26 / 92
第2章 「『冒険者』エイリアス」
第十四話 「決着」
しおりを挟む
──衝突する。
ガギン、と鈍く甲高い音が会場中に響いた。
集中により遮断していた聴覚を突き抜ける程の音の波動。
それだけの、衝撃だったのだ。
接触した剣と刀は、互角の力によって互いに弾かれることを拒み、半ばで競り合う。
その時、恐ろしいことが起きた。
アヤトさんの刀を覆う漆黒が、僕の片手剣を浸食してきたのだ!
「────!!?」
──これをこのまま貰うのはマズイ!!
確たる直観を以てそう判断し、一瞬に爆発的な力を籠め、刀を押し返す。
素早く距離を取り、黒くなった刀身を視る。
──朽ちている!! この短時間で……!
戦慄する。
まともに打ち合えばこちらの武器が朽ちる刀、など無茶苦茶だ。
受けることが出来ない、避けることしかできないのでは不利を強いられるのは当然。
──これが、彼の刀。【ドウジマ】の効果か……!!
【真銘解放】。
東方の戦闘職である、日本でもおなじみのクラスである『サムライ』が使う技の一つだ。
刀は一流の武器だ。この大都市で探しても刀に匹敵する剣はそう簡単には見つからない。
故に、創る手間、難易度は膨大。
刀職人の数は限られ、その精鋭たちが一本一本魂を込めて打ち上げる。
その、込められた魂が厄介なのだ。
込められた魂は、完成後につけられた銘に宿る。
侍は刀につけられた銘、それに込められた魂、情熱、想いを解放し。
刀の力とすることが出来るのだから──!!
【ドウジマ】の力は恐らく腐敗。
刀身に纏われた闇が一切を腐食させ、闇に帰させる強制力を持っている。
──方法は、一つか。
今の衝突が最後にならなかったのは、僕が未知の力に怖気づいたからだ。
本能はそうなるだろうと予知していた、にも拘らず、知性と理性がそれを否定した。
……馬鹿馬鹿しい。そして、彼に悪いと思った。
誇り高く、確かに今の一合を以てすべてを終わらせようとした彼に、申し訳なく思ったのだ。
だからこそ。
次は。次こそは、見せよう。
僕の全力を。
「…………再構築」
作る。もう一本、空いた左手に、右手と同様の片手剣を。
この技だけは、二本の剣が必要だった。
才能を使っていいかどうか、そこに最早ためらいはなかった。
ただ、目の前の強い奴に勝ちたい。
それだけ。心のうちに存在するのは、百年の恋にも勝るその一途な思いだけ。
それ以外の些末事は最早意にも介さない──!!
そう。打ち合えないのなら。
一発で決めればいいだろう……!!!
「…………次こそ」
決めよう。
たった一人、相手の上を行った証明の行方を!!
僕が一度、彼に笑いかけると。
彼も一度、笑い返した。
語ることは一度語り尽くした。
あとは腕だけが示すところ。
──走る。
身体は全力で前に倒す。
最早地面を這うように。四足歩行て駆ける獣のように。
右手は上に。左手は下に。
これは、牙だ。
敵を食いちぎるケモノの刃。
アヤトさんが鞘に刀を収める。
柄に手を当てる。
居合だ。それが直ぐに分かった。
刀という武器において、最速にして最強の威力を誇る必殺の一閃!
駆け抜ける。
身体は最早、刀の射程圏内。
リーチで勝る彼の刃は一足先に僕の体に刺さるだろう。
この一撃を避ければ、彼の身体に隙が出来、楽に勝つことが出来るだろうか。避けなければ、敗北は免れないだろうか。
理屈が脳に訴える。避けろ、と。
それを、知ったことかと蹴り飛ばす!!
「喰らい尽くせ!【ドウジマ】ァァァァァァ!!!」
しゃらん、と。
鈴が鳴るような音とともに、刀が鞘から引き抜かれ、超速で僕の頸へと迫る。
だが。
彼が刀を振るったそこは、最早こちらの射程内。
終わった後、どうなろうが知ったことではない。
要は。最後に立っていればそれでいいのだから──!
技を発動させる。
たった一つ、確かにこの手に握りこんだ努力の頂。
身体は、顎。
刃は、牙。
「月を食め──【斬獲する狼の牙】ォォォォォ!!!!!!」
僕の身体に刃が食い込み、黒い血潮を上げる。
その刀が、僕の命に届くよりも僅かに一瞬だけ早く……両手に持った刃が彼の腕で交錯し。
文字通り、彼の腕を喰い千切った。
ガギン、と鈍く甲高い音が会場中に響いた。
集中により遮断していた聴覚を突き抜ける程の音の波動。
それだけの、衝撃だったのだ。
接触した剣と刀は、互角の力によって互いに弾かれることを拒み、半ばで競り合う。
その時、恐ろしいことが起きた。
アヤトさんの刀を覆う漆黒が、僕の片手剣を浸食してきたのだ!
「────!!?」
──これをこのまま貰うのはマズイ!!
確たる直観を以てそう判断し、一瞬に爆発的な力を籠め、刀を押し返す。
素早く距離を取り、黒くなった刀身を視る。
──朽ちている!! この短時間で……!
戦慄する。
まともに打ち合えばこちらの武器が朽ちる刀、など無茶苦茶だ。
受けることが出来ない、避けることしかできないのでは不利を強いられるのは当然。
──これが、彼の刀。【ドウジマ】の効果か……!!
【真銘解放】。
東方の戦闘職である、日本でもおなじみのクラスである『サムライ』が使う技の一つだ。
刀は一流の武器だ。この大都市で探しても刀に匹敵する剣はそう簡単には見つからない。
故に、創る手間、難易度は膨大。
刀職人の数は限られ、その精鋭たちが一本一本魂を込めて打ち上げる。
その、込められた魂が厄介なのだ。
込められた魂は、完成後につけられた銘に宿る。
侍は刀につけられた銘、それに込められた魂、情熱、想いを解放し。
刀の力とすることが出来るのだから──!!
【ドウジマ】の力は恐らく腐敗。
刀身に纏われた闇が一切を腐食させ、闇に帰させる強制力を持っている。
──方法は、一つか。
今の衝突が最後にならなかったのは、僕が未知の力に怖気づいたからだ。
本能はそうなるだろうと予知していた、にも拘らず、知性と理性がそれを否定した。
……馬鹿馬鹿しい。そして、彼に悪いと思った。
誇り高く、確かに今の一合を以てすべてを終わらせようとした彼に、申し訳なく思ったのだ。
だからこそ。
次は。次こそは、見せよう。
僕の全力を。
「…………再構築」
作る。もう一本、空いた左手に、右手と同様の片手剣を。
この技だけは、二本の剣が必要だった。
才能を使っていいかどうか、そこに最早ためらいはなかった。
ただ、目の前の強い奴に勝ちたい。
それだけ。心のうちに存在するのは、百年の恋にも勝るその一途な思いだけ。
それ以外の些末事は最早意にも介さない──!!
そう。打ち合えないのなら。
一発で決めればいいだろう……!!!
「…………次こそ」
決めよう。
たった一人、相手の上を行った証明の行方を!!
僕が一度、彼に笑いかけると。
彼も一度、笑い返した。
語ることは一度語り尽くした。
あとは腕だけが示すところ。
──走る。
身体は全力で前に倒す。
最早地面を這うように。四足歩行て駆ける獣のように。
右手は上に。左手は下に。
これは、牙だ。
敵を食いちぎるケモノの刃。
アヤトさんが鞘に刀を収める。
柄に手を当てる。
居合だ。それが直ぐに分かった。
刀という武器において、最速にして最強の威力を誇る必殺の一閃!
駆け抜ける。
身体は最早、刀の射程圏内。
リーチで勝る彼の刃は一足先に僕の体に刺さるだろう。
この一撃を避ければ、彼の身体に隙が出来、楽に勝つことが出来るだろうか。避けなければ、敗北は免れないだろうか。
理屈が脳に訴える。避けろ、と。
それを、知ったことかと蹴り飛ばす!!
「喰らい尽くせ!【ドウジマ】ァァァァァァ!!!」
しゃらん、と。
鈴が鳴るような音とともに、刀が鞘から引き抜かれ、超速で僕の頸へと迫る。
だが。
彼が刀を振るったそこは、最早こちらの射程内。
終わった後、どうなろうが知ったことではない。
要は。最後に立っていればそれでいいのだから──!
技を発動させる。
たった一つ、確かにこの手に握りこんだ努力の頂。
身体は、顎。
刃は、牙。
「月を食め──【斬獲する狼の牙】ォォォォォ!!!!!!」
僕の身体に刃が食い込み、黒い血潮を上げる。
その刀が、僕の命に届くよりも僅かに一瞬だけ早く……両手に持った刃が彼の腕で交錯し。
文字通り、彼の腕を喰い千切った。
0
お気に入りに追加
1,291
あなたにおすすめの小説
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます
ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう
どんどん更新していきます。
ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。
【完結】婚約破棄されて修道院へ送られたので、今後は自分のために頑張ります!
猫石
ファンタジー
「ミズリーシャ・ザナスリー。 公爵の家門を盾に他者を蹂躙し、悪逆非道を尽くしたお前の所業! 決して許してはおけない! よって我がの名の元にお前にはここで婚約破棄を言い渡す! 今後は修道女としてその身を神を捧げ、生涯後悔しながら生きていくがいい!」
無実の罪を着せられた私は、その瞬間に前世の記憶を取り戻した。
色々と足りない王太子殿下と婚約破棄でき、その後の自由も確約されると踏んだ私は、意気揚々と王都のはずれにある小さな修道院へ向かったのだった。
注意⚠️このお話には、妊娠出産、新生児育児のお話がバリバリ出てきます。(訳ありもあります)お嫌いな方は自衛をお願いします!
2023/10/12 作者の気持ち的に、断罪部分を最後の番外にしました。
2023/10/31第16回ファンタジー小説大賞奨励賞頂きました。応援・投票ありがとうございました!
☆このお話は完全フィクションです、創作です、妄想の作り話です。現実世界と混同せず、あぁ、ファンタジーだもんな、と、念頭に置いてお読みください。
☆作者の趣味嗜好作品です。イラッとしたり、ムカッとしたりした時には、そっと別の素敵な作家さんの作品を検索してお読みください。(自己防衛大事!)
☆誤字脱字、誤変換が多いのは、作者のせいです。頑張って音読してチェックして!頑張ってますが、ごめんなさい、許してください。
★小説家になろう様でも公開しています。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
王子は婚約破棄をし、令嬢は自害したそうです。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「アリシア・レッドライア! おまえとの婚約を破棄する!」
公爵令嬢アリシアは王子の言葉に微笑んだ。「殿下、美しい夢をありがとうございました」そして己の胸にナイフを突き立てた。
血に染まったパーティ会場は、王子にとって一生忘れられない景色となった。冤罪によって婚約者を自害させた愚王として生きていくことになる。
転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった
お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。
全力でお母さんと幸せを手に入れます
ーーー
カムイイムカです
今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします
少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^
最後まで行かないシリーズですのでご了承ください
23話でおしまいになります
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる