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第2章 「『冒険者』エイリアス」

第十四話 「決着」

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 ──衝突する。

 ガギン、と鈍く甲高い音が会場中に響いた。
 集中により遮断していた聴覚を突き抜ける程の音の波動。
 それだけの、衝撃だったのだ。

 接触した剣と刀は、互角の力によって互いに弾かれることを拒み、半ばで競り合う。

 その時、恐ろしいことが起きた。
 アヤトさんの刀を覆う漆黒が、僕の片手剣を浸食してきた・・・・・・のだ!

「────!!?」

 ──これをこのまま貰うのはマズイ!!

 確たる直観を以てそう判断し、一瞬に爆発的な力を籠め、刀を押し返す。
 素早く距離を取り、黒くなった刀身を視る。

 ──朽ちている・・・・・!! この短時間で……!

 戦慄する。
 まともに打ち合えばこちらの武器が朽ちる刀、など無茶苦茶だ。
 受けることが出来ない、避けることしかできないのでは不利を強いられるのは当然。

 ──これが、彼の刀。【ドウジマ】の効果か……!!

 【真銘解放】。
 東方の戦闘職である、日本でもおなじみのクラスである『サムライ』が使うスキルの一つだ。
 刀は一流の武器だ。この大都市で探しても刀に匹敵する剣はそう簡単には見つからない。
 故に、創る手間、難易度は膨大。
 刀職人の数は限られ、その精鋭たちが一本一本魂を込めて打ち上げる。
 
 その、込められた魂が厄介なのだ。
 込められた魂は、完成後につけられた銘に宿る。
 侍は刀につけられた銘、それに込められた情熱・・想い・・を解放し。
 刀の力とすることが出来るのだから──!!

 【ドウジマ】の力は恐らく腐敗。
 刀身に纏われた闇が一切を腐食させ、闇に帰させる強制力を持っている。

 ──方法は、一つか。

 今の衝突が最後にならなかったのは、僕が未知の力に怖気づいた・・・・・からだ。
 本能はそうなるだろうと予知していた、にも拘らず、知性と理性がそれを否定した。

 ……馬鹿馬鹿しい。そして、彼に悪いと思った。
 誇り高く、確かに今の一合を以てすべてを終わらせようとした彼に、申し訳なく思ったのだ。

 だからこそ。
 次は。次こそは、見せよう。
 僕の全力を。

「…………再構築エーミット

 作る。もう一本、空いた左手に、右手と同様の片手剣を。
 この技だけは、二本の剣が必要だった。
 才能チートを使っていいかどうか、そこに最早ためらいはなかった。

 ただ、目の前の強いすごい奴に勝ちたい。
 それだけ。心のうちに存在するのは、百年の恋にも勝るその一途な思いだけ。
 
 それ以外の些末事は最早意にも介さない──!!

 そう。打ち合えないのなら。
 一発で決めれば・・・・・・・いいだろう・・・・・……!!!

「…………次こそ」

 決めよう。
 たった一人、相手の上を行った証明の行方を!!

 僕が一度、彼に笑いかけると。
 彼も一度、笑い返した。
 語ることは一度語り尽くした。
 あとは腕だけが示すところ。

 ──走る。
 身体は全力で前に倒す。
 最早地面を這うように。四足歩行て駆ける獣のように。

 右手は上に。左手は下に。
 これは、だ。
 敵を食いちぎるケモノのきば

 アヤトさんが鞘に刀を収める。
 柄に手を当てる。
 居合だ。それが直ぐに分かった。
 刀という武器において、最速にして最強の威力を誇る必殺の一閃!

 駆け抜ける。
 身体は最早、刀の射程圏内。
 リーチで勝る彼の刃は一足先に僕の体に刺さるだろう。
 この一撃を避ければ、彼の身体に隙が出来、楽に勝つことが出来るだろうか。避けなければ、敗北は免れないだろうか。
 理屈が脳に訴える。避けろ、と。
 それ理屈を、知ったことか・・・・・・と蹴り飛ばす!!

「喰らい尽くせ!【ドウジマ】ァァァァァァ!!!」

 しゃらん、と。
 鈴が鳴るような音とともに、刀が鞘から引き抜かれ、超速で僕のくびへと迫る。

 だが。
 彼が刀を振るったそこは、最早こちらの射程内。

 終わった後、どうなろうが知ったことではない。
 要は。最後に立っていれば・・・・・・・・・それでいいのだから──!

 スキルを発動させる。
 たった一つ、確かにこの手に握りこんだ努力の頂。

 身体は、あぎと
 刃は、牙。

「月をめ──【斬獲する狼の牙ヴァナルガンド】ォォォォォ!!!!!!」

 僕の身体に刃が食い込み、黒い血潮を上げる。
 その刀が、僕の命に届くよりも僅かに一瞬だけ早く……両手に持った刃が彼の腕で交錯し。

 文字通り、彼の腕を喰い千切った。
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