上 下
45 / 283
第二章 美少女とはじめる、むっつりスケベの冒険

第44話 欠落した蜘蛛③

しおりを挟む
2日後、ロック・ティナ・ブリッドの3人は馬車に乗ってアラートフの町を旅立った。

御者はブリット。

馬車はバルキア帝国へ向かって走る。


1日目。

襲撃はなかった。

道中で野宿をしたのだが、テントは女性用、男性用の2つを準備した。

「レディは丁重に扱わないとね。」

というブリットの発案だ。

(そうだけどさ…。一緒に寝ても何もないんだけど、さ…。)

その配慮にロックがモヤモヤしていたことはいうまでもない。


2日目。

半日ほど走ったところで、動きがあった。

「…来ました。」

【気配察知】スキルを広範囲で発動していたブリットが小声で2人に伝えた。


「おい!そこの馬車、止まれ~!!」

いかにも盗賊、といったいでたちの男たちが馬車を囲んだ。

その数、十数人。


ブリットが馬車を止める。

「な、なんですか!?
 あなたたちは!?」

「見ての通り、盗賊だ。
 有り金と金目のものよこせば、命だけは助けてやる。」

「本当に手は出さないんですね!?」

「ああ。
 お?そこのお嬢ちゃんはえらいきれいだな~…!
 一緒に連れて行くか…!」

「もし彼女にまで危害を加えるというなら、黙ってやられはしません。
 僕たちも全員D級冒険者。
 そちらもただではすみませんよ。」

ブリッドが鋭い眼光でリーダー格の男を睨む。

ロックも腰の剣に手をかける。

「ふん。
 まあいい、金をよこしな。
 あ、金額はわかってるからな。
 誤魔化そうとすんじゃねえぞ。」

「ロックさん、仕方ないです。
 お金を渡してください…。」

「命にはかえられませんからね。」

ロックはお金の入った袋を盗賊に投げて渡す。

「おお~!
 大金だぜ…!
 
 しょうがねえから命は助けてやる。
 じゃあな!」


盗賊たちは引き上げていった。

3人は馬車で来た道を引き返した。

そして途中で停車した。


「そろそろだね。
 行こう。」


ブリットの【気配察知】の範囲ギリギリになったところで、尾行開始。

相手は馬での移動だったので、こちらも馬車の馬にそれぞれ乗り込んだ。


走ること数時間。

「どうやら着いたようだ。
 他の盗賊の気配もする。

 もう少しだけ近づいて、隠れ家を確認したら帰ろう。」

3人は馬を木に繋いで、静かに近づいた。


「あの穴が入り口かしら?」

盗賊たちは山の洞窟を隠れ家にしているようだ。

「ブリットさん、あの中に気配は感じますか?」

「うん。
 かなりたくさんの気配を感じる。
 隠れ家で間違いなさそうだ。

 よし、一旦町に帰ろう。」

「「はい。」」

ロックとティナが戻ろうと振り返った時。


「へっへっへ。」


木陰から何人もの盗賊が現れた。

「いつの間に!?」

ブリッドは【気配察知】を使っていたにもかかわらず、囲まれたことに驚いている。

「お金をくれた上に、わざわざ始末されてきてくれてありがとよ。」

ロックは覚悟を決めた。

「悪いけど、そう簡単にやられないよ。」

「知ってるよ。」

「なに!?」

「D級冒険者だけど、B級モンスター狩ってくるくれえだもんな~。
 さぞ腕に自信があるんだろうよ。」

「なぜそれを…!?」

「まあ、強い冒険者と戦って俺らも無駄に死にたくはねえからな。
 お前らの始末はボスが直々にしてくれるってよ。」


盗賊たちの後ろから、煌びやかな服を身につけた、しかし、醜悪な表情の男が現れた。

「ふっふっふ。
 君たちが噂の冒険者か。
 わしらのために稼いでくれてありがとう。」

「何言ってるんだ!
 マークさんやたくさんの人を傷つけて…、許さないぞ!」

「ロックさん。」

ロックを制して、ブリッドが前に出る。

「目の前に現れてくれて、好都合だ。」

盗賊のボスに歩み寄るブリッド。

「ブリッドさん!
 離れてください!」

しかし、そのまま近づくブリッド。

ニヤニヤしている盗賊のボス。


手が届く距離まで近づき、ブリッドが止まった。

そしてロックたちを振り返り、微笑んだ。

それから再び盗賊のボスを見て…、





何かを手渡した。


「よくやった。
 ブリッド!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

無能を装って廃嫡された最強賢者は新生活を満喫したい!

えながゆうき
ファンタジー
 五歳のときに妖精と出会った少年は、彼女から自分の置かれている立場が危ういことを告げられた。  このままではお母様と同じように殺されてしまう。  自分の行く末に絶望した少年に、妖精は一つの策を授けた。それは少年が持っている「子爵家の嫡男」という立場を捨てること。  その日から、少年はひそかに妖精から魔法を教えてもらいながら無能者を演じ続けた。  それから十年後、予定通りに廃嫡された少年は自分の夢に向かって歩き出す。  膨大な魔力を内包する少年は、妖精に教えてもらった、古い時代の魔法を武器に冒険者として生計を立てることにした。  だがしかし、魔法の知識はあっても、一般常識については乏しい二人。やや常識外れな魔法を使いながらも、周囲の人たちの支えによって名を上げていく。  そして彼らは「かつてこの世界で起こった危機」について知ることになる。それが少年の夢につながっているとは知らずに……。

スキルハンター~ぼっち&ひきこもり生活を配信し続けたら、【開眼】してスキルの覚え方を習得しちゃった件~

名無し
ファンタジー
 主人公の時田カケルは、いつも同じダンジョンに一人でこもっていたため、《ひきこうもりハンター》と呼ばれていた。そんなカケルが動画の配信をしても当たり前のように登録者はほとんど集まらなかったが、彼は現状が楽だからと引きこもり続けていた。そんなある日、唯一見に来てくれていた視聴者がいなくなり、とうとう無の境地に達したカケル。そこで【開眼】という、スキルの覚え方がわかるというスキルを習得し、人生を大きく変えていくことになるのだった……。

異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる

名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。

クラス転移で裏切られた「無」職の俺は世界を変える

ジャック
ファンタジー
私立三界高校2年3組において司馬は孤立する。このクラスにおいて王角龍騎というリーダーシップのあるイケメンと学園2大美女と呼ばれる住野桜と清水桃花が居るクラスであった。司馬に唯一話しかけるのが桜であり、クラスはそれを疎ましく思っていた。そんなある日クラスが異世界のラクル帝国へ転生してしまう。勇者、賢者、聖女、剣聖、など強い職業がクラスで選ばれる中司馬は無であり、属性も無であった。1人弱い中帝国で過ごす。そんなある日、八大ダンジョンと呼ばれるラギルダンジョンに挑む。そこで、帝国となかまに裏切りを受け─ これは、全てに絶望したこの世界で唯一の「無」職の少年がどん底からはい上がり、世界を変えるまでの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 カクヨム様、小説家になろう様にも連載させてもらっています。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

処理中です...