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第三章 魔王の真実

第148話 焦る魔王

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リッチェルが【深淵の闇】により限界まで溜めたダメージを魔王に向けて放とうとした、その瞬間。

背後から何者かがリッチェルの背中を切り裂いた。

それは、イーザだった。

自身の最大HPの2倍以上のダメージを受けるとHPが1になる【深淵の闇】スキルにより、死は免れたリッチェルだが、気を失い瀕死状態に。

「よし。
 奥に連れていけ。」

「…はい。」

リッチェルを斬ったイーザは、…魔族の姿となっていた。

「…イー…ザ…。」

「リッチェルさん…!」

「デルベルト、いい加減に下の加勢に行け。
 我はこいつらも死なない程度に弱らせて、後で魔族にしてやる。」

「かしこまりました。」

イーザがリッチェルを担いで奥の部屋へと姿を消した。

そう。

ティナやミラも殺そうと思えばいつでもできた。

魔族にするために、弱らせるための戦いだったのだ。

タイミングをはかる余裕がなく【光輝の壁】を発動し続け、回復魔法を使い続けたミラのMPが底を尽きた。

「ロック…。」

「ロックー!」

助けを呼ぶティナとミラ。



その時、階段を誰かが駆け上がってきた。

「む、マーティンか?
 いや、1人じゃないな。」

ティナとミラの叫びは届いた。

「「ロック!!!」」

「みんな!!」

数十体の分裂体とともに駆け上がってきたのはロック。

「マーティンを倒してきたと言うのか!?
 しかし、ここならミノタウロスすら倒せまい。」

力が抑制される玉座の間でも分裂体は影響を受けない。

それでもスキルを使えない分裂体はS級モンスターに劣るとデルベルトは予測した。

一度戦ったことのある彼の考えは正しい。


彼と戦った時のロックだったならば。


デルベルトの予想に反して、分裂体はギルタブリルの分裂体たちをあっさりと片付け、ティナとミラを保護した。

「なに!?
 分裂体同士だと確かにギルタブリルが弱いが、あそこまで簡単に倒すことはできないはず…。」

分裂体に紛れたロックは、ミノタウロスへ【スキルスナッチ】を発動した。

そして、奪ったスキルを発動した。

「【全能力50%UP】!」

そのスピードは同じスキルを使ったデルベルトをはるかに凌駕していた。

あっという間にファルクを押さえつけるギルタブリルに近づき、突き飛ばす。

突き飛ばした先には分裂体がおり、ギルタブリルにトドメを刺した。

数十体いたギルタブリルの分裂体、分身体が消える。


ロックはそのままデルベルトへ斬りかかる。

「くっ!
 【全能力50%UP】!」

急いでスキルを発動し、迎え撃つデルベルト。

しかし、ステータス差は歴然。

さらに、魔力が上がったロックは7体の分裂体を増やした。

「な、なぜだ!
 こんな短期間でどうやって強くなった!?
 しかも力が抑制されてるはずなのに…!?」

動揺を隠せないデルベルト。

そのデルベルトの相手をしながら、ロックが叫ぶ。

「ティナ、ミラ、ファルクさん!
 その珠を強く握って!」

3人の近くにいた分裂体たちが、光る珠を手渡す。

「「あれは!!」」

デルベルト、それにロックがきても言葉を発さなかった魔王が焦りの声を張り上げた。
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