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66 サリア無双

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 戦闘が終わり、ダラスとダラスの部下達が革命軍を捕縛しているのを横目に、Tホークからの映像を脳内でチェックする。
 屋敷の表玄関が爆発で吹き飛び、数人の革命軍を巻き込みながら砕けた。
 爆煙の中からはサリアがゆっくりと姿を現して次々に魔法を放っていく光景が見える。
 サリアが放っているのは束縛系の魔法のようで、地面から生えた太い蔓が一気に革命軍の兵を拘束して吊るし上げている。
 その光景に正規軍も革命軍も呆気に取られており、突如乱入したサリアを止める者は誰もいない。
 屋敷の中から威勢よく飛び出して来た革命軍の兵も、健闘虚しく蔓に吊り上げられてしまった。
 そしてサリアはぐるりと周囲を見回し、首を一つ縦に振ると踵を返して屋敷内へと戻っていった。

「スリーピングホロウ」

 そんな声が聞こえてすぐ、俺の前にサリアが戻ってきた。

「終わったわよ」
「あ、鮮やかなお手前で……」
「屋敷の連中、鬱陶しいから全員眠らせたわ。これでいい?」
「ありがとうございます。流石ですね」
「ふふん」

 サリアは薄い胸を誇らしげに張り、小さく鼻を鳴らした。

「いや……まさかこんなすぐに片付くとは……一体君達は何者なんだ」
「それはー秘密ってやーつなんだぞっ」
「あ、ああ」

 ヘルメットを脱いで呆気に取られているダラスの鼻を、カレンがちょんと突いた。

「さてと、次は私の番だねー」
「……? 何を?」

 カレンはぴょんぴょんと跳ねるように移動して、懐にから手首ほどの棒を取り出して小さく振った。
 すると棒はカシャカシャカシャ! と小気味良い音を鳴らして二メートル近い長さの錫杖へと変化した。
 錫杖の先端は大きく開いた花弁のような形状になっており、あれがどうやって棒状に収まっていたのかが一番の疑問だった。
 そんな俺の細やかな疑問などどこ吹く風のカレンは、錫杖を自由自在にくるくると回し始めたと思ったらステップを踏み、ワルツのようなダンスを踊り始めた。

「あの、ダレクさん。カレンさんは何を」
「見てろって。アイツだってふざけてるわけじゃない」
「はい」

 ダレクもサリアも真面目な顔をしてカレンを見守っており、正規軍の皆様も目を奪われているようだった。
 シャン、シャン、という錫杖の鳴らす高い音が血に染まった戦場に響き渡る。
 数分のダンスが終わり、カレンが錫杖の石突を地面に叩きつけると一際大きな音が響いた。
 すると屋敷裏の戦場一帯の地面に大きな大きな魔法陣が浮かびあがったではないか。
 しかもその魔法陣は屋敷の裏手どころか、屋敷を飛び越えて表門の戦場すらカバーしてしまうほどの大きさだった。

「リコール=リザベイション!」

 カレンの声が高らかに伸び渡ると同時に、魔法陣の輝きはその明るさを増していった。
 そして――驚くべき光景が起こった。
 苛烈な攻撃で命を散らした筈の正規軍兵達がムクリと起き上がったのだ。
さらには爆散して粉々になった筈の革命軍兵達が光に包まれたと思ったら、その光が消えると同時に傷一つない状態で地面に転がっていたのだった。

「は、はは……うそ……だろ」
「そんな馬鹿な! 死んだ兵が生き返るなど!」

 ダラスとアスターはそれぞれ別の反応を見せたが内容は同じもの、そしてそれは俺も同じだった。

「ふぅ、疲れたー久々にこんな大っきなの使ったー」
「お疲れ」
「相変わらずエゲツない力ね」
「あ、あの、あの、えとその」
「あ? どーした? 魚みたいに口パクパクして」
「なーに? どしたの?」
「カレンの術に驚いてるのよ、それくらい察しなさいよ鈍感」
「あーそっかー、でもカイオワちゃんの中で話したじゃん。出来るよーって、生き返らせられるよーって」

 カレンは人差し指を顎に当て、不思議そうに首を傾げる。
 その様がとても可愛らしく、思わずドキリとしてしまう。

「言いましたけど! こんな、こんなァ!」
「落ち着けよクロード、だから言ったろ? 俺達にとって、カレンにとって人の生死なんてどうでもいいって。こいつは生と死を自在に操るような女なんだよ」
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