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第四章 世界中が敵
第233話 迷子
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ボルドーで実りある話ができたロックたちは、翌日ネソナン山脈に到着した。
とはいってもネソナン山脈の広さは世界最大。
しかも、【気配察知】を使えるミラがいない。
今までのように直接ボスモンスターがいるところへ乗り込むということはできなかった。
ただ、全く情報がない訳ではない。
イシュメルの情報をもとに、山脈の中でも最も高い山々がそびえる地帯へと降り立った。
「ここのどこかにいるはずですね。」
「…かなり広いな。」
着陸した場所は生息域の奥地であるが、そこからどの方向に進めばいいかも検討がつかない。
手探り状態で進んでみるが、近づいているのか、遠くなっているのかもわからない。
敵を避けることもできないため、無駄な戦闘も多かった。
遭遇する敵はA級モンスター。
ロックたちの敵ではないが、時間が取られてしまう。
「ミラの【気配察知】がないと、こんなに大変だなんて…。」
フェニックス探しは難航していた。
「…困っているようだな。」
そこに、1人の魔族が現れた。
「ま、魔族!!」
「いつの間にかボスモンスターのエリアに入っていたか!?」
戦闘態勢に入る4人。
「あっ!」
そこでロックが驚きの声をあげる。
「どうしたロック!?」
「みなさん、あの人は…、敵じゃありません。」
ロックは戦闘態勢を解いた。
「なに!?
どういうことだい!?」
「また会いましたね、ウルバーノさん。」
「ああ。
こんなに早く再会するとは思わなかったな。」
その魔族は、オリハルコンゴーレムと一緒に敵として出会った魔族、ウルバーノだった。
「…どうして魔族が敵じゃないんだ?」
アッサールが強めの口調で問いかける。
「彼はフォーレンのヴァラーハ坑道で戦った相手、ウルバーノさんです。
その戦いの中で記憶を取り戻したんです。
冒険者は魔王に倒されることで魔族になりますが、その時の戦いの内容によって自我の残り方が変わります。
魔王を追い詰めれば追い詰めるほど記憶が残り、場合によっては命令を無視することもできるようです。」
「彼がそうだと?」
魔族が率いるモンスターと前線で戦い続けてきたS級冒険者の3人は信じきれず、警戒を緩めない。
「はい。
実は…、僕の父も魔族にされていました。
父は魔王城へいたのですが、もともとよく命令を無視していたそうです。
そして僕と出会ったことで記憶をはっきり取り戻し、僕たちを…助けてくれました。
父が助けてくれなければ、全滅していたでしょう。」
「ロックの父親が…!?」
「はい…。
父は魔王への危害は加えられないけど、黒いローブの男へは攻撃できていました。
記憶が戻った魔族への拘束力はかなり弱いのは間違いありません。
実際、このウルバーノさんも命令を無視して僕らへの攻撃を止めてくれました。
そうでなければ、僕たちは全滅していました…。」
「あんたたちが、そこまで追い詰められるほど強いっていうのかい…!?」
「はい、強かったです。
でも、ウルバーノさんはスキルを僕たちにくれたんです。
ユニークスキルを…!」
「…儂はもう戦えんからな…。
戦いを放棄して、お主らに押し付けただけだ…。」
「ウルバーノさん…。」
「まあ、それはいい。
ここのボスモンスターを倒しにきたんだろう?」
「あ、はい!
ウルバーノさんはどうしてここに??」
「魔族である儂が人里に降りるわけにはいかんだろ。
モンスター生息域の浅い場所にもおれん。
どうせならボスモンスターを見つけるのが難しいこの場所にいようかと思ってな。」
「じゃ、じゃあ、場所を教えてくれるために、わざわざここに…?」
「まあ、ついでにな。」
話を聞きながら、ロック以外の3人も武器を下ろしていた。
「魔族とまで信頼関係築けるなんて、人たらしにもほどがあるね。」
「ひ、人たらしって…。」
「女たらしでもあるようですけどね。
両手に花で旅しているようですから…。」
「ろ、ロヴェルさんまで!?」
「……。」
「いやアッサールさん、何か言ってくださいよ!」
「…っふはは!!
前回と全員違うメンバーだったからちょっと心配したが、無用だったようだな!」
「このままボスモンスターが倒されるのを魔王たちが黙っているとは思えなくて、少しでも早く倒すために2手に別れたんです。
この前一緒にいた3人は別の仲間とバハムートの元に向かっています。」
「バハムートか…。
手強いが、【全能の権化】を渡したあいつがいるんだ。
大丈夫だろう。」
「そう信じてます。」
「うむ。
では、フェニックスの場所を教えよう。」
とはいってもネソナン山脈の広さは世界最大。
しかも、【気配察知】を使えるミラがいない。
今までのように直接ボスモンスターがいるところへ乗り込むということはできなかった。
ただ、全く情報がない訳ではない。
イシュメルの情報をもとに、山脈の中でも最も高い山々がそびえる地帯へと降り立った。
「ここのどこかにいるはずですね。」
「…かなり広いな。」
着陸した場所は生息域の奥地であるが、そこからどの方向に進めばいいかも検討がつかない。
手探り状態で進んでみるが、近づいているのか、遠くなっているのかもわからない。
敵を避けることもできないため、無駄な戦闘も多かった。
遭遇する敵はA級モンスター。
ロックたちの敵ではないが、時間が取られてしまう。
「ミラの【気配察知】がないと、こんなに大変だなんて…。」
フェニックス探しは難航していた。
「…困っているようだな。」
そこに、1人の魔族が現れた。
「ま、魔族!!」
「いつの間にかボスモンスターのエリアに入っていたか!?」
戦闘態勢に入る4人。
「あっ!」
そこでロックが驚きの声をあげる。
「どうしたロック!?」
「みなさん、あの人は…、敵じゃありません。」
ロックは戦闘態勢を解いた。
「なに!?
どういうことだい!?」
「また会いましたね、ウルバーノさん。」
「ああ。
こんなに早く再会するとは思わなかったな。」
その魔族は、オリハルコンゴーレムと一緒に敵として出会った魔族、ウルバーノだった。
「…どうして魔族が敵じゃないんだ?」
アッサールが強めの口調で問いかける。
「彼はフォーレンのヴァラーハ坑道で戦った相手、ウルバーノさんです。
その戦いの中で記憶を取り戻したんです。
冒険者は魔王に倒されることで魔族になりますが、その時の戦いの内容によって自我の残り方が変わります。
魔王を追い詰めれば追い詰めるほど記憶が残り、場合によっては命令を無視することもできるようです。」
「彼がそうだと?」
魔族が率いるモンスターと前線で戦い続けてきたS級冒険者の3人は信じきれず、警戒を緩めない。
「はい。
実は…、僕の父も魔族にされていました。
父は魔王城へいたのですが、もともとよく命令を無視していたそうです。
そして僕と出会ったことで記憶をはっきり取り戻し、僕たちを…助けてくれました。
父が助けてくれなければ、全滅していたでしょう。」
「ロックの父親が…!?」
「はい…。
父は魔王への危害は加えられないけど、黒いローブの男へは攻撃できていました。
記憶が戻った魔族への拘束力はかなり弱いのは間違いありません。
実際、このウルバーノさんも命令を無視して僕らへの攻撃を止めてくれました。
そうでなければ、僕たちは全滅していました…。」
「あんたたちが、そこまで追い詰められるほど強いっていうのかい…!?」
「はい、強かったです。
でも、ウルバーノさんはスキルを僕たちにくれたんです。
ユニークスキルを…!」
「…儂はもう戦えんからな…。
戦いを放棄して、お主らに押し付けただけだ…。」
「ウルバーノさん…。」
「まあ、それはいい。
ここのボスモンスターを倒しにきたんだろう?」
「あ、はい!
ウルバーノさんはどうしてここに??」
「魔族である儂が人里に降りるわけにはいかんだろ。
モンスター生息域の浅い場所にもおれん。
どうせならボスモンスターを見つけるのが難しいこの場所にいようかと思ってな。」
「じゃ、じゃあ、場所を教えてくれるために、わざわざここに…?」
「まあ、ついでにな。」
話を聞きながら、ロック以外の3人も武器を下ろしていた。
「魔族とまで信頼関係築けるなんて、人たらしにもほどがあるね。」
「ひ、人たらしって…。」
「女たらしでもあるようですけどね。
両手に花で旅しているようですから…。」
「ろ、ロヴェルさんまで!?」
「……。」
「いやアッサールさん、何か言ってくださいよ!」
「…っふはは!!
前回と全員違うメンバーだったからちょっと心配したが、無用だったようだな!」
「このままボスモンスターが倒されるのを魔王たちが黙っているとは思えなくて、少しでも早く倒すために2手に別れたんです。
この前一緒にいた3人は別の仲間とバハムートの元に向かっています。」
「バハムートか…。
手強いが、【全能の権化】を渡したあいつがいるんだ。
大丈夫だろう。」
「そう信じてます。」
「うむ。
では、フェニックスの場所を教えよう。」
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