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1◆変態臭い美人

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俺、ノヴィ18歳はとある伯爵家の令息で、婚約者の男がいたけれど、先日婚約破棄をされてしまった。

婚約破棄の理由は、「やっぱり女の子がいいから」である。

……じゃあ俺と最初から婚約するなよ!!

男だと子供は望めないけれど、俺のこと愛しているからって俺と婚約したくせに、ふざけんなよ!!

しかも、俺の両親は俺の味方してくれなくて、家の面汚しだって俺を罵り俺を着の身着のまま追い出した。

なんで実の家族に追い打ちされないといけないんだ……。悲しい。

そして俺は、荷物も金もないから森で野宿をしていた。

もうさ、俺に死ねって言ってるのかと問いたいよね。

だけど肯定されそうなのがめっちゃ怖い。

俺、家族に愛されてなかったのかな……。

……切ないから俺は考えないことにした。



そんな困り果てていた俺と、旅の魔術師セレスさんは出会った。

最初は美人過ぎて女性かと思ったけど、セレスさんは男性である。

長い銀髪を緩く後ろでリボンで結び、涼やかな紫の瞳をしている。

スラリと華奢にみえる身体で、身長は平均の男ぐらいはあるだろう。

ちなみに俺は、黒髪は男らしいショートで、珍しい金の瞳。

体質的に頑張っても細マッチョ以上になれない身体で、身長は平均より低い。



セレスさんが俺を拾ってくれたから、二人で旅をすることになったんだ。

セレスさんにはすごく感謝している。

……拾ってくれた理由?

俺に一目惚れしたらしい。

婚約者にあんな振られ方した後なので、恋愛はしばらく御免だけどね。

とにかくそれが、俺とセレスさんの出会うきっかけであり、一緒に旅をする始まりだった。



「ねぇねぇ、ノヴィきゅん!次の街はお魚料理に力を入れてる場所なんだって」

「お魚美味しいですよね」

「お魚と僕だったら、どっちが好き?」

「お魚ですね」

「もう!ちょっとは悩んでよ!?」

ちょっと変態臭いこの人がセレスさん。

まだ花も恥じらう26歳らしい。

……花も恥じらうって、女性に使う表現だったような?

くねくねして、俺に上目遣いして、腕に抱きついてくる……そんなセレスさんは、確かに女の子成分入ってはいそうだ。

でも、夜はわりとマジで雄の顔して迫ってくる。

……まぁ、身体だけならと受け入れているので文句は言わない。

ちなみに部屋はいつも二人一部屋で、ベッドも一つだ。

いつも一緒に寝てるから問題はない。



セレスさんが旅する理由は知らない。

聞いたら教えてくれなかったんだ。

『理由?内緒♡ミステリアスな方が魅力的でしょ?でも、どうしても聞きたいって言うなら考えないでもないかな?』

『あぁ、じゃあもう聞きません』

『ちょっと!?即断しないで!?』

『セレスさんはミステリアスボーイだから仕方ないですよ……クス』

『ねぇ今なんで笑ったの?お兄さん気になるなぁ。ねぇなんで笑ったの?ねぇ!!』

セレスさんはミステリアスなお兄さん(笑)だから、旅の理由は二度と聞かないつもりだ。

もしかしたら、いつかセレスさんが話してくれる時がくるのかもしれない。

そんな時がくるならば、ミステリアスはもういいの?とからかってやろうと思う。



辿り着いた港町。

カモメの鳴き声と潮の香りに、海だとはしゃぎたい気分になる。

この港町には船に乗るために来たんだけど、急ぐ旅じゃないらしいからゆっくり観光するんだ。

ということで、さっそく二人で魚料理を堪能したのだった。
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