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一章
おもひで
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昔、俺はちょっとしたハプニングに巻き込まれた事があった。
小学校の時、女子が着替えをしている教室に、知らずに突っ込んでしまったのだ。
今時の小学生がどうなのかは、生前でも高校生だった俺は知る由も無いが、当時俺の小学校では、体育なんかの着替えは教室を男子と女子で代わりばんこに使っていたから起きた事故だった。男子が先に着替えて運動場に降りており、俺はといえば誰も中に女子がいる事など教えてくれる人がいないタイミングで、遅刻して教室を訪れていた。
ちゃんと時間割を覚えているだけで防げた事故は、悲しいことに防がれることなく、廊下に悲鳴が轟くわ、俺は怒られるわで散々だった。
正直俺は不貞腐れた。
ちょっとくらい肌を見られたからなんなのか、と。
まあ流石に今はそんな事思っても無いが、当時まだ性が云々なんぞ気にしてもいない遊び盛り。そんな事を、割と本気で考えていたこともあったのだ。
俺なら上半身裸くらい全然気にしないのに──とか、なんとか。
そして今。
俺は当時の被害者達に全力で土下座したい気持ちで一杯だった。
裸って訳でもないのに、ただちょっと露出が激しいくらいなのに。
死ぬほど恥ずかしがっている自分がいるっ──ッ!
何が『裸くらい』だよ、と昔の俺を殴りたい気持ちがむくむくと湧き上がる。
女って凄いなぁと黄昏る俺を他所に、ナーミアはどうしていいのかわからないという風にあわあわと慌てていた。
ナーミアにも申し訳ない事をした。
やはり、新しい(恥ずかしくない)服は急務だったようだ。視線を余計に感じる。つらい。あと寒い。
暫く二人して膠着し、顔を互いに赤くしていたが、落ち着いてきたころにナーミアがすと、俺に話しかけてきてくれた。
「……その、買いに行きましょうか。服……」
赤さが残る顔に苦笑いを浮かべたナーミアに、俺はこくりと頷いた。
そろそろ、上から降り注ぐ日光も辛くなっていた。
◇◆◇◆◇◆
公園を出て、ナーミアの案内の元服屋を目指して歩く。
道中、胸や顔や、色々なところに刺さる視線が本当に恥ずかしかったが、かといって足を止めたりはしていられないので我慢した。
コスプレイヤーとかはこれを快感に変換するのか……あまり目指したくはない世界だった。
「……金、大丈夫かねぇ……」
「多分、さっきのローブの代わりくらいなら何とかなると……思います。きっと、恐らくは……」
おっと、これは駄目そうですね……。
多分ときっとと恐らくはが同居していやがる……。
銀貨、名前の割に価値は大したことがないのか……或いは、この世界の服が想像以上に高価なのか。
「そっかぁ……ごめんな、ナーミア。変に気を遣わせたりして」
「い、いえ僕は全然、大丈夫です……フィリアさんこそ、大丈夫ですか? 顔、お赤いようですけれど」
「もう慣れる事にするよ……それはそうとしてローブは要るけど」
まあ、女の身体でいる以上は切って切り離せない問題だ。なら慣れるしかあるまい。
それに慣れたとしても日光の問題でローブは纏わないといけないので、実際大差はないかもしれないが。
「それならいいですけど……あ、もう着きましたよ!」
「おっ、そうか!」
俺は吉報に喜びと共に、金の入った袋を握りしめてドアを開け──!
◇◆◇◆◇◆
「んー……銀貨七枚かぁ。流石に売れる物はないなぁ」
駄目だった。
俺はがっくりと肩を落とし……ナーミアくんに慰められた。
うう、情けねえ……
小学校の時、女子が着替えをしている教室に、知らずに突っ込んでしまったのだ。
今時の小学生がどうなのかは、生前でも高校生だった俺は知る由も無いが、当時俺の小学校では、体育なんかの着替えは教室を男子と女子で代わりばんこに使っていたから起きた事故だった。男子が先に着替えて運動場に降りており、俺はといえば誰も中に女子がいる事など教えてくれる人がいないタイミングで、遅刻して教室を訪れていた。
ちゃんと時間割を覚えているだけで防げた事故は、悲しいことに防がれることなく、廊下に悲鳴が轟くわ、俺は怒られるわで散々だった。
正直俺は不貞腐れた。
ちょっとくらい肌を見られたからなんなのか、と。
まあ流石に今はそんな事思っても無いが、当時まだ性が云々なんぞ気にしてもいない遊び盛り。そんな事を、割と本気で考えていたこともあったのだ。
俺なら上半身裸くらい全然気にしないのに──とか、なんとか。
そして今。
俺は当時の被害者達に全力で土下座したい気持ちで一杯だった。
裸って訳でもないのに、ただちょっと露出が激しいくらいなのに。
死ぬほど恥ずかしがっている自分がいるっ──ッ!
何が『裸くらい』だよ、と昔の俺を殴りたい気持ちがむくむくと湧き上がる。
女って凄いなぁと黄昏る俺を他所に、ナーミアはどうしていいのかわからないという風にあわあわと慌てていた。
ナーミアにも申し訳ない事をした。
やはり、新しい(恥ずかしくない)服は急務だったようだ。視線を余計に感じる。つらい。あと寒い。
暫く二人して膠着し、顔を互いに赤くしていたが、落ち着いてきたころにナーミアがすと、俺に話しかけてきてくれた。
「……その、買いに行きましょうか。服……」
赤さが残る顔に苦笑いを浮かべたナーミアに、俺はこくりと頷いた。
そろそろ、上から降り注ぐ日光も辛くなっていた。
◇◆◇◆◇◆
公園を出て、ナーミアの案内の元服屋を目指して歩く。
道中、胸や顔や、色々なところに刺さる視線が本当に恥ずかしかったが、かといって足を止めたりはしていられないので我慢した。
コスプレイヤーとかはこれを快感に変換するのか……あまり目指したくはない世界だった。
「……金、大丈夫かねぇ……」
「多分、さっきのローブの代わりくらいなら何とかなると……思います。きっと、恐らくは……」
おっと、これは駄目そうですね……。
多分ときっとと恐らくはが同居していやがる……。
銀貨、名前の割に価値は大したことがないのか……或いは、この世界の服が想像以上に高価なのか。
「そっかぁ……ごめんな、ナーミア。変に気を遣わせたりして」
「い、いえ僕は全然、大丈夫です……フィリアさんこそ、大丈夫ですか? 顔、お赤いようですけれど」
「もう慣れる事にするよ……それはそうとしてローブは要るけど」
まあ、女の身体でいる以上は切って切り離せない問題だ。なら慣れるしかあるまい。
それに慣れたとしても日光の問題でローブは纏わないといけないので、実際大差はないかもしれないが。
「それならいいですけど……あ、もう着きましたよ!」
「おっ、そうか!」
俺は吉報に喜びと共に、金の入った袋を握りしめてドアを開け──!
◇◆◇◆◇◆
「んー……銀貨七枚かぁ。流石に売れる物はないなぁ」
駄目だった。
俺はがっくりと肩を落とし……ナーミアくんに慰められた。
うう、情けねえ……
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