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第四章 世界中が敵

第163話 大臣室への侵入

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【隠密】と高いステータス値のおかげで、翌日にはバルキア帝国に到着したロック。

そのまま皇帝のいる城へと忍び込んだ。

ヨムじいさんから城内の地図をもらっていたロックは、思っていたよりも簡単に大臣室にたどり着いた。

(緊張するな…。)

【隠密】を使ってるとはいえ、指名手配されている身の上で、世界一の大国の本陣に不法侵入するのはかなり神経を削られる。

どうやって接触しようか考えていると、中から怒鳴り声が聞こえてきた。

ドアに耳を当てて会話を聞いてみる。


「ええ加減にせんか!
 なんでわしがそんなことせにゃあかんのだ!」

「ですが…、これは大臣にしか頼めないことで…。」

「都合のいい時ばっかり使いおって…!
 頼みたきゃ自分で頭下げろと言っておけ!」」

「そんな…。」

「ええからもう出ていけ!」


(…これ話聞いてもらうの、無理じゃないか?)

ただでさえ指名手配を受けているロックが話を聞いてもらうのはかなり無理がある。

今の会話を聞いてると、輪をかけて難しいことに思えてきた。


(…おっと!)

ドアから数人の男が出てきた。

「…まったく!
 なんであんなに捻くれてるんだ!?」

「よせ!
 聞こえたらまた面倒なことになるぞ?」

「だってよ…。」

男たちは口々に不満を垂らしながら去っていった。


(はあ…。
 気が重いけど…、行くしかないか…。)


ガチャ


「なんじゃ!
 まだ怒られ足りんのか!?」

しかし、大臣が扉の方を見ても誰もいない。

「…なんで扉が開いたんじゃ?」


(そうか、【隠密】のままじゃ気付かれないのか…。
 でも、解除したら【気配察知】持ってる人にバレちゃうし…。

 攻撃を仕掛けたら認識されるようになるから…、【分裂】使ってみるか。)

ロックは【分裂】を1体生み出し、すぐに消した。


「……!!
 …なんじゃ、お主は!?」

「突然すみません…。
 S級冒険者のロックと申します。」

「S級冒険者?
 どうやってここまで…!?
 
 …ロック?
 
 ロックと言ったか?」

「…はい。」

「S級冒険者や看守を殺して…、指名手配の…?!」

S級冒険者が殺されるということはものすごい大事件だったため、大臣の耳にも名前が届いていた。

「…その容疑をかけられています。」

「な、な、なんでこんなところに!?
 衛兵は何をしておるんじゃ!?

 おー…」

大声で衛兵を呼ぼうとしたジョセ大臣の口を慌ててふさぐロック。

「危害を加えるつもりはありませんので、話を聞いてください!
 お願いします!」

「むご…もご…。」

「無礼なことをしてしまってすみません…!
 でも、どうかお話を聞いてもらえませんか…?」

ロックを強く睨みながら、渋々首を縦にふるジョセ大臣。

「大声出さないでくださいね?
 お願いしますね?」

そう言いながら、そっと手を話すロック。

「…っはぁ!

 …ったく、このわしを誰だと思っとるんじゃ!?
 タダじゃ済まさんぞ!?」

(ヨムじいさん、本当にこの人大丈夫なんでしょうか…。)

「本当に申し訳ございません!
 実はヨムじいさんから大臣のことを教えてもらって、ここまできました。」

「…ヨム?
 …ヨムってあのヨムか?」

「…そのヨムだと…思います。」

「あのジジイ、まだ生きとるのか!?」

「はい。
 元気ですよ?」

「…ふっ。」

「え?」

「ふはっはっはっは!!

 あのジジイが生きておったのか!
 とっくにくたばったかと思っておったわ!」

命の恩人であるヨムじいさんへの暴言に、ロックの目が鋭くなる。

「ヨムじいさんは僕の命を救ってくれた恩人です。
 そんな言い方はやめていただきたいです。」

「あ!?
 あいつが命の恩人だと!?

 …いいだろう。
 話をしてみろ。」

「…ありがとうございます。」


ロックは義理の両親に殺されかけて、ヨムじいさんに助けてもらったこと。

将軍に義理の両親を殺さないように罰して欲しいとお願いしたこと。

魔王城での出来事。

魔王城から逃げてきたら身に覚えのないことで指名手配されていたことを話した。


「…しかし、S級冒険者の殺害はともかく、看守や義理の親を殺した件は目撃者が何人もおるらしいじゃないか。」

「それがなぜなのかわかりません。
 ヨムじいさんの話だと、ギルドマスターが怪しいようなんですが…。」

「むぅ…。
 義理の両親を殺す動機はありそうじゃがな。」

「やっていません。
 それなら、将軍が処刑すると言った時にお願いしています。」

「…なぜワシのところに来た?」

「手がかりがなくて、ヨムじいさんにアドバイスをもらいに行ったら、大臣に話を聞いてみろ、と。」

「…あのジジイめ。

 …ロックとやら。」

「はい。」

「あのジジイに免じて、お主の言うことが本当かどうか確かめてやろう。」

「確かめる…?」
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