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コンビニ転生はあるのか?
ノートのなぞ
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これまでの話のなかで分かったのは
・異世界転生した人は現世では死んでしまうため戻れない
・異世界転生はリンカーネーション(魂の進化)型の転生である
しかしどんな要素が作用して死んだ人の魂を異世界に転生させるのかはなぞのままである。
テルミの目になにかが止まった。
それはイナゴが二人にくれたノートであった。
表紙には彼が自分で描いたと思われるアニメ調の絵が描いてある。
「ね、そのノートなに?もしかしてふたりのどちらかが?」
「まさかまさか。クラスの男の子が託してくれたんですけど」
とアメ。
四冊ある謎のノートのうち一冊にクリップでなにかがとめてあった。
それは手紙だった。
「なになに、ラブレター?」
テルミがからかったが、それはラブレターではなかった。
イナゴのノートは、いわば小説の創作ノートであった。なんと彼は異世界ものの小説の読むばかりでなく、オリジナルを創作しようともしていたのだ。
ノートには異世界ものの小説を書くためのリサーチや、文献研究にはじまり、オリジナル小説用の設定やプロットまで事細かに書かれていた。
手紙によると、彼はオリジナルの異世界ものの小説をものにするべく、研究しアイデアを練っていたが、なかなか理想にちかづけずに限界を感じていたらしい。
それで進学に集中しようとしていたところ、アメとハレの異世界転生研究の話を知り、自身が完全に小説を断念するためにも、恥を忍びこのノートを託したということだった。
「イナゴくん。わたしはまた君が夢を追いかけたくなる未来がみえるよ……。でも今は君の黒歴史を活用させてもらうよ」
やけに感慨深げなアメであった。
「それにしても、この未完の作品、やけにフクザツな設定ね」
イナゴが青春の時間を費やして作り上げた世界観には「無限転生覇王」という、気合いの入った名がつけられていた。
アメとハレはそのめんどくさい世界観を目の当たりにして、顔をしかめた。
無限転生覇王の基本ストーリーは、高校生の主人公が複数の異世界を何度も転生して、血みどろの戦いを繰り返すものだ。
テルミもその壮絶なストーリー展開に驚いた。
「まさか、異世界がいくつもあるなんて、それは想定外のアイデアだわ。何度も生まれ変わり苦行のような争いを繰り返すだなんて無常以外のなにものでもないわ」
イナゴがなぞのノートを通じて提示した世界観は、異世界先生はリンカーネーション的であるという研究所の見解と相反するものだった。
また彼の異世界もの小説の世界観とその構造に関するリサーチは、大いに示唆に富むものだった。
ただひとつ困ったのは、所々に描かれたお世辞にも上手とは言えないイラストの数々だった。
それを目にするたびに笑いが込み上げてしまうからだ。
・異世界転生した人は現世では死んでしまうため戻れない
・異世界転生はリンカーネーション(魂の進化)型の転生である
しかしどんな要素が作用して死んだ人の魂を異世界に転生させるのかはなぞのままである。
テルミの目になにかが止まった。
それはイナゴが二人にくれたノートであった。
表紙には彼が自分で描いたと思われるアニメ調の絵が描いてある。
「ね、そのノートなに?もしかしてふたりのどちらかが?」
「まさかまさか。クラスの男の子が託してくれたんですけど」
とアメ。
四冊ある謎のノートのうち一冊にクリップでなにかがとめてあった。
それは手紙だった。
「なになに、ラブレター?」
テルミがからかったが、それはラブレターではなかった。
イナゴのノートは、いわば小説の創作ノートであった。なんと彼は異世界ものの小説の読むばかりでなく、オリジナルを創作しようともしていたのだ。
ノートには異世界ものの小説を書くためのリサーチや、文献研究にはじまり、オリジナル小説用の設定やプロットまで事細かに書かれていた。
手紙によると、彼はオリジナルの異世界ものの小説をものにするべく、研究しアイデアを練っていたが、なかなか理想にちかづけずに限界を感じていたらしい。
それで進学に集中しようとしていたところ、アメとハレの異世界転生研究の話を知り、自身が完全に小説を断念するためにも、恥を忍びこのノートを託したということだった。
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やけに感慨深げなアメであった。
「それにしても、この未完の作品、やけにフクザツな設定ね」
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