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第四章 世界中が敵

第207話 戦意喪失

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全員が満身創痍の状態であるロックたちに向かって、S級魔族は範囲攻撃の[武技]を放つための予備動作に入った。

放たれれば、全滅は免れない。


その時、…異変が起きた。


「ぐっ……。」


S級魔族が斧を手放し、斧は地面に落ちた。

ロックはすかさず【スキルスナッチ】で【バーサーカー】を奪った。

他に持っていたスキルは【斧術師】【中級回復魔法】、それにユニークスキルであった。

闇玉を放とうとも思ったが、【スキルスナッチ】よりも避けられる可能性が高かったため、スキルを奪うことを優先した。


「うっ…。」


S級魔族が正気に戻る。

その間にティナとミラがメンバーのHPを回復し終えていた。

ファルクは【龍化】を解いて構えている。


ロックとファルクが同時に攻撃をしかけた。


「…イッタイドウシタンダ…?」


その攻撃はオリハルコンゴーレムによって防がれた。

5体いた分裂体は残り3体となっている。

分裂体はロックたちと敵の間に陣取った。


全滅は免れたが、ダメージを与えることができないという状態に戻ってしまった。


「…すまん…。」

S級魔族は申し訳ない様子で、しかし戦う意思が無くなってしまったかのように立ちすくんでいる。

オリハルコンゴーレムは腑に落ちないようだが、目の前には敵がいるためそれ以上の問答はしなかった。

分裂体へと打撃を繰り出すオリハルコンゴーレム。

分裂体のうち1体がS級魔族へと接近する。

だが、S級魔族は動かない。


「…ナニヲシテイル!?」


オリハルコンゴーレムがS級魔族を庇い、分裂体の攻撃を受け止める。

他の分裂体の追撃も全てオリハルコンゴーレムが受け止めていた。


「…防御力を高めるスキルは、触れていなければ仲間には効き目がないようだな。」

目の前の攻防を見ていてファルクがそう分析する。

かなり近くで戦っているにもかかわらず、オリハルコンゴーレムはS級魔族に攻撃が当たらないよう立ち回っている。

確かに、S級魔族にダメージが通らない時は、オリハルコンゴーレムと背中合わせだったり、体の一部が触れていたりしていた。


ロックはS級魔族を集中的に狙うよう、分裂体を動かす。

オリハルコンゴーレムは防戦一方になり、動きが抑制される。

その隙を狙ってスキルを奪うことは難しくなかった。


(【スキルスナッチ】。)


『どのスキルを奪いますか?』

『【拳聖】スキル
 【上級特殊魔法】スキル
 【体力50%UP】スキル
 【*****】スキル』


(…【体力50%UP】スキル。)


『【体力50%UP】スキルを奪いました。どのスキルと入れ替えますか?』


(【バーサーカー】。)


『【バーサーカー】スキルは完全に消滅しますが、よろしいですか?』


(うん。)


『【バーサーカー】スキルと【体力50%UP】スキルを入れ替えました。』



「…シマッタ……。」


防御力はステータスの体力値に影響される。

ロックは【体力50%UP】を奪うことで、ユニークスキルの防御力を下げることができると判断した。

そしてその判断は間違っていなかったようだ。

ファルクの[武技]による攻撃でダメージを与えることができるようになった。

それでも、他のメンバーの攻撃ではダメージがまだ通らない。


オリハルコンゴーレムはS級魔族を庇う余裕がなくなり、ファルクの対応に追われる。

ロックはさらにスキルを奪おうとするが、オリハルコンゴーレムもなかなか奪わせない。

S級魔族を狙えば隙ができるのだが、完全に戦意を失っている有り様を見てロックは攻撃を仕掛けられずにいた。

ロックだけでなく、ティナやミラも。

それに気づいたファルクはチッと舌打ちをして、S級魔族に標的を変えた。


分裂体をうまく使ったファルクの動きに虚をつかれたオリハルコンゴーレム。

一瞬対応が遅れてしまったが、S級魔族を狙うことで背中を向けたファルクを狙い撃つ。


「ファルクさん!」

ロックたちも予想していなかったファルクの動きにフォローが遅れてしまった。

ファルクは後ろから迫るオリハルコンゴーレムを無視するように、S級魔族へ接近していく。


「…クラエッ…!」
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