上 下
6 / 14
コンビニ転生はあるのか?

ノートのなぞ

しおりを挟む
 これまでの話のなかで分かったのは

 ・異世界転生した人は現世では死んでしまうため戻れない
 
 ・異世界転生はリンカーネーション(魂の進化)型の転生である

 しかしどんな要素が作用して死んだ人の魂を異世界に転生させるのかはなぞのままである。

 テルミの目になにかが止まった。

 それはイナゴが二人にくれたノートであった。

 表紙には彼が自分で描いたと思われるアニメ調の絵が描いてある。

「ね、そのノートなに?もしかしてふたりのどちらかが?」 

「まさかまさか。クラスの男の子が託してくれたんですけど」
 とアメ。

 四冊ある謎のノートのうち一冊にクリップでなにかがとめてあった。

 それは手紙だった。

「なになに、ラブレター?」
 テルミがからかったが、それはラブレターではなかった。

 イナゴのノートは、いわば小説の創作ノートであった。なんと彼は異世界ものの小説の読むばかりでなく、オリジナルを創作しようともしていたのだ。
 
 ノートには異世界ものの小説を書くためのリサーチや、文献研究にはじまり、オリジナル小説用の設定やプロットまで事細かに書かれていた。

 手紙によると、彼はオリジナルの異世界ものの小説をものにするべく、研究しアイデアを練っていたが、なかなか理想にちかづけずに限界を感じていたらしい。
 それで進学に集中しようとしていたところ、アメとハレの異世界転生研究の話を知り、自身が完全に小説を断念するためにも、恥を忍びこのノートを託したということだった。

「イナゴくん。わたしはまた君が夢を追いかけたくなる未来がみえるよ……。でも今は君の黒歴史を活用させてもらうよ」
 やけに感慨深げなアメであった。

「それにしても、この未完の作品、やけにフクザツな設定ね」
 イナゴが青春の時間を費やして作り上げた世界観には「無限転生覇王」という、気合いの入った名がつけられていた。
 アメとハレはそのめんどくさい世界観を目の当たりにして、顔をしかめた。
 
 無限転生覇王の基本ストーリーは、高校生の主人公が複数の異世界を何度も転生して、血みどろの戦いを繰り返すものだ。
 テルミもその壮絶なストーリー展開に驚いた。
「まさか、異世界がいくつもあるなんて、それは想定外のアイデアだわ。何度も生まれ変わり苦行のような争いを繰り返すだなんて無常以外のなにものでもないわ」
 
 イナゴがなぞのノートを通じて提示した世界観は、異世界先生はリンカーネーション的であるという研究所の見解と相反するものだった。
 また彼の異世界もの小説の世界観とその構造に関するリサーチは、大いに示唆に富むものだった。
 ただひとつ困ったのは、所々に描かれたお世辞にも上手とは言えないイラストの数々だった。
 それを目にするたびに笑いが込み上げてしまうからだ。  
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

使えないと言われ続けた悪役令嬢のその後

有木珠乃
恋愛
アベリア・ハイドフェルド公爵令嬢は「使えない」悪役令嬢である。 乙女ゲームの悪役令嬢に転生したのに、最低限の義務である、王子の婚約者にすらなれなったほどの。 だから簡単に、ヒロインは王子の婚約者の座を得る。 それを見た父、ハイドフェルド公爵は怒り心頭でアベリアを修道院へ行くように命じる。 王子の婚約者にもなれず、断罪やざまぁもされていないのに、修道院!? けれど、そこには……。 ※この作品は小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

処理中です...