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第五章 最後の決戦
第271話 皇帝の告白①
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「では、話そう。
まずは、俺がなぜこのユニークスキル…【パンドラ】を持っているか、から…。」
----------------
この世は狂ってる。
自分の欲望を満たすために、弱いものを平気で踏み躙る。
弱いものは、生きるために必要な食事も、睡眠すらもまともに取れない。
貧民街で生まれ育った俺の両親は、貧民の中でも碌でもない奴らだった。
世の中で弱い立場である両親は、さらに弱い立場である俺を虐げ続けた。
幼い頃から辛い労働を課し、与えるのは少量の残飯。
うまくいかない鬱憤を晴らすための虐待。
貧民街では似たような家庭は多いが、とりわけ俺の境遇はひどかった。
それでも、労働力である俺を殺そうとはしないだろう。
そう思って耐え忍んでいた。
生きるために。
家を出てもすぐに野垂れ死ぬだけだから。
唯一の希望は、15歳になること。
モンスターを倒しスキルが手に入れば、人生が変わる。
自立して人間らしい生活を送れる。
しかし、その希望は見事に砕かれた。
1000人に1人のスキル覚醒者にはなれなかったのだ。
栄養失調により、まともに動けない身体。
最弱モンスターを倒すのにも、命懸けだった。
まともな教育など当然受けておらず、就ける職もない。
「もう、生きていてもしょうがない…。」
失意の中、命を絶とうとした、その時だった。
「やめなされ…。」
突然現れ、声をかけてきたのは1人の老人だった。
老人が俺に事情を聞いてきたから、俺は今までのクソみたいな人生を話した。
話を聞いた老人は何かを考え込んでいた。
「やはり変化が…必要なのじゃろうか…。」
その老人はそうボソッとつぶやいて、俺をじっと見つめてきた。
「な、なんだよ?」
「力が…欲しいか?」
「…欲しい!!」
「…ついてこい…。」
それからその老人は俺にいろんなことを教えてくれた。
食事もまともに食べさせてくれた。
生まれて初めて安心した生活が送れたよ。
俺は捨てられないように必死だった。
老人はよく俺に質問をしてきた。
「お前にとって大事なものはなんじゃ?」
「この世界をどうしたい?」
それまで生きることにただただ必死だった俺は、質問に答えることができなかった。
だけど、安全な暮らしをするうちに、少しずつ考えることができるようになっていった。
この世界を変えたい。
この狂った世界を。
そう思うようになってきたのだ。
今もこの老人に見捨てられれば、また命の危険と隣り合わせの生活に逆戻り。
安全な生活をしていても、心の安寧は得られていない。
できるなら、心から安全に暮らせる世界を作りたい。
そんな心境の変化を聞いた老人がある日、俺に告げた。
「お前に力をやろう。
この世で一番強い力じゃ。
この世界で辛い思いをしてきたお前だからこそ、救える者たちがいるのだろう。
皆が心から安心して暮らせる世界を…作ってくれ。」
老人はその力について教えてくれた。
希望と厄災の詰まったユニークスキル、【パンドラ】。
遥か昔、モンスターを生み出すという厄災と思えるそのスキルは、人類に恵みをもたらした。
その恵みは人類を飢餓から救った。
しかし一方で、資源を取り合うために争いも絶えなかった。
さらに貧富の差が大きくなり、裕福な暮らしをするものもいれば、皇帝のように死と隣り合わせの人生を送るものも少なくなかった。
【パンドラ】は他のスキルとは違う。
使い手がランダムに選ばれるのではなく、今の使い手が受け継ぐ相手を見極め、直接渡すのだ。
ただ、その老人はこの世界に疑問を持っていた。
こんな争いばかりの世界が本当に幸せなのかと。
【パンドラ】を次の使い手に渡すべきなのか、と。
そこに俺が現れた。
この世界の理不尽さを誰よりも味わった人間に賭けてみようと思ったと、その老人は言った。
俺は、この世界を変えることをその老人に約束した。
力が欲しかったし、本当に世界を変えたかったから。
その老人は俺に【パンドラ】を渡すと、満足そうに息を引き取った。
だが、あいつは知らなかった。
【パンドラ】の本当の『厄災』を。
まずは、俺がなぜこのユニークスキル…【パンドラ】を持っているか、から…。」
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この世は狂ってる。
自分の欲望を満たすために、弱いものを平気で踏み躙る。
弱いものは、生きるために必要な食事も、睡眠すらもまともに取れない。
貧民街で生まれ育った俺の両親は、貧民の中でも碌でもない奴らだった。
世の中で弱い立場である両親は、さらに弱い立場である俺を虐げ続けた。
幼い頃から辛い労働を課し、与えるのは少量の残飯。
うまくいかない鬱憤を晴らすための虐待。
貧民街では似たような家庭は多いが、とりわけ俺の境遇はひどかった。
それでも、労働力である俺を殺そうとはしないだろう。
そう思って耐え忍んでいた。
生きるために。
家を出てもすぐに野垂れ死ぬだけだから。
唯一の希望は、15歳になること。
モンスターを倒しスキルが手に入れば、人生が変わる。
自立して人間らしい生活を送れる。
しかし、その希望は見事に砕かれた。
1000人に1人のスキル覚醒者にはなれなかったのだ。
栄養失調により、まともに動けない身体。
最弱モンスターを倒すのにも、命懸けだった。
まともな教育など当然受けておらず、就ける職もない。
「もう、生きていてもしょうがない…。」
失意の中、命を絶とうとした、その時だった。
「やめなされ…。」
突然現れ、声をかけてきたのは1人の老人だった。
老人が俺に事情を聞いてきたから、俺は今までのクソみたいな人生を話した。
話を聞いた老人は何かを考え込んでいた。
「やはり変化が…必要なのじゃろうか…。」
その老人はそうボソッとつぶやいて、俺をじっと見つめてきた。
「な、なんだよ?」
「力が…欲しいか?」
「…欲しい!!」
「…ついてこい…。」
それからその老人は俺にいろんなことを教えてくれた。
食事もまともに食べさせてくれた。
生まれて初めて安心した生活が送れたよ。
俺は捨てられないように必死だった。
老人はよく俺に質問をしてきた。
「お前にとって大事なものはなんじゃ?」
「この世界をどうしたい?」
それまで生きることにただただ必死だった俺は、質問に答えることができなかった。
だけど、安全な暮らしをするうちに、少しずつ考えることができるようになっていった。
この世界を変えたい。
この狂った世界を。
そう思うようになってきたのだ。
今もこの老人に見捨てられれば、また命の危険と隣り合わせの生活に逆戻り。
安全な生活をしていても、心の安寧は得られていない。
できるなら、心から安全に暮らせる世界を作りたい。
そんな心境の変化を聞いた老人がある日、俺に告げた。
「お前に力をやろう。
この世で一番強い力じゃ。
この世界で辛い思いをしてきたお前だからこそ、救える者たちがいるのだろう。
皆が心から安心して暮らせる世界を…作ってくれ。」
老人はその力について教えてくれた。
希望と厄災の詰まったユニークスキル、【パンドラ】。
遥か昔、モンスターを生み出すという厄災と思えるそのスキルは、人類に恵みをもたらした。
その恵みは人類を飢餓から救った。
しかし一方で、資源を取り合うために争いも絶えなかった。
さらに貧富の差が大きくなり、裕福な暮らしをするものもいれば、皇帝のように死と隣り合わせの人生を送るものも少なくなかった。
【パンドラ】は他のスキルとは違う。
使い手がランダムに選ばれるのではなく、今の使い手が受け継ぐ相手を見極め、直接渡すのだ。
ただ、その老人はこの世界に疑問を持っていた。
こんな争いばかりの世界が本当に幸せなのかと。
【パンドラ】を次の使い手に渡すべきなのか、と。
そこに俺が現れた。
この世界の理不尽さを誰よりも味わった人間に賭けてみようと思ったと、その老人は言った。
俺は、この世界を変えることをその老人に約束した。
力が欲しかったし、本当に世界を変えたかったから。
その老人は俺に【パンドラ】を渡すと、満足そうに息を引き取った。
だが、あいつは知らなかった。
【パンドラ】の本当の『厄災』を。
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