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第三章 魔王の真実

第127話 アルカトル防衛戦13

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「ミラ!?」

「…[スタン]、
 [スタン]。」

「うっ!」

ミラの硬直を与える状態異常魔法がティナにかかった。

ロックには効かなかったようだ。

身動きの取れないティナに杖を振り下ろすミラ。


ガキッ!


ロックが杖を防ぐ。

次の瞬間、マンティコアが強烈な勢いでロックに噛み付き、腕の肉を噛みちぎっていった。

そのまま駆け抜けるマンティコア。

「よし、今だ!
 身動き取れない状態なら、こっちのスキルを封じてる妙な能力も使えまい!」

魔族たちも弱体化の正体がスキルを使えなくする、ということに気づいたようだ。

最初の魔法を放った時、無条件にダメージをくらうかどうかでロックの本体がどれなのかも把握している。


「はっ!」

突然正気に戻るミラ。

魔族たちの予想を裏切り、魔力を上げるスキルを使い、ミラに【乗り移り】を使っていた鵺のスキルが封じられた。

「なに!?
 あの状態でもスキルを封じることができるのか!」

「[ミドルヒール]!
 [ハイキュア]!」

マンティコアに噛みちぎられたロックの傷と、ティナの状態異常を癒すミラ。

「[アローレイン]!」

接近してきていた魔族たちに[武技]を浴びせるティナ。

想定外の事態に、敵は捌ききれずにまともにダメージを受ける。

「くっ!
 [オールヒール]!」

回復魔法を唱えるが…、発動時の淡い光が発光しない。

「…!
 くそぉぉお!!
 なんの能力使ってやがるんだ!!」

スキルを封じられ…、実際は奪われているのだが、激昂する魔族。


「…ぐふっ!」

怒りで視界が狭くなった隙をつき、ロックの分裂体たちが回復役だった魔族を葬る。

戦場と違い、本体が近くにいれば随時指示を送ることができるので、分裂体の動きの幅が格段に向上する。

これで3体撃破し、数の上での不利も小さくなってきた。

しかし、リーダー格の魔族には余裕すら感じる。

その魔族が、ニヤッと笑った。

「お前たちは確かに強いし、こちらのスキルを封じられるのは脅威だ。
 しかし、それでも勝つのは私たちだ。
 想定の範囲内で動いてくれて感謝するよ。
 予定通り、貴様を連れて帰るとしよう。」

もう1人の魔族もニヤニヤしている。

「…やれ!」

リーダー格の魔族がなんらかの合図を出した。

身構えるロックたち。





「な、なに?
 何が起きるの!?」

怯えるミラ。


「ふふ。
 ロックとやら、武器を捨てるがいい。」

勝ち誇ったようにそう言い放つ魔族。


…しかし、ロックは身構えたままで、武器を捨てたりはしない。


「…え?」

よほど想定外だったのか、口をあんぐりと開ける魔族。


「もしかして、【呪怨】があなたたちの切り札だったのかしら?
 さっきモンスターがロックの腕を食いちぎっていったものね。」

「ぐっ!
 な、なぜ効かん!?
 ステータス差があろうと、媒体があれば体の自由を奪うくらいはできるはず!?

 …ぐっ!?」


突然、リーダー格の魔族の挙動がおかしくなった。

そう思った次の瞬間、もう1体の魔族へと剣で斬りつけた。

「な!?
 何してるんだ!?」

残っていたモンスターへも攻撃を始める。


「まさか、【乗り移り】か!?」

斬りつけられた魔族はロックたちの方を見る。

3人とも好機とばかりに攻撃を開始している。

つまり、動いている。

【乗り移り】を使った術者は動けなくなる。


「もしや!?」

魔族が振り返ると、分裂体だと思っていたうちの1体を、他の2体が庇うように動いている。

その1体は微動だにしていない。


「お前が本体か!!」

それは、最初に魔法で切り刻まれ、突っ込んでいったロック。

あえてリスクを犯すことで、本体ではないと思わせるための作戦だった。
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