上 下
12 / 73
赤道直下のドタバタ

革命家と観察者

しおりを挟む
 南国の居住区である陽は、ドームでおおわれてはいるが、中に熱がこもらないようにさまざまな工夫がされている。

 ミラグロスは、陽のサイバーパトロール隊の隊員で、もうすぐ到着するヤミとヒカリを出迎えることになっている。
 ミラグロスは組織のなかではまだ若く、さほど出世こそしてはいないがリーダー的気質の片鱗をのぞかせる、そんな人物だ。
 彼女のまわりにはほどよい緊張感が常に張りめぐっている。
 モデスタはミラグロスの仕事上のパートナーである。
 モデスタはミラグロスとランチをともにした。そして大胆なことを聞いた。
 おっとりしているようで、その物言いはあんがいストレート、それがモデスタなのだ。
「もしですよ。ミラグロスさんがこの居住区のリーダーになるようなことがあったらいかがしますか」
「いかがも何も、わたしは二七だし、一介のパトロール人員にすぎぬ。そのような大それたこと等……」
 ミラグロスのなかには革命家が住まう。優れた観察者であるモデスタはそれを見抜いていた。
「わたしたち移住者は地球に飽き飽きしてこんな星まで来ました。そして新たな共同体を作り出そうとしています」 
 モデスタは勿体ぶった感じでミラグロスの本音に迫ろうとした。
「そう。愚かな人類は民主主義社会をコントロールさえできない。地球はいやな問題の吹きだまりになった。うんざりした我々は機械に政治を任せることにしたが……」
「陽も蒼も虹も機械政治体制です。しかし虹はひどいですよね。政治は完全に機械まかせだとか」 
「ああ、虹は機械が考えた食糧計画、エネルギー計画を完全に信じて運営してるのだろう。虫を食うのはまだいいとして効率重視の味のない食事は勘弁だな。ならば芋虫の活きづくりのほうがましさ」
「やはりそのような体制は否定なさいますか」
「うまくやればいいのさ。機械なんざ道具。機械がなんと言おうが最後に決めるのは人間だ。陽はそこんとこうまくやっているさ。虹と違い陽は人間の政治家もいる」
 モデスタは内心で思う。この人が政治的なリーダーならば虹も含めこの惑星ぜんたいで地球が果たしえなかった理想を実現できるのでは。
 そしてランチを済ませたふたりはヤミとヒカリを出迎えるために港に向かった。
「ヤミとヒカリか。せっかくだから味気ない虹ではお目にかかれないものをたっぷり見せてやりたいものだ」  
 ミラグロスはわくわくしていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

彼女が ガイノイドスーツ に着替えたら

ジャン・幸田
SF
 少女の玲和はコンパニオンのアルバイトを依頼されたが、それは機ぐるみの内臓となって最新型汎用ガイノイド ”レイナ”になることであった!  女性型アンドロイドに変身することによって、 彼女は人間を超えた存在になった快楽を体験することになった! (妄想で考えてみた短編です)

ドレスを着たら…

奈落
SF
TSFの短い話です

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

夫の幼馴染が毎晩のように遊びにくる

ヘロディア
恋愛
数年前、主人公は結婚した。夫とは大学時代から知り合いで、五年ほど付き合った後に結婚を決めた。 正直結構ラブラブな方だと思っている。喧嘩の一つや二つはあるけれど、仲直りも早いし、お互いの嫌なところも受け入れられるくらいには愛しているつもりだ。 そう、あの女が私の前に立ちはだかるまでは…

ロリっ子がおじさんに種付けされる話

オニオン太郎
大衆娯楽
なろうにも投稿した奴です

バイトなのにガイノイドとして稼働しなくてはならなくなりました!

ジャン・幸田
SF
 バイトの面接に行ったその日からシフト?  失業して路頭に迷っていた少女はラッキーと思ったのも束の間、その日から人を捨てないといけなくなった?  機械服と呼ばれる衣装を着せられた少女のモノ扱いされる日々が始まった!

政略結婚で結ばれた夫がメイドばかり優先するので、全部捨てさせてもらいます。

hana
恋愛
政略結婚で結ばれた夫は、いつも私ではなくメイドの彼女を優先する。 明らかに関係を持っているのに「彼女とは何もない」と言い張る夫。 メイドの方は私に「彼と別れて」と言いにくる始末。 もうこんな日々にはうんざりです、全部捨てさせてもらいます。

処理中です...