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第五章 最後の決戦

第264話 託されたもの

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「…いいだろう。
 真の恐怖を教えてやる…。」


ユニークスキルによる攻撃魔法を完全に防がれた魔王。

それでも、余裕の態度は崩れない。


相対するのはロック、ティナ、ミラ。

ファルクは未だデルベルトと戦闘中。

他のS級冒険者は魔王を避け、S級魔族やモンスターの相手をしている。


「ティナ、ミラ。
 気をつけて。」

魔王の言葉がハッタリではないと感じ取っているロック。

ティナやミラも最大限の警戒を緩めない。


「行くぞ。

 【魔神化】。」


その瞬間。

魔王から感じる魔力が激増した。


「これは…!
 【光輝の壁】!!」

ティナが咄嗟にダメージを半減する【光輝の壁】を発動する。


「くらえ。」


魔王がその手に魔力を込めると同時に、ロックたちに黒い雷が降り注ぐ。


「きゃぁぁぁ!!」

【大魔術士】のバフで大きくステータスが上昇し、【守護神の加護】と【光輝の壁】の効果でダメージが激減するはずのティナとミラが、瀕死のダメージを受ける。

膨大なHPを有するロックですら、1/4のHPを削られた。

【大聖者】の回復魔法ですぐに回復させるティナ。

「な、なんて威力なの…?」


「ほう。
 この状態の魔法にも耐えるか。
 だが、いつまで耐えられるかな?」

あれほどの大魔法を放ったばかりだというのに、もう次の魔法を放ってくる魔王。


「ぐっ!」

少しでもダメージを減らそうと、モンスターに割いていた分裂体を呼び戻しガードするロック。

しかし、スキルの効果を受けない分裂体では魔王の魔法に耐え切れない。

魔法をくらった分裂体は全て消失した。


再び分裂体を生み出すロック。

モンスターはかなり減ってきているため、モンスターに対応する分裂体を減らしても冒険者側は押されていないようだ。


「ふん。
 何体いようと無駄だ。」

魔王の言葉通り、生み出してもすぐに攻撃魔法で消される。

それを承知で接近するロック。


「ロック!」

ミラに触れていないと【守護神の加護】の恩恵は受けられない。

【光輝の壁】はあっても、ダメージは甚大。

まともに受けては持って2発。

そのダメージを分裂体で緩和しながら接近する。


「【スキルスナッチ】!」

狙いはもちろん魔王のスキルだ。

ユニークスキル以外のスキルを奪って弱体化を狙う。


「魔王様っ!」

リライサが【神速】で絶妙なポジションから、【弓神】による[武技]を放つ。

しかし、ロックに大きなダメージを与えることはできない。


ロックの【スキルスナッチ】を警戒していた魔王であったが、【スキルスナッチ】の成長は予想外だったようで、為す術なくスキルを奪われる。

魔王の【魔神化】は素早さは増えないようで、圧倒的スピードを持つロックの【スキルスナッチ】からは逃れられなかった。

ロックが奪ったのは、【上級特殊魔法】【上級回復魔法】の2つ。

残りはユニークスキルのようで、【スキルスナッチ】で奪うことができなかった。


スキルを奪いながら攻撃の隙を窺っていたロックであったが、魔王の攻撃魔法やリライサの援護がそれを許さなかった。

魔王が自身の周辺に魔法を展開すれば、それは攻防一体の壁となる。


「…我のスキルを奪ったか…。
 だが、お前だけが近づいてきたのは、好都合!
 お前さえ魔族にできれば、この世は我らの思うままだ!」

「…?」

魔王の言葉に違和感を感じたロックであったが、その違和感の正体を探るような余裕はない。


ロックが単身で接近したため、魔法が集中的に、効果的に襲いかかってくる。

ティナの【光輝の壁】や回復魔法、ロックの強さ、分裂体による壁をもってしても、魔王の魔法は耐え切れない。

魔王との距離が近づくにつれ魔法の強さが上がるため、攻撃できるところまで行くことができない。

イライサの的確な援護もやっかいだ。


「ぐっ…!」

「ふはは…。
 大人しく魔族になれ。

 ……む!?」


魔王の警戒の声と共に、ロックへの魔法が弱まった。


フォースドラゴンとなったファルクが、魔王へ急接近していた。

同時に、イライサの前にハンナとデイジーが立ち塞がっていた。


【豪龍化】したファルクはHP・力・体力が倍化している。

さらに、【全能の権化】で全てのステータスが2倍に。

ティナのフォローもあり、魔王に手が届く範囲まで接近することに成功する。


「ぐっ…!
 デルベルトは…!?」

【魔神化】はMPや魔力など魔法に関するステータスが3倍となるが、そのほかのステータスには影響を及ぼさない。

今のファルクの攻撃を貰えば即死してしまうため、必死で対処する。

魔法をファルクに集中することで、ファルクも距離を取らざるを得なくなった。


「ファルクさん!」

魔法の勢いが弱まったため、魔王へ攻撃をしようとするロック。

「待て。」

その背後に、デルベルトが立っていた。


しかし、その身体には大きな傷を負っており、デルベルトの命は風前の灯といったところ。


「…私のスキルを…、奪ってくれ。」

「…え?」

「たくさんの罪を犯した…。
 記憶がなかったとはいえ、私のやった罪がなくなるわけではない。
 せめて少しだけでも役に立ちたい。
 【槍神】を…ファルクに渡して欲しい…。」

デルベルトは満身創痍の身体でロックに懇願する。


デルベルトの記憶が以前より戻っていたことで、攻め切れなかったファルク。

しかし、仲間の命とは天秤にかけられない。

魔王がロックたちを苦しめているのをみた瞬間【全能の権化】を発動し、デルベルトを一蹴した。

ただトドメまでは刺さなかったようだ。

「犠牲を出せば魔王様を倒すことはできるだろう。
 魔王様が死ねばどうせ私たちは死ぬ。
 それなら、犠牲を少しでも減らしたい。
 頼む、私のユニークスキルを…。」

「…わかりました。」

ロックはデルベルトからユニークスキル【槍神】を奪った。

「お…おお…、まだ倒されていないのにユニークスキルが…!?」

「相手の同意があればユニークスキルでも奪えます。
 デルベルトさん、死ぬ必要はありません。
 僕たちがなんとかしますから。
 だから…」

そう言いかけたロックの言葉を遮るように、デルベルトは自分の槍を自身の身体に突き立てた。

「デルベルトさん!?」

「これでモンスターも減る…。
 それに…背負ったまま生き続けるには、罪を重ねすぎた…。
 無責任ですまんが…後は…たの…ん………だ……。」

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