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第三章 魔王の真実

第141話 ファルクの懇願

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イーザを攫われてしまったロックたち。

連れていったところを見ると、殺されてはいないのだろう。


「くそおおおおお!!!!」


拳を激しく地面に打ちつけるファルク。

「リッチェル!!
 【龍化】してくれ!!!
 あいつを追いかける!!」

「追いかけるって、どこへ!?」

「…イーザの気配はまだするから生きてる!
 まだ近くにいるよ!
 
 ……!?
 あれ?
 近づいてくる?」

ミラが察知した方角から、飛龍が飛んできた。

「あれに乗ってる!」

「あっちは…、魔王城か…!」

攫われた冒険者は皆、魔王城の方へ連れ去られている。

麒麟では長距離は移動できないため、乗り換えたのだろう。

気付けば魔族たちが最初に乗ってきた飛龍がいなくなっていた。


「リッチェル頼む!
 魔王城まで連れて行ってくれ!!」

「魔王城へ行って連れ帰れると思ってるのかい!?」

「頼むよ!!
 じゃあ俺のMPを回復してくれ!!
 1人でも行くから!!」

「君の【龍化】をコピーしたから【神の恩寵】はもう使えないよ…!」

「くそっ…!
 くそおおお!!
 頼む!!
 リッチェル!!
 お前しかいないんだ!!!」

頭を激しく地面にぶつけて土下座するファルク。

「僕だって行きたいのはやまやまだ!
 だけど、行ったところで僕たちも殺されるだけじゃないか…!」

「それでも!!
 少しでも可能性があるなら助けに行きたいんだ!!
 近くまで行ったら帰ってくれていいから!!」

しかし、リッチェルは首を縦に振ることができない。

彼は自分の命を守るために仲間、もとい女の子を見捨てるような男ではない。

みすみす仲間を死に追いやる選択を取ることができないのだ。

「そ、そうだ!
 ロック!!
 俺の【龍化】を奪って、お前が飛んでくれねえか!?
 まだMPはあるだろ!?」

リッチェルと同じことを考え、ロックは答えることができない。


(…でも、助かるかもしれないイーザさんを見殺しにはできない。)


「…できません。」

「ロック!!
 頼むよ!!
 …誰かイーザを助けに行かせてくれ!!」

「…ファルクさんのスキルを奪ったら、こちらの戦力が減ってしまいます。
 リッチェルさん、アルカトルまで送ってもらえませんか?」

「そ、それはもちろんいいけど、どうするつもりだい?」

「アルカトルに帰って【神の恩寵】でMPを回復してもらって、魔王城に行きましょう。」

「それじゃ、イーザが…!」

「じゃあファルクさん、[武技]もスキルも使えない状態で魔王城へ行ってイーザさんを取り返せるんですか!?」

「それはそうだが、イーザが殺されてからじゃ遅えだろ!」

「ロック、ティナやミラはどうするつもりだい?
 一緒に死ぬつもりか?」

「僕も死ぬつもりはないですよ。
 …でも、ティナとミラには残って欲しいです…。」

「イヤだよ!!
 絶対に行く!!」

「私も行くわ。
 イーザさんを助けたいし、あなただけ魔王城へ行って死んでしまったら、一生後悔する。
 それに…、ゴルドさんの無念を晴らしてあげたい…!」

「…ファルクさん。
 僕はこの世界をどうにかするまで死ねないし、ティナやミラは絶対に死なせたくありません。
 …何があっても、生きて帰ってくる覚悟はありますか?」

「…生きて…、帰ってくる、覚悟か…。」


立ち上がり、ロックの手を掴むファルク。


「イーザを連れ戻して、お前らも絶対死なせねえ!
 俺が連れて帰る!
 だからみんな!!
 力を貸してくれ!!」

リッチェルが呆れたというふうに、ため息を吐く。

「はあ。
 可憐な女の子が助けに行くって言ってるのに、僕が行かないわけにはいかないね。」

「リッチェル!!
 行ってくれるのか!?」

「しょうがないだろ?
 その代わり、ちょっと作戦変更しよう。」

「どうするんだ?」

「イーザを助けるなら、MPを回復してる時間はない。
 僕がアルカトルで【神の恩寵】をコピーするから、MPを回復しながら魔王城へ向かおう。」

「リッチェル…!」

「セアラにも声をかけたいけど、行ってくれるとしてもこのことを話したら説得に絶対に時間がかかる。
 このメンバーで行くしかないね。」

「すまねえ…。
 恩に着る…!!」

「君のためじゃない。
 イーザとティナ、ミラ、可愛い女の子たちのためさ。
 
 <龍化>!」


フォースドラゴンへと変身したリッチェルに乗り、アルカトルへ戻る一行。


【神の恩寵】を持つ冒険者はいつも軍医室にいるため、直行。

リッチェルが【神の恩寵】をコピーした。

ファルクのMP回復を待つ時間がもったいないため、後で返せばいいということでロックがファルクの【龍化】を奪い、変身した。


そして、誰に事情を話すこともなく、魔王城へと急いだ。
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