「幼女」言われては気持ちが悪い。
だが、レイは止まらない。
「こう~!帰り血まみれのロングコートをなびかせ、片腕に軽々幼女を抱っこしてんねん!!ええやろ?!ええと思わん?!」
「ナイフメインでない限り返り血は浴びない。そもそも見つからない様に相手を暗殺するのが仕事なのだから、そんな接近戦は余程の緊急事態でなければ行わないのがマトモな暗殺者だ。」
「え~!「返り血&幼女」!かっこええやん~!!」
足をジタバタさせてレイは言う。
殺しの何が格好良いんだか、意味がわからない。
だいたい、返り血を浴びたという事は、その血を吹いた人間の死体がある訳で……。
昔は血まみれになって暗殺を行う者もいたが、今は感染症の危険性からどの暗殺者も返り血を浴びる事は極力避けている。
それに返り血を浴びるという事は、ペイントボールをぶつけられたようなものだ。
逃走時に思わぬ痕跡を残しかねない。
「だいたい幼女など、どこから連れてくる気なんだ、お前?」
「え~?!そやな~??殺しの現場で巻き込まれて両親殺されちゃった子とか~。」
「そう言うのは警察なりが保護して、親族に引き取られるものだ。勝手に連れ去ったら誘拐犯に格下げだ。」
「え~??したら~??謎の施設に囚われとった女の子とか~??」
「俺はエージェントではない。暗殺者だ。そう言った施設に潜入することは無い。」
「え~?!なら!!どこで幼女をゲットしてくるんや~!!カラスぅ~?!」
「だから、知らん。」
レイは俺の答えが不満らしく、ムスッと頬を膨らませて足をジタバタさせている。
そして何故か俺の顔をじっと見上げてくるのだが、何が言いたいんだかよくわからん。
「……お前、いい歳になったんだ。いい加減、子供じみた真似はやめろ。」
そう、まるで小さな子供の様な態度を取っているが、レイはそこまで小さな子どもではない。
幼少期の栄養状態が良くなかったのか体は小さめなのでギリギリ少年でも通るかもしれないが、俺の記憶が間違っていなければレイは10代後半ぐらいのはずだ。
「殺し屋と言えば幼女やのに~!!何でカラスはいつまでたっても幼女拾ってきいへんのや~!!」
そんなホイホイ子供が殺しの現場に落ちててたまるか。
俺は深々とため息をついた。
「……幼女は拾った事はないが、お前、何か忘れてないか??」
そう、俺は幼女は拾った事はない。
だがやもおえず子供は拾った事はある。
硝煙の臭いが立ち込める中、片手に乗せて鉛の雨の中を駆け抜けた事だってある。
本人は忘れているようだが……。
「……いや、幼女やないとアカン。」
レイは真顔でそう言った。
何なんだ?妹でも欲しいのだろうか??
かと言って人間なんてホイホイ拾って来れるものでもない。
「アカンもクソもないだろう。妹が欲しいなら、さっさと自立して俺の元を去れ。適当な身分は用意してやるから……。」
「え~?!何言うてんの?!それじゃ!殺し屋&幼女の組み合わせが見れへんやん!!だいたいカラス、家事全般全くできひんのに、俺を追い出してどないすんねん?!」
「……そんなもんはどうとでもなる。いいか、レイ。お前はもういい歳なのだからさっさと……。」
「その話するんやったら、カラスの秘蔵のウイスキー、めんつゆに変えてやる。」
「……それはやめろ。」
どうして秘蔵のウイスキーがある事を知っているのかは突っ込まなかった。
昔、無理矢理追い出した後、酷い目にあった事を思い出し、俺は手で顔を覆った。
あれは酷かった……。
ウイスキーがめんつゆどころではない。
歯磨き粉は靴クリームにされているわ、砂糖と塩は置き換えられどちらにもクエン酸や重曹が混ぜられているわ……。
生活の全てを預かられているというのは、命を握られている事に等しいのだと、我が身に降り掛かって改めて理解した。
はぁ……とため息をつく。
「俺がまた万が一何か拾うとしたとしても……先に拾ったもんが巣立ってからだ……。わかったか、レイ。」
「ん~それだと「BL」展開なんよなぁ~。」
「……ビ……お前……そういう趣味が?!」
「ちゃうねん!俺は幼女展開推しや~!!」
「はぁ……。どっちでも俺は迷惑だがな……。」
「BL展開やと~、俺、そろそろカラスの事抱かなあかんやろ~??」
「?!?!」
「まぁ……カラスがええんのやったら~……。」
「待て待て待て待て?!は?!何故、俺が抱かれる?!拾われた少年はお前だろうが?!レイ?!」
「せやな?せやから、拾われた少年は成長して大人になって、殺し屋を……。」
「やめろ。それ以上、聞く気もない。」
「だからなぁ~?!そろそろ幼女拾ってきてくれへんと~、俺も対応に困んねん~。」
俺は頭を抱えた。
何故、そのどちらかを選ばなければならないのか……。
第一レイが出ていけば済む事だ。
第二に、ここにまだいたいからと言って、そういう展開にする必要はないのだ。
第三に、それと幼女は全く関係ない。
「なぁ~、いつ、幼女連れてくるん~?!」
ニコニコ笑う無邪気な笑顔。
だがそこに、そこ知れぬ狂気が混ざっているように見え、俺はほとほと疲れきって、椅子にへたり込んで頭を抱えたのだった。
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