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第一章 拒絶と旅立ち
第5話 美少女を救え!
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「僕のスキルは…」
「待ちなさい。」
話そうとするロックを、ヨムじいさんが制した。
「え?なんでしょう?」
「ロック、スキルは人に簡単に教えるものではない。
今回のように、スキルは人をおかしくする。
特にお主は世界でもほとんどいない5つのスキル持ち。
本当に信頼できる仲間以外には教えてはいかん。」
(その通りだ…。だけど…。)
つい最近殺されかけたというのに、警戒心がなさすぎたとロックは忠告を受け止めた。
とはいえ、ヨムじいさんは助けてくれた命の恩人だ。
「そうですね…。気をつけます。ご忠告ありがとうございます。」
ロックはペコリと頭を下げた。
「その上で、僕のスキルのことをお話しさせてください。
ヨムじいさんは本当に信頼できる人ですから。」
その言葉にヨムじいさんは目を丸くした。
「なに!?
わしの言ったこと、本当にわかっとるのか?
会ってすぐの人間を信頼できるなどと…。」
ヨムじいさんは心配そうに、険しい顔でロックをみた。
「はい。
でも、命の恩人を疑うより、信じて生きていきたいです。
もしヨムじいさんに利用されたとしても、後悔しません。
そんなことはないと確信してますけどね。」
ヨムじいさんは照れ臭そうに頭をかきながら、ため息をついた。
「はぁ。この子は…。大丈夫かのぉ。」
心配するヨムじいさんに、ロックはにっこり笑いかけた。
そして、小声で話しかけた。
「お話ししたい理由はもう1つあるんです。
さっきティナさんのスキルに問題がある、っておっしゃいましたよね?」
「うむ。詳しくは言えんがな。」
「もちろん他の人のスキルについて詳しくは聞けませんが、もしかしたらお役に立てるかもしれません。
僕のスキルのことをお話しするので、ティナさんを助けることができるかどうか、ヨムじいさんが判断してもらえませんか?」
「顔も見たことない他人を助けるために、自分のスキルを話すのか。
お人好しじゃのう…。」
ヨムじいさんは腕を組んでしばらく考え込んだが、話を聞くことにした。
「お人好しは嫌いじゃないが、人を見る目は養うんじゃぞ?
約束してくれ。」
「わかりました。心配してくれてありがとうございます。
では、お話ししますね。」
「うむ。
念の為、隣のティナに聞こえないように小さな声でな。」
「はい。聞き取りにくかったら言ってくださいね。
まず、初めてモンスターを倒してLv1になった時、★1の【受け身】を覚えました。
そして、Lv2で★1の【成長抑制】。
これはLvアップ時のステータス上昇値が半分になります。
それから、Lv3になった時に★1の【無駄骨】と【民間療法】。
経験値が一切入らなくなるのと、気休め程度の回復効果があるスキルでした。」
ヨムじいさんが口を開いた。
「なんと…。
5つもスキルがあるのに、4つが★1とは…。
しかもマイナス効果があるスキルが2つもあるなんて、聞いたことないぞい…。
両親は期待を裏切ったと言っておったそうじゃが、1番辛かったのはロック自身じゃろうに…。」
短い時間だが、ロックはこうやってヨムじいさんがかけてくれる言葉に救われている。
ヨムじいさんの言葉は、表面的でなく、心から言ってくれているのが伝わるのだ。
「でもですね、モンスターに襲われた時、5つ目のスキルが覚醒したんです。
【スキルスナッチ】というユニークスキルです!
このスキルのおかげでなんとかモンスターから逃げてこれました。
モンスターからスキルを奪うことができたんです。
ガメリオンから★3の【隠密】スキルを奪い、【無駄骨】と入れ替えたんです!」
ヨムじいさんがちょっとひくぐらい驚いている…。
アゴがはずれそう…。
「驚きますよね…。
こんなスキルがあったなんて…。」
ちょっと間があいて、ヨムじいさんは我に返ったようだ。
「びっくりして心臓が止まるとこじゃったわい。
与えられたスキルは変えることができない、というのが常識じゃったが、奪ったうえに、自分のスキルに上書きできるとは…。」
「あの時は無我夢中だったので、とにかくスキルを使って逃げてきましたが、改めて考えるととんでもないスキルですね…。」
ヨムじいさんは、今までになく真剣な目でロックを見据えた。
「ロック。このスキルのことは絶対に他言してはならんぞ。
冒険者登録をしているようじゃが、ギルドでも話してはならん。」
15歳でモンスターを倒してスキルが覚醒した者は、ギルドで冒険者登録をするのが通例だ。
登録すると、ブレスレットを提供される。
冒険者ランクを自動で識別し、ランクによって色が変わるブレスレットだ。
身分証にもなる。
「ギルドでもですか?公式な機関なので秘密は厳守してくれそうですが…。」
一瞬の間があったあと、ヨムじいさんは続けた。
「…とにかく、さっきも言ったようによっぽど信頼できる仲間じゃなければ言わぬように。」
「わかりました…。
それでどうでしょう?
ティナさんを助けることはできそうでしょうか?」
「う~む…。」
考え込むヨムじいさん。
(僕みたいにマイナス効果のあるスキルがあるなら、奪ってあげたらと思ったんだけど…。
違う事情だったのかな?)
「本人にも聞いてみなければなんとも言えんが…。
難しいかもしれんのう…。」
「では聞いてみてください。
僕にできることでしたら、なんでも協力しますので。」
「そうじゃな…。
しかし、今はまずい。
ロックの体調が治るまでに話しておくとしよう。」
ちょうどその時、隣の部屋で食事を作っていたティナの声がした。
「食事できましたので、置いておきます。
では、失礼します。」
ギィ…。
家の扉を開けて出ていく音がした。
「ティナさんは一緒に食べないんですか?」
「事情があっての。
本人と話がまとまったら、それも話すことになるじゃろう。
まずはご飯を食べようか。」
ヨムじいさんが運んでくれ、1日ぶりとなる食事をとることができた。
(美味しい…。生きててよかった…。)
「待ちなさい。」
話そうとするロックを、ヨムじいさんが制した。
「え?なんでしょう?」
「ロック、スキルは人に簡単に教えるものではない。
今回のように、スキルは人をおかしくする。
特にお主は世界でもほとんどいない5つのスキル持ち。
本当に信頼できる仲間以外には教えてはいかん。」
(その通りだ…。だけど…。)
つい最近殺されかけたというのに、警戒心がなさすぎたとロックは忠告を受け止めた。
とはいえ、ヨムじいさんは助けてくれた命の恩人だ。
「そうですね…。気をつけます。ご忠告ありがとうございます。」
ロックはペコリと頭を下げた。
「その上で、僕のスキルのことをお話しさせてください。
ヨムじいさんは本当に信頼できる人ですから。」
その言葉にヨムじいさんは目を丸くした。
「なに!?
わしの言ったこと、本当にわかっとるのか?
会ってすぐの人間を信頼できるなどと…。」
ヨムじいさんは心配そうに、険しい顔でロックをみた。
「はい。
でも、命の恩人を疑うより、信じて生きていきたいです。
もしヨムじいさんに利用されたとしても、後悔しません。
そんなことはないと確信してますけどね。」
ヨムじいさんは照れ臭そうに頭をかきながら、ため息をついた。
「はぁ。この子は…。大丈夫かのぉ。」
心配するヨムじいさんに、ロックはにっこり笑いかけた。
そして、小声で話しかけた。
「お話ししたい理由はもう1つあるんです。
さっきティナさんのスキルに問題がある、っておっしゃいましたよね?」
「うむ。詳しくは言えんがな。」
「もちろん他の人のスキルについて詳しくは聞けませんが、もしかしたらお役に立てるかもしれません。
僕のスキルのことをお話しするので、ティナさんを助けることができるかどうか、ヨムじいさんが判断してもらえませんか?」
「顔も見たことない他人を助けるために、自分のスキルを話すのか。
お人好しじゃのう…。」
ヨムじいさんは腕を組んでしばらく考え込んだが、話を聞くことにした。
「お人好しは嫌いじゃないが、人を見る目は養うんじゃぞ?
約束してくれ。」
「わかりました。心配してくれてありがとうございます。
では、お話ししますね。」
「うむ。
念の為、隣のティナに聞こえないように小さな声でな。」
「はい。聞き取りにくかったら言ってくださいね。
まず、初めてモンスターを倒してLv1になった時、★1の【受け身】を覚えました。
そして、Lv2で★1の【成長抑制】。
これはLvアップ時のステータス上昇値が半分になります。
それから、Lv3になった時に★1の【無駄骨】と【民間療法】。
経験値が一切入らなくなるのと、気休め程度の回復効果があるスキルでした。」
ヨムじいさんが口を開いた。
「なんと…。
5つもスキルがあるのに、4つが★1とは…。
しかもマイナス効果があるスキルが2つもあるなんて、聞いたことないぞい…。
両親は期待を裏切ったと言っておったそうじゃが、1番辛かったのはロック自身じゃろうに…。」
短い時間だが、ロックはこうやってヨムじいさんがかけてくれる言葉に救われている。
ヨムじいさんの言葉は、表面的でなく、心から言ってくれているのが伝わるのだ。
「でもですね、モンスターに襲われた時、5つ目のスキルが覚醒したんです。
【スキルスナッチ】というユニークスキルです!
このスキルのおかげでなんとかモンスターから逃げてこれました。
モンスターからスキルを奪うことができたんです。
ガメリオンから★3の【隠密】スキルを奪い、【無駄骨】と入れ替えたんです!」
ヨムじいさんがちょっとひくぐらい驚いている…。
アゴがはずれそう…。
「驚きますよね…。
こんなスキルがあったなんて…。」
ちょっと間があいて、ヨムじいさんは我に返ったようだ。
「びっくりして心臓が止まるとこじゃったわい。
与えられたスキルは変えることができない、というのが常識じゃったが、奪ったうえに、自分のスキルに上書きできるとは…。」
「あの時は無我夢中だったので、とにかくスキルを使って逃げてきましたが、改めて考えるととんでもないスキルですね…。」
ヨムじいさんは、今までになく真剣な目でロックを見据えた。
「ロック。このスキルのことは絶対に他言してはならんぞ。
冒険者登録をしているようじゃが、ギルドでも話してはならん。」
15歳でモンスターを倒してスキルが覚醒した者は、ギルドで冒険者登録をするのが通例だ。
登録すると、ブレスレットを提供される。
冒険者ランクを自動で識別し、ランクによって色が変わるブレスレットだ。
身分証にもなる。
「ギルドでもですか?公式な機関なので秘密は厳守してくれそうですが…。」
一瞬の間があったあと、ヨムじいさんは続けた。
「…とにかく、さっきも言ったようによっぽど信頼できる仲間じゃなければ言わぬように。」
「わかりました…。
それでどうでしょう?
ティナさんを助けることはできそうでしょうか?」
「う~む…。」
考え込むヨムじいさん。
(僕みたいにマイナス効果のあるスキルがあるなら、奪ってあげたらと思ったんだけど…。
違う事情だったのかな?)
「本人にも聞いてみなければなんとも言えんが…。
難しいかもしれんのう…。」
「では聞いてみてください。
僕にできることでしたら、なんでも協力しますので。」
「そうじゃな…。
しかし、今はまずい。
ロックの体調が治るまでに話しておくとしよう。」
ちょうどその時、隣の部屋で食事を作っていたティナの声がした。
「食事できましたので、置いておきます。
では、失礼します。」
ギィ…。
家の扉を開けて出ていく音がした。
「ティナさんは一緒に食べないんですか?」
「事情があっての。
本人と話がまとまったら、それも話すことになるじゃろう。
まずはご飯を食べようか。」
ヨムじいさんが運んでくれ、1日ぶりとなる食事をとることができた。
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