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11◆罪悪感より恥ずかしいが強い

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朝からびっくりした。

僕にも美醜の感覚ぐらいはある。

エスターとマリウスがものすごくイケメンだということはわかっている。

そのイケメンであるエスターに口移しで食べさせられて、純粋に恥ずかしいという気持ちが食べることの罪悪感をふっ飛ばした。

またされそうになって、今度は恥ずかしいという気持ちより怖いという気持ちに支配されて、食べる罪悪感より口移しから逃げるための選択肢を選んだ。

……父さんに与えられていた恐怖とは別種の恐怖だよね。

僕みたいなやつに何故口移しとはいえキスできるのか理解できない。

僕は僕が相手なら絶対にキスしないと思う。



エスターの視線を気にしつつもゆっくりとだがスープを半分飲んだ。

『もう食べないのか?』

「……お腹いっぱい」

今までの食生活で、僕の胃はとても小さくなっているのだろう。

だから、これ以上は無理そうだった。

そんな僕にエスターは頭を撫でてくれる。

『ちゃんと食べれて偉いな』

やっぱり何を言っているのかわからない。

そしてエスターは、僕の油断していた頬にチュッとキスをした。

「ひゃああぁっ!?」

『愛情表現のつもりだったのだが……』

過剰に僕が悲鳴をあげてサッとエスターから距離をとったら、エスターがなんか捨てられた犬みたいな顔してた。

もしかして、エスターは所謂キス魔というやつなのだろうか?

それにしても、こんなに温かな美味しいものをお腹いっぱい食べて、僕はなんだか眠くなってしまった。

ただ、場所がよくなかった。

ベッドの端に寄った状態でコロリと眠気に耐えられず身体が傾く。

身体が向かう先はベッドではなく床だ。

『ヒジリ!!』

ガシッ!グイッ!ボスン!

エスターは慌ててベッドに乗り、僕の腕を咄嗟に掴んで引っ張って、二人でベッドにダイブ。

ちょっと腕痛かったなと思ったけど眠気が……眠気が限界で……。

『ヒジリ大丈夫か?ヒジリ、ヒジリ?……私はどうすれば?』

僕はエスターの上に乗っかっていることにも気づかないまま、スヤスヤ眠ってしまう。

エスターの心音が心地よくて、身体を抱き締める腕が暖かくて、なんて寝心地がいいのだろう。

こんなに安心したのはいつぶりかわからない。

父さんの幻影も現れず、僕は深く安眠してしまった。

……起きた時に、エスターの困ったような、でもなんか嬉しそうな顔をみて、僕がまた悲鳴をあげたのは言うまでもない。



その日の午後、部屋の中には大量のぬいぐるみがいたるところにあった。

とくにベッドの辺りがすごくて、幼女のためのベッドみたいにメルヘンワールドになっている。

そこで僕はよくわからない恐怖に震える。

何故こんなにぬいぐるみを用意されたのだろうか。

ついでに、玩具やら絵本やら子供服っぽい服とか子供用っぽい靴とか……。

一瞬でこの部屋が子供部屋になってしまった。



……まさか、僕女の子だと勘違いされた?

そうは一瞬思うが、身体をお風呂代わりに温かいタオルで拭く際はいつも男の人だからそれはないだろう。

なんなら、股に小さくてもついているし……。

ちなみに、日本にいた時はシャワーなら毎日浴びていた。

父さんの外面的には、僕が臭いのは気になったらしい。
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