上 下
126 / 283
第三章 魔王の真実

第124話 アルカトル防衛戦10

しおりを挟む
S級冒険者3人をはじめとする主戦力メンバーは本陣に戻り、状況確認をし、現状に適した作戦を立て直すことにした。

総指揮を執るギルマスが会議を主導して進める。

「時間がないから、手短にいくぞ。
 【神の恩寵】を使えるリッチェルを中心にアッサールとグリゴリーチームは戦ってもらう。
 戦闘しながらMPを回復できるリッチェルの存在は貴重だ。
 その貴重な恩恵を、最大戦力であるSランクの2人のチームが受けられるようにする。
 ただ、今からアッサールのチームを編成する暇はない。
 アッサールとリッチェルはコンビで動いてくれ。」

「…わかった。」

異論のある者はおらず、ギルマスは続ける。

「ロックのパーティには重要な役目を頼みたい。」

「なんでしょう?」

「今回の戦い、大きな違和感がある。
 それはモンスターたちの動きがあまりに統率が取れ過ぎていることだ。
 モンスターだけでこんな戦術的な動きが取れるとは考えづらい。」

「魔族が指示を出してるんでしょうか?」

「そうとしか考えられない。
 今までは冒険者側が疲弊しきった最後にしか姿を見かけていない。
 最後に飛龍でやってくるが、目立たないように戦闘はせず、瀕死になった冒険者をただ連れ帰っていたんだ。
 遠く離れたところで、タイミングを測ったような指示を出せるとは思えん。
 どこか近くにいるはずだ。」

「では、僕らの役目は…。」

「ああ。
 その魔族を見つけて倒して欲しい。
 もしかすると、それでモンスターが引き上げる可能性もある。」

「わかりました。
 ではA級モンスターのスキルを奪いつつ、魔族を探します。」

「頼んだぞ。」



ギルマスは指揮のため本陣に残り、他のメンバーは再び戦場へと向かった。


【全能力50%UP】を得たアッサールは早速発動。

リッチェルが取り残されそうな勢いでモンスターの群れへ飛び込んでいった。


飛び込んだ先にはモンスターに対し明らかに劣勢な冒険者たちがいた。


「おおおお!!」

冒険者たちを取り囲むモンスターを一掃するアッサール。

「ア、アッサールさん!
 ありがとうございます!!
 あ、あの…」

「…【バーサーカー】は使っておらんから大丈夫だ。
 MPを回復して、体制を立て直せ。」

助けてもらった感謝とアッサールに対しての動揺があった冒険者の言いたいことを汲み取って伝えるアッサール。

冒険者たちに安堵の色が見える。

遅れてリッチェルもやってきた。

「張り切りすぎだよ、アッサール!
 みんな大丈夫かい?
 回復したら、一度本陣に戻ってギルマスの指示を聞いてくれ。」

回復する時間を稼ぐため、2人は冒険者たちを庇いながらモンスターを倒していく。

自分の意思で効率良く戦えるようになったのと、リッチェルのおかげで[武技]をふんだんに使えるようになったことで、アッサールの殲滅力が今まで以上にすごい。


少し離れてグリゴリーたちもモンスターを殲滅している。

リッチェルはどちらにも【神の恩寵】を受けられるように位置を調整した。

グリゴリーたちも戦いながらMPを回復できるため、殲滅スピードが上がっている。


このSランク3人のいる付近のモンスターがものすごい勢いで減っていくため、他の冒険者たちの負担も軽くなってきた。

押し込まれていた本陣付近も、徐々に押し返してきた。


一方ロックたちは分裂体3体を引き連れて、魔族を探していた。

A級モンスターのスキルを奪いながら、また、優先的に倒しながら進んでいく。

多くのA級モンスターは本陣付近に集まっていたようで、ある程度進むとほとんどがB級モンスターになってきた。

空を駆けるグリフォンもその多くがMPが切れたのか、降下してくることがなくなってきた。

ロックの【スキルスナッチ】により無効化されたグリフォンも何体かいるので、空の戦力はほぼなくなったと見ていいだろう。

その空を指差して、【気配察知】で魔族を探していたミラが言葉を発した。


「やっぱり、気配が1つ多い!
 誰かグリフォンに乗ってるよ!」

「グリフォンに乗ってたのか…。
 でも、あの高さにいるグリフォンに攻撃しても躱されてしまう。
 どうしたらいいかな…。」

「あ、グリフォンが1体離れていくわよ!」

「…離れていく気配は2体…。
 多分、あのグリフォンに魔族が乗ってる!」

「よし、行こう。」

ロックたちはグリフォンのあとを追った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

無能を装って廃嫡された最強賢者は新生活を満喫したい!

えながゆうき
ファンタジー
 五歳のときに妖精と出会った少年は、彼女から自分の置かれている立場が危ういことを告げられた。  このままではお母様と同じように殺されてしまう。  自分の行く末に絶望した少年に、妖精は一つの策を授けた。それは少年が持っている「子爵家の嫡男」という立場を捨てること。  その日から、少年はひそかに妖精から魔法を教えてもらいながら無能者を演じ続けた。  それから十年後、予定通りに廃嫡された少年は自分の夢に向かって歩き出す。  膨大な魔力を内包する少年は、妖精に教えてもらった、古い時代の魔法を武器に冒険者として生計を立てることにした。  だがしかし、魔法の知識はあっても、一般常識については乏しい二人。やや常識外れな魔法を使いながらも、周囲の人たちの支えによって名を上げていく。  そして彼らは「かつてこの世界で起こった危機」について知ることになる。それが少年の夢につながっているとは知らずに……。

スキルハンター~ぼっち&ひきこもり生活を配信し続けたら、【開眼】してスキルの覚え方を習得しちゃった件~

名無し
ファンタジー
 主人公の時田カケルは、いつも同じダンジョンに一人でこもっていたため、《ひきこうもりハンター》と呼ばれていた。そんなカケルが動画の配信をしても当たり前のように登録者はほとんど集まらなかったが、彼は現状が楽だからと引きこもり続けていた。そんなある日、唯一見に来てくれていた視聴者がいなくなり、とうとう無の境地に達したカケル。そこで【開眼】という、スキルの覚え方がわかるというスキルを習得し、人生を大きく変えていくことになるのだった……。

異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる

名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

クラス転移で裏切られた「無」職の俺は世界を変える

ジャック
ファンタジー
私立三界高校2年3組において司馬は孤立する。このクラスにおいて王角龍騎というリーダーシップのあるイケメンと学園2大美女と呼ばれる住野桜と清水桃花が居るクラスであった。司馬に唯一話しかけるのが桜であり、クラスはそれを疎ましく思っていた。そんなある日クラスが異世界のラクル帝国へ転生してしまう。勇者、賢者、聖女、剣聖、など強い職業がクラスで選ばれる中司馬は無であり、属性も無であった。1人弱い中帝国で過ごす。そんなある日、八大ダンジョンと呼ばれるラギルダンジョンに挑む。そこで、帝国となかまに裏切りを受け─ これは、全てに絶望したこの世界で唯一の「無」職の少年がどん底からはい上がり、世界を変えるまでの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 カクヨム様、小説家になろう様にも連載させてもらっています。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

処理中です...