聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月

文字の大きさ
上 下
21 / 41

21 女子会

しおりを挟む
 飲み過ぎた方々をリカバリーして復活させると、彼らはまた飲める! と言って嬉しそうに夜の街に消えていった。
 お酒ってそんなに楽しいものなんだろうか?
 ちょっと興味あるけど今はまだ止めておこう。
 結構お金かかるって聞くし、飲み過ぎると手が震えて集中力も散漫になるっていうしね。
 
「良かったの? あの人たち」
「え?」

 お目当てのスィーツ屋さんに移動した私とリーシャはとりあえずティーブレイクをしている。
 私はアップルシナモンティー、リーシャはトリプルベリー&ローズティーを啜っている。

「だってせっかく治ったのにまた飲みに行くって言ってたよ?」
「いいんじゃないですか? もしかしたら今日しかはしゃげないのかもしれませんし、誕生日なのかもしれません。男の人ってハメを外したい時っていうのがあるんでしょ? それを快く見送るのが女ってものだと教わりましたし」
「フィリアいい子すぎて眩しい」
「何がですか?」
「何て言うのかな。良妻賢母?」
「妻じゃないし母でもないかな!?」
「私なら回復させたんだから大人しく家に帰れー! って言っちゃうかも」
「あはは、まぁそれは人それぞれだと思いますよ」

 そんな事を話していると、頼んでおいたスィーツがテーブルに運ばれてきた。
 三段のタワーのような食器には宝石のような小さな可愛らしいスィーツ達がちんまりとおすまししている。
 やばい、これだけでテンション上がる!
 リーシャも目をキラキラさせて生唾を飲み込んでいるし。
 さっきたらふく詰めこんだお腹も、この妖精のようなスィーツに反応している。
 やはりデザートは別腹っすね。

「「いただきまーす」」

 んー、どれからいこう、どういこう。
 どう食してやろう。
 きっと私の今の目は獲物を狙う猛禽類さながらの獰猛さだろう。
 ねずみなんてひと睨みでイチコロだ。
 このスィーツタワー、それなりにお値段も張るのだけど今日はダンジョンクリア記念ということで。
 奮発してしまった。
 明日から頑張る。
 
「ほぉおおー……」

 リーシャがスィーツの一つを口に放り込んで至福の表情をしている。
 そんなにか! そんなにうっとりしちゃうほどなのね!
 心臓を高鳴らせながら「食べて?」と可愛らしくはにかむスィーツを摘む。
 親指の爪ほどしかない大きさのショコラの上には金粉が乗っている。
 この親指の爪ほどしかない大きさでリンゴが二つは買える、味わって味わって大切に味わい尽くさねばならない。
 一種の使命感のようなものに駆られながら口の中に放り込む。

「あっっっふぅ……!」

 これは大変だ、これは至高だ。
 口から舌から歯茎から、口の中のあらゆる器官が溶けていくような錯覚を覚える。
 そこからはもう私もリーシャもただ無言--いや、美味しい美味しいという賞賛の声だけを発しながらただひたすらに味わい続けた。
 私は決めた。
 いっぱいダンジョンに潜っていっぱい依頼をクリアして、いぱいお金を稼いで週の終わりには必ずここに来よう。
 そして翌週の英気をチャージしてまた頑張るのだ。
 また一つ目標が増えた、これは頑張らねばいかんなぁ!
 
しおりを挟む
感想 46

あなたにおすすめの小説

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」  リーリエは喜んだ。 「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」  もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。

修道女エンドの悪役令嬢が実は聖女だったわけですが今更助けてなんて言わないですよね

星里有乃
恋愛
『お久しぶりですわ、バッカス王太子。ルイーゼの名は捨てて今は洗礼名のセシリアで暮らしております。そちらには聖女ミカエラさんがいるのだから、私がいなくても安心ね。ご機嫌よう……』 悪役令嬢ルイーゼは聖女ミカエラへの嫌がらせという濡れ衣を着せられて、辺境の修道院へ追放されてしまう。2年後、魔族の襲撃により王都はピンチに陥り、真の聖女はミカエラではなくルイーゼだったことが判明する。 地母神との誓いにより祖国の土地だけは踏めないルイーゼに、今更助けを求めることは不可能。さらに、ルイーゼには別の国の王子から求婚話が来ていて……? * この作品は、アルファポリスさんと小説家になろうさんに投稿しています。 * 2025年2月1日、本編完結しました。予定より少し文字数多めです。番外編や後日談など、また改めて投稿出来たらと思います。ご覧いただきありがとうございました!

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~

紅月シン
ファンタジー
 聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。  いや嘘だ。  本当は不満でいっぱいだった。  食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。  だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。  しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。  そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。  二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。  だが彼女は知らなかった。  三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。  知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。 ※完結しました。 ※小説家になろう様にも投稿しています

【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。

138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」  お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。  賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。  誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。  そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。  諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。

団長サマの幼馴染が聖女の座をよこせというので譲ってあげました

毒島醜女
ファンタジー
※某ちゃんねる風創作 『魔力掲示板』 特定の魔法陣を描けば老若男女、貧富の差関係なくアクセスできる掲示板。ビジネスの情報交換、政治の議論、それだけでなく世間話のようなフランクなものまで存在する。 平民レベルの微力な魔力でも打ち込めるものから、貴族クラスの魔力を有するものしか開けないものから多種多様である。勿論そういった身分に関わらずに交流できる掲示板もある。 今日もまた、掲示板は悲喜こもごもに賑わっていた――

スキルが農業と豊穣だったので追放されました~辺境伯令嬢はおひとり様を満喫しています~

白雪の雫
ファンタジー
「アールマティ、当主の名において穀潰しのお前を追放する!」 マッスル王国のストロング辺境伯家は【軍神】【武神】【戦神】【剣聖】【剣豪】といった戦闘に関するスキルを神より授かるからなのか、代々優れた軍人・武人を輩出してきた家柄だ。 そんな家に産まれたからなのか、ストロング家の者は【力こそ正義】と言わんばかりに見事なまでに脳筋思考の持ち主だった。 だが、この世には例外というものがある。 ストロング家の次女であるアールマティだ。 実はアールマティ、日本人として生きていた前世の記憶を持っているのだが、その事を話せば病院に送られてしまうという恐怖があるからなのか誰にも打ち明けていない。 そんなアールマティが授かったスキルは【農業】と【豊穣】 戦いに役に立たないスキルという事で、アールマティは父からストロング家追放を宣告されたのだ。 「仰せのままに」 父の言葉に頭を下げた後、屋敷を出て行こうとしているアールマティを母と兄弟姉妹、そして家令と使用人達までもが嘲笑いながら罵っている。 「食糧と食料って人間の生命活動に置いて一番大事なことなのに・・・」 脳筋に何を言っても無駄だと子供の頃から悟っていたアールマティは他国へと亡命する。 アールマティが森の奥でおひとり様を満喫している頃 ストロング領は大飢饉となっていた。 農業系のゲームをやっていた時に思い付いた話です。 主人公のスキルはゲームがベースになっているので、作物が実るのに時間を要しないし、追放された後は現代的な暮らしをしているという実にご都合主義です。 短い話という理由で色々深く考えた話ではないからツッコミどころ満載です。

処理中です...