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第五章 最後の決戦

第265話 大勢は…決した?

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ユニークスキル【槍神】を託して、デルベルトは逝った。

初めからそのつもりだったのだろう。


ロックはファルクの元に移動する。

「グァ!?」

1箇所にまとまるのは危険なのに、なぜきた!?とばかりにロックを睨むファルク。

魔王からの攻撃魔法が2人を狙う。


「【スキルギフト】。」

魔王の魔法に耐えながら、【槍神】をファルクへ渡すロック。

そして、すぐにその場を離れる。


スキルを受け取り、ファルクは【豪龍化】を解いた。


「逝ったのか…。」

槍を握りしめ、一瞬下を向いたファルク。

だがすぐに前を向く。


「ありがたく、使わせてもらうぜ…!」


ユニークスキル【槍神】による[武技]を放つファルク。

それは、魔王の魔法の一部をかき消した。

相手の魔法と近い威力を誇り、さらにユニークスキルでの[武技]だけが成しえる現象だ。

【剣神】を持つデイジーも試してみたが、攻撃力が足りなかったようで、同じことはできなかった。


【神速】を持つハンナ・デイジーとイライサの戦いは、なかなか決着がつかなかった。

お互い【神速】で攻撃を避けるため、決定的な一撃を当てることができないのだ。

ハンナは2人分の移動でMP消費が大きいが、【神の恩寵】でなんとか使い続けられている。

イライサはデイジーの剣を一撃でも貰えば致命傷なので、必死で避け続けている。

当然、魔王への援護はできなくなった。


魔王vsロック・ファルク。

そして、ティナとミラが後方から2人を支援する。

ティナの【光輝の壁】や回復魔法、ミラの[シールド]が途切れれば、ロックとファルクはいつ死んでもおかしくない。

戦況は好転してきているが、それでもギリギリの戦いであった。


「…ロック。」

戦いの中、ハンナの【神速】でデイジーがロックの側にやってきた。

ハンナはすぐにイライサの対応に戻った。

「デイジーさん!
 ここは危険ですよ!?
 どうしました!?」

「…【剣神】、使って。」

「え!?」

「…ロックなら、これで魔王に対抗できる。」

「でも、このスキルは…。」

【剣神】はデイジーの師匠である前サンジャータ国王から受け継いだものなのだ。

「…構わない。
 …勝って。」

「…ありがとうございます…。」

ロックは【剣神】を受け取り、持っていた【剣聖】を渡した。

デイジーはニコッと笑うと、ハンナの元へと戻っていった。

「これが…【剣神】…。
 これなら…!」

自身に襲いかかる魔王の業火にむけ、[武技]を放つロック。

その[武技]は炎を切り裂いた。

全てを相殺することはできなかったが、【光輝の壁】の効果もあり、ダメージをほとんど無効化することができた。

ファルクは少なからずダメージを受けているが、【再生】の効果もあるので、十分に戦える。


「ぐっ…!
 人間風情が…!!」

魔王が完全に押され始めた。

ティナとミラの援護がなければ魔王に勝機はあるが、ロックとファルクを無視して彼女たちを倒すことは不可能。

他の魔族やモンスターの手助けも望めない。


「だが…、お前たちに我は倒せん!
 我が死ねば、お前たちの大事な恋人や仲間も死ぬぞ!?」


魔王はロックたちがイーザやリッチェルを切り捨てられないことを知っていた。

ユニークスキルは相手を倒せば手に入るが、魔王を倒してスキルを奪った時、魔族たちがどうなるかはわからない。

だが、それに賭けるしか道はない。


「それで自分の安全を確保したつもりか?
 甘えんだよ。」

ファルクの[武技]が魔王の肩をえぐった。


「ぐあっ…!!」


その隙をつき、ロックの剣も魔王の脇腹を切り裂いた。


「ぐ…お…っ……。」


ステータスUP系のスキルには、全て時間制限がある。

魔王の使った【魔神化】も例外ではない。

MPを半分消費した上に、20分間しか効果を発揮しない。


「え、MPが回復しない…!?」


魔王側にいた【神の恩寵】の使い手は2人。

1人はロックによりそのスキルを奪われた。

冒険者側は戦いながら、まだ【神の恩寵】の使い手がいることを感じていた。

戦いながらその使い手を見定め、アッサールが仕留めたのがつい先ほどであった。


そのタイミングで魔王の【魔神化】はタイムリミットを迎えた。

攻撃魔法でMPを消費していた魔王は、もう【魔神化】を発動することができない。

こうなれば、もう魔王になす術はない。


「魔王様っ!!」


魔王の危機に、イライサたちS級魔族たちが無理をして助けに入る。


だがそれは悪手であった。

ただでさえS級冒険者の相手で手一杯。

その状態でロックの目の前に姿を晒してしまえば、【スキルスナッチ】を防ぐことはできないからだ。

イライサの【神速】を始め、数人の強力なスキルがロックにより奪われる。

魔族たちもその危険性はわかっていた。

それでも魔王を助けるために動いたのだ。

しかし、リスクを冒した特攻も、S級冒険者たちやロックの分裂体により、何の成果もあげられなかった。


ロックたちはダメおしにクローディアに頼み、【吸魔】で魔王のMPを吸い尽くした。


「ぐっ…。
 だが、我を殺せばお前らの大事な仲間は…」

「黙れ。」

ファルクが魔王の喉元に槍を突きつける。

しかし、ロックたちは魔王を倒していいかどうか、最後の決断ができなかった。

スキルを奪っても殺してしまえば、魔族も一緒に死ぬ可能性は少なくない。


それでも、やるしかない。

ロックが剣を持つ手に力を込めた。


その時。



「やめるんだっ!」
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