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6 スカイガーディアン

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「で? どっちじゃ」
「俺です!」
「私です!」

 エイブラムスをリリースし、俺とクレイモアは揃って魔王クレアの前に出頭していた。
 クレアは見るからにそれはもう怒っており、怒髪天とは行かないがそれはそれは静かに怒っていた。
 開口一番に犯人を問われ、俺とクレイモアは同時に口を開いた。
 そして顔を見合わせて再度、

「私「俺です」」
「お前らふざけとるのか? シバくぞ?」
「えっと! 僭越ながら俺が召喚して!」
「私が攻撃指示を出しました!」
「なるほどのう。幸い死者が出なかったから良かったのものの……とりあえず二人は反省文と報告書じゃな」
「えっ、そんなもんでいいんですか?」
「そんなもんとは何じゃ、不服か? あいわかった。したらばゴーレムと一緒に修復作業も追加じゃ」
「やらかしたァ!」

 ぽろっと漏らした言葉をしっかり拾われ、聞くだけで重労働な罰が追加された。

「お前は余計な事を……」

 隣のクレイモアから発せられる恨めしそうな視線は全力で無視。
 だって仕方ないじゃないか、城にでっかい穴開けておいて反省文と報告書だけだぞ?
 そりゃポロッともするよ。
 「もうよい、下がれ。今日はもう遅い、休んで明日にそなえよ」
 「「は!」」
(やっぱり明日の休みは返上だよなぁ……とほほ)

 遅いと言ってもまだ夕方過ぎなんだけどな、なんて、言葉はしっかり飲み込んで玉座の間を出た。
 ご立派な絨毯の上を歩いていると、

「しかし凄かったな」
「え?」
「エイブラムスだよ。見た目は虫っぽいが中々に強力なモンスターだ。それに何よりかっこいい!」
「ありがとうございます」

 クレイモアはよっぽどエイブラムスを気に入ってくれたらしい。
 確かにかっこいいもんな。

「あ、あとあの、聞いてもいいですか?」
「なんだ?」
「クレイモアさんとクレア様って似てますよね、名前もですけど、顔も」

 魔王城配属になってからずっと気になっていたのだけど、なんとなく聞くタイミングを逃していた。
 髪の色も同じ、身長はクレイモアの方が高いが目鼻立ちなんかがそっくりなのだ。

「む、あぁ、クロードは知らないのか」
「え、何がですか」

 んふふ、とクレイモアが悪戯っぽくわらう。
 八重歯がちょろっと出てて可愛らしい。
 
「私とクレア様は姉妹なのさ。私が妹でクレア様が姉だ」
「そうだったんですか! 道理で似ていると思いました!」
「そんなに似ているか?」
「はい! クレイモアさんの方が大きいからお姉さんぽいですけど」
「んん! それをお姉様の前で言ってみろ、ひき肉にされるぞ」
「……気をつけます……」
「よろしい。特に【平ら】とか【凹凸がない】とか【板】とかのワードは厳禁だ」
「あぁ、なんとなく分かります」
「魂を焼かれてもしらないぞ」
「そんなに!?」

 代償の高さに驚いてクレイモアを見るが、どうやら本当のようだ。
 目がマジだもん。

「私はこっちだ、クロードもちゃんと休めよ」
「わかりました、おやすみなさい」

 クレイモアと別れて自室に戻ると水を飲んで一息つき、窓の外に見える稜線に沈む太陽をぼけっと見る。
 別段思い入れなんてものはないが、テイル王国が現在どうなっているかが妙に気になる。
 既に召喚したモンスター達は消失するなり逃走するなりしているだろうな。
 召喚して三ヶ月いないの子達は消失し、それ以上の子達はもうこちらに定着してしまっている。
 もちろん召喚したモンスター同士が交配して生まれた子は三ヶ月以内でも消失はしない。

「見に行ってみるか……」

 王国の人間達はどうでもいい。
 死のうが生きようが俺にとっちゃ本当にどうでもいい。
 気がかりなのは俺の、人間の勝手で呼び出した子達がどうなっているかだけだ。

「サモン:スカイガーディアン」

 窓を開け放ち、空中にソレを召喚。
 非武装の無人航空機がその場で滞空している。
 本来であればありえない挙動なのだけどここはファンタジー世界だし、受け入れよう。

「テイル王国の上空まで飛んでくれ」
『シュルルルル』
「まって絶対そんな鳴き声じゃない」

 しかもヘッド部分を頷くように上下に揺らしているし、お前無人航空機だよな……?

『フシュルルル!』

 スカイガーディアンが謎の鳴き声を発したと思えば航空高度まで一気に飛び上がり、テイル王国の方へすっ飛んで行った。
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