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16◆魔物の凶暴化(エスター視点

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あのフォークぶっ刺し事件の翌日から、ヒジリが食事をちゃんと食べてくれるようになった。

それについて安心はしているが、自分で食べさせるのが不安という建前で、私とマリウスが代わる代わる食べさせている。

今なら、子供に親離れしてほしくない親の気持ちがわかるぞ。

ちなみに、ヒジリの部屋は外側から鍵をかけている。

……仕事でヒジリを一人にして、もしもいなくなっていたらと思うと不安なんだ。

窓にも南京錠をつけているが、それは飛び降り未遂が危なかったからだ。



仕事の休憩時間にたまたま廊下で会ったシュヴァルツ辺境伯に、ヒジリのことを聞かれたから鍵の話をしたら、シュヴァルツ辺境伯が驚愕の眼差しを向けてきた。

「エスター……それ、監禁じゃないか?」

「セドリック様、監禁などと人聞きの悪い。私達はヒジリを危険から守ってるだけです」

「まるでストーカーの言い訳のようだ……」

シュヴァルツ辺境伯は頭を抱えている。

そんなに鍵をつけるのは良くなかっただろうか?

私達と一緒なら窓は開けるし、散歩に行けるようになれば外にも出すつもりなのに………。



そう私もマリウスも思っていたが、シュヴァルツ辺境伯から私は説教を受けることになった。

「エスター、監禁は非人道的行いだからな?やめなさい。守るにもやり方というものがあるだろう。世話係をつけておけば、鍵の必要はないはずだ」

「しかし、私とマリウス以外でヒジリのお世話をするのは……」

……嫌だと言い辛いな。

「あの子は人なんだ。物ではない。わかっているだろう」

「はい」

「エスター、私はヒジリ君を保護していると認識している。どこかの鬼畜から逃げてきた奴隷の可能性のある子供なんだろう?監禁という行いで、ヒジリ君の心が傷つく可能性は考えなかったのか?」

「……」

「エスターとマリウスがヒジリ君に特別な感情を持つのは咎めないよ。けれど、その気持ちを非人道的行いをしていい理由にしてはいけない。わかったかな?」

「はい……」

「わかったならいい。世話係は私が選んでおくからエスターはマリウスを呼んで、二人でお仕置きとして走り込みしてきなさい」

「はい」

言い返せなかった私は、渋々マリウスをみつけて外に走りに向かうのだった。



ヘトヘトになって帰ってきたら、シュヴァルツ辺境伯から呼び出された。

シュヴァルツ辺境伯の執務室には、第一~第四の隊長と副隊長が集められていた。

そして、深刻な表情のシュヴァルツ辺境伯が緊急の知らせの内容を語る。

「魔物の凶暴化!?」

突如として、魔物が凶暴化して村や街を襲っているらしい。

街なら冒険者も騎士団もいるからなんとかなるそうだ。

だが村は……戦える男達でなんとか戦っているらしいが、このままでは小さな村なら壊滅まったなしだとか……。

「この街にも魔物が押し寄せている。第一は少数の警備を残し、第二と共に急ぎ森に向かい魔物を討伐せよ。第三は近隣の村々の救援に向かえ。第四は街の人々の避難を優先に。避難が終わったならそのまま待機。もしも街の中に魔物が侵入したならば討伐せよ」

「「「はっ!」」」

こうして、私は第三部隊を連れて村の救援に走ることになった。
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