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15◆物言わぬ人形

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「大人しく死ね!俺はジゼルと番うんだ!」

「断る!そしてジゼルは私の番いだ!」

ナイフを軽々扱うラティスと、水の魔法で剣を作ってそれで戦うリューレンのマジバトルが始まった。

龍神は神の如く崇められる存在だけあって強いはずなのに、リューレンは押され気味だった。

ボロボロに傷つくリューレンから流れる血に、俺は涙が出てしまうのに……俺は戦う術をもたない。

「くっ!」

「ははっ!龍神なんていっても大したことないんだな!」

………リューレンは今、本来の力を出せないから苦戦しているんだ。

誰かにはっきり言われてはいなかったけれど、この胸の宝玉は教えてくれる。

龍神の本来の力は、宝玉あってのものだと……。

今は宝玉がないから、今のリューレンの力が制限されているんだ。

涙が流れる……。

宝玉がないから勝てないのなら、宝玉があったなら………。

……勝てたら、リューレンは助かるよね?



マスター、俺はリューレンに愛されたよ。

マスター、俺はリューレンを愛したよ。

マスター、俺は幸せに生きたよ。

マスター、俺はちゃんと約束を守れたでしょ?

だから、マスター……どうか、この判断を許してね………。



もう大切な誰かを失いたくない俺は、穏やかに微笑むと胸元をはだけさせて胸に手を当てた。

「リューレン」

「ジゼル?」

何かに気づいたリューレンが、ラティスの攻撃を交わしながらこちらを振り向く。

不穏な気配を感じたからか、ラティスを俺から反対側の壁に吹き飛ばして、リューレンは俺に駆け寄る。

でも、ラティスにはあまりダメージはなかったようだ。

………やはり、こうするしかないのだろう。

「愛してくれてありがとう。俺も愛していたよ」

「ジゼル!何をする気だ!?」

ただ触るだけなら柔らかな人間のような胸に、俺は壊す目的で胸を掴んだ。

バキッ!

壊れて穴が開いてしまった胸の中に手を突っ込むと、俺は迷わず宝玉を鷲掴みする。

………あぁ、でも少し、少しだけ……死ぬのが怖いな。

でも、所詮俺はオートマタだし、人間じゃないし………宝玉はリューレンの物だったんだし………。

だから、怖いのなんて我慢しよう。

「ジゼル!やめろ!!」

「宝玉、返しますね」

宝玉を無理矢理引っ張ると、宝玉と身体を繋ぐコードやら魔法陣やらを壊しながら宝玉は中から出てきた。

宝玉が身体の中からなくなった俺の身体は、床に倒れる寸前にリューレンが抱きとめてくれた。

「………ジゼルっ!」

だけど、もう俺は金髪で青い目の物言わぬ人形になっていた。
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