金ぴか！スピリット

春

落とし穴

　 ダイチがどぶに落ちました。
　どぶに落ちた理由がほんと子供じみていて、みんな大爆笑。
　なんでもナガレや、数人の人と鬼ごっこに夢中になっていたら、鬼として追いかけられていたダイチは、全力疾走でどぶに突っ込んでいったそうです。
　どろんこのまま、私たちのまえにあらわれたダイチ。
「ったく、おれの人生はどうしてこうも落とし穴だらけなんだ」
「落とし穴？」　
「な、なんでもねーよ」
　ダイチは赤面してむこうを向いてしまいました。
　ことの顛末を見ていた安孫子先輩は笑いながら、こう言いました。
「落とし穴にはまっちまったのは、おまえだけじゃねーよ。奨学金て名前の落とし穴にみんなはまっちまってるじゃねーか」　

　ナガレが珍しく毒をはきました。
「あの、おっさんよく言うよ。自分だって宝船がどうとかインチキ言ってるくせに。その宝船はおっさんにとって都合のいい夢違えなんだろう」
　夢違え？
　ナガレは、なぜか安孫子先輩をよく思っていないようです。
　変なことが起こらなければよいのですが。

　夕方にトモカとコンビニに行きました。
　せっかくなので、トモカのお部屋で一緒に食べることにしました。
「晩御飯にコンビニ弁当だなんんて……」
　トモカはいまどき珍しく保守的なことをいいながら、ていねいにいただきますをしました。
　トモカは笑って、こう言いました。
「わたし、すごく稼げるっていうバイト紹介してもらったんだ」