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シュガーダディ
21st ボンミスクリーム
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「というか、さ?尾行するなら顔まわりだけでも変装した方がいいんじゃない?」
言織が提案する。たしかに、顔がバレてしまうと後々面倒なことになるかもしれない。篦河はニヤニヤしながら頷いて同意を示す。
二人は駅前に佇む商業ビルに入り、ビル内の百円ショップに入店した。
「何が必要かな?」
「ひへへ……顔を隠すなら、これと、これと……これかな」
篦河が慣れた手つきで商品をカゴの中に入れていく。結局、彼女たちは黒マスクとサングラス、白のキャップを三つずつ購入した。
「これでバッチリだね!」
「ひへへ、そうだね」
「――あ、アイス食べない?」
「いいねぇ。ひへへへ」
二人は目的のことを完全に忘れて近くのアイスクリームショップに向かった。
「あー、結構混んでるね」
「そうだね……」
二人は列の最後尾に並び、どのアイスにしようかな、と迷い始める。ミント系か、チョコレート系か。フルーツ系もいいなぁ……
「どうしよっかなぁ……篦河さんは何にする?」
「んー、あたしはアズキかな。人気ないところがあたしと似てるし……ひへへ……」
篦河はどうしようもない悲壮感を醸し出す。言織はそんなことは全く気にせず「へぇ……」と雑な返事をする。ショーケースを見ながら迷いに迷っていると、いつの間にか列が進んで二人に順番が回ってきた。
「えっと……チョコレートとあずきのシングルをカップで」
二人は代金を支払い、冷たいアイスを受け取る。それから、優雅に椅子に座っちゃったりなんかしてサクサクとアイスを食べていく。
「おいしー!」
「ひへへ……」
あー、幸せ。甘いもの食べるのってこんなに素晴らしいことだっけ?言織はほんわかとした気持ちになる。
言織がスプーンをブラウンの山に差したとき、ポケットの中で一つバイブ音が響く。言織がスマホを取り出すと、ホーム画面に燦然と『裏見くん』と書かれたメッセージが煌めく。
『ねえどこいる?』
言織はスリープボタンを一度押し、一度ポケットに入れ直す。それから、差したばかりのスプーンを口の中へと運ぶ。
あー甘い。おいしい。滑らかなアイスと香ばしいチョコレートのハーモニーが絶妙だ。
言織が幸せに浸っていると、またポケットの中でスマホが暴れる。しかも今度は二回も。言織は煩わしい思いを押し殺しながらスマホを取り出す。画面には、二つのメッセージが躍っていた。
『おい!どこいるんだ!』
『もう銀河さん電車乗るぞ!』
――ん?どういうことだろう。電車に乗る?えっと、なんか予定あったかなぁ……
「あー!!そうだ、尾行!」
「ひへへ、それはクズくんが来てからで良いじゃないか~」
篦河は呑気に小豆を一粒口に入れた。
「もう裏見くんは電車に乗るらしいよ!」
「ひへ?そんなわけないでしょ。それなら連絡の一つや二つ入れるよ、クズくんなら――」
篦河はスマホをじっと見る。時計表示の下に通知はない。
「ほら、なにも来てな……い?」
いや、たしかに通知はない。しかし、本来通知があるべき場所の上になにやらおかしなマークがある。三日月のようなマークだ。
「――おやすみモードじゃん!!」
おやすみモードとは、就寝時などに使う通知を消すことが出来る機能だ。篦河は、通知が来ても気づかないというこの機能の特性を活かして授業中はオンにしているのだが、よりによって今日はオフにし忘れていた。
「と、とりあえずいこう!」
言織は篦河の手を引き、その場を一気に離れる。走りながら百円ショップで購入した服を全て着用し、アイスを持ちながらビルを飛び出る。
◆ ◆ ◆
十分前。オレは銀河さんを見失わないようにしっかり尾行していた。しかし、尾行しているだけではいけない。この後オレは常磐さん、篦河と合流しなくてはならない。つまり、駅で何分過ごせるかの下調べもしなくてはならないのだ。
まずは次の電車がいつなのかを調べよう。歩きスマホにはなってしまうが……致し方ない。次は――八分後、十七分後、二十八分後……八分後は無理だから、十七分後の電車になるだろう。そんなに時間は無いな。二人はどこで待っているのだろうか?まあ、直前で聞けば大丈夫か。
駅が見えてきた。銀色に輝く列車がかなりの速度で入線してきている。そろそろ二人に連絡をするか。篦河と常磐さんそれぞれにメッセージを送る。
『ねえどこいる?』
これでよし。こんな緊張感のあることをしているんだ。流石にすぐ返信が来るだろうな。
――既読がつかない。あれ?気づいてないのだろうか。銀河さんはオレに気づく素振りもなく駅構内に入っていく。オレは辺りを見回してどこに二人がいるのかを確認しようとする。
――居ない!?改札内、券売機付近、駅ビルのふもと……どこにもいない!?二人は銀河さんに顔を知られている訳では無いのだから堂々と過ごしていれば良いのに!
オレは急いで次のメッセージを送る。
『おい!どこにいるんだ!』
オレがこの文章を打っている間にも、銀河さんはホームへ向かっていく。オレはホームにいるのではないかと思い、僅かな期待を胸に改札機を通過する。
階段を駆け上がり、ホームに出る。銀河さんがどこにいるのかを確認し、気づかれないように死角へ入る。それから、篦河と常磐さんの居場所を確認する。辺りを見回しても……やっぱり居ない!
列車の接近を知らせるメロディと放送が流れ始める。電車が接近する音が段々と大きくなってくる。
オレは三つ目のメッセージをものすごく急いで打ち込み、紙飛行機のマークを押した。
『もう銀河さん電車乗るぞ!』
言織が提案する。たしかに、顔がバレてしまうと後々面倒なことになるかもしれない。篦河はニヤニヤしながら頷いて同意を示す。
二人は駅前に佇む商業ビルに入り、ビル内の百円ショップに入店した。
「何が必要かな?」
「ひへへ……顔を隠すなら、これと、これと……これかな」
篦河が慣れた手つきで商品をカゴの中に入れていく。結局、彼女たちは黒マスクとサングラス、白のキャップを三つずつ購入した。
「これでバッチリだね!」
「ひへへ、そうだね」
「――あ、アイス食べない?」
「いいねぇ。ひへへへ」
二人は目的のことを完全に忘れて近くのアイスクリームショップに向かった。
「あー、結構混んでるね」
「そうだね……」
二人は列の最後尾に並び、どのアイスにしようかな、と迷い始める。ミント系か、チョコレート系か。フルーツ系もいいなぁ……
「どうしよっかなぁ……篦河さんは何にする?」
「んー、あたしはアズキかな。人気ないところがあたしと似てるし……ひへへ……」
篦河はどうしようもない悲壮感を醸し出す。言織はそんなことは全く気にせず「へぇ……」と雑な返事をする。ショーケースを見ながら迷いに迷っていると、いつの間にか列が進んで二人に順番が回ってきた。
「えっと……チョコレートとあずきのシングルをカップで」
二人は代金を支払い、冷たいアイスを受け取る。それから、優雅に椅子に座っちゃったりなんかしてサクサクとアイスを食べていく。
「おいしー!」
「ひへへ……」
あー、幸せ。甘いもの食べるのってこんなに素晴らしいことだっけ?言織はほんわかとした気持ちになる。
言織がスプーンをブラウンの山に差したとき、ポケットの中で一つバイブ音が響く。言織がスマホを取り出すと、ホーム画面に燦然と『裏見くん』と書かれたメッセージが煌めく。
『ねえどこいる?』
言織はスリープボタンを一度押し、一度ポケットに入れ直す。それから、差したばかりのスプーンを口の中へと運ぶ。
あー甘い。おいしい。滑らかなアイスと香ばしいチョコレートのハーモニーが絶妙だ。
言織が幸せに浸っていると、またポケットの中でスマホが暴れる。しかも今度は二回も。言織は煩わしい思いを押し殺しながらスマホを取り出す。画面には、二つのメッセージが躍っていた。
『おい!どこいるんだ!』
『もう銀河さん電車乗るぞ!』
――ん?どういうことだろう。電車に乗る?えっと、なんか予定あったかなぁ……
「あー!!そうだ、尾行!」
「ひへへ、それはクズくんが来てからで良いじゃないか~」
篦河は呑気に小豆を一粒口に入れた。
「もう裏見くんは電車に乗るらしいよ!」
「ひへ?そんなわけないでしょ。それなら連絡の一つや二つ入れるよ、クズくんなら――」
篦河はスマホをじっと見る。時計表示の下に通知はない。
「ほら、なにも来てな……い?」
いや、たしかに通知はない。しかし、本来通知があるべき場所の上になにやらおかしなマークがある。三日月のようなマークだ。
「――おやすみモードじゃん!!」
おやすみモードとは、就寝時などに使う通知を消すことが出来る機能だ。篦河は、通知が来ても気づかないというこの機能の特性を活かして授業中はオンにしているのだが、よりによって今日はオフにし忘れていた。
「と、とりあえずいこう!」
言織は篦河の手を引き、その場を一気に離れる。走りながら百円ショップで購入した服を全て着用し、アイスを持ちながらビルを飛び出る。
◆ ◆ ◆
十分前。オレは銀河さんを見失わないようにしっかり尾行していた。しかし、尾行しているだけではいけない。この後オレは常磐さん、篦河と合流しなくてはならない。つまり、駅で何分過ごせるかの下調べもしなくてはならないのだ。
まずは次の電車がいつなのかを調べよう。歩きスマホにはなってしまうが……致し方ない。次は――八分後、十七分後、二十八分後……八分後は無理だから、十七分後の電車になるだろう。そんなに時間は無いな。二人はどこで待っているのだろうか?まあ、直前で聞けば大丈夫か。
駅が見えてきた。銀色に輝く列車がかなりの速度で入線してきている。そろそろ二人に連絡をするか。篦河と常磐さんそれぞれにメッセージを送る。
『ねえどこいる?』
これでよし。こんな緊張感のあることをしているんだ。流石にすぐ返信が来るだろうな。
――既読がつかない。あれ?気づいてないのだろうか。銀河さんはオレに気づく素振りもなく駅構内に入っていく。オレは辺りを見回してどこに二人がいるのかを確認しようとする。
――居ない!?改札内、券売機付近、駅ビルのふもと……どこにもいない!?二人は銀河さんに顔を知られている訳では無いのだから堂々と過ごしていれば良いのに!
オレは急いで次のメッセージを送る。
『おい!どこにいるんだ!』
オレがこの文章を打っている間にも、銀河さんはホームへ向かっていく。オレはホームにいるのではないかと思い、僅かな期待を胸に改札機を通過する。
階段を駆け上がり、ホームに出る。銀河さんがどこにいるのかを確認し、気づかれないように死角へ入る。それから、篦河と常磐さんの居場所を確認する。辺りを見回しても……やっぱり居ない!
列車の接近を知らせるメロディと放送が流れ始める。電車が接近する音が段々と大きくなってくる。
オレは三つ目のメッセージをものすごく急いで打ち込み、紙飛行機のマークを押した。
『もう銀河さん電車乗るぞ!』
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