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第一章 拒絶と旅立ち

第1話 期待と裏切り

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「せっかくここまで育ててやったのに、恩知らずなやつめ。」

優しかったはずの両親が、なんの感情も無い冷たい目でロックを見下ろしている。

みなしごのロックを育ててくれた義理の両親。
ここ最近はちょっと冷たいと感じることはあったけど、愛してくれているとロックは思っていた。
それなのに…。

後ろは崖。
落ちたら命はない。

「安心しろ。殺しはしない。」

「そうだよね!悪い冗談はやめてよ…。」

「殺すと都合が悪いからね。モンスターに襲われてもらうわ。」

スパッ!

「え…?」

父の振るった剣により、足から血がしたたる。

「痛いっ…!なんで…?」

「モンスターから逃げられないようにな。」

「な、なんで…!なんでこんなことするんだよ!?」

「自分でわかってるわよね?私たちもここまで期待を裏切られるとは思っても見なかったわ。」



----------------



そう。
原因はわかっている。
ロックのスキルだ。

この世界では、1000人に1人くらいの割合で【スキル】が覚醒する。
覚醒するスキルの数は人によって違って、1つから5つまで。
15歳になって、モンスターを倒した時にLv0からLv1になり、ステータスが見えるようになる。

これが最初に出てきたロックのステータスだ。



************

名前:ロック
Lv:1
HP:120
MP:15
体力:12
力:11
素早さ:12
器用さ:10
魔力:13
スキル:
【受け身(パッシブ) ★】
【?????】
【?????】
【?????】
【?????】

************



ステータス値は悪くない。

問題はスキルだ。

スキル枠は5つ。
これは世界中でも数人しかいない。
世界を救う希望として、大事に育てられた。

ところが、1つ目のスキルは【受け身】。

★はレア度。
こちらも1つから5つまで。

つまり、【受け身】は最低レア度のスキルだ。
ちなみに、「受け身をすごく上手にとれる」という効果がある。
パッシブスキルなので、意識しなくても勝手に発動してくれる。

だが、まだ望みはまだ4つあった。
スキルはレベルが上がることで覚える。

ところが、

Lv2で覚えたスキルは



++++++++++++

【成長抑制 ★】・・レベルUP時のステータス上昇値が半分になる。

++++++++++++



なんと、珍しいマイナスの効果があるスキル。
珍しいが、レア度は最低。

この頃から周りの態度がきつくなった。
唯一幼馴染のミラだけが優しく支えてくれた。
両親も冷たくなってきたが、まだちゃんと接してくれていた。

そして、今回の遠征。
Lv3になった僕は2つのスキルを覚えた。



++++++++++++

【無駄骨 ★】・・経験値が一切獲得できない。
【民間療法 ★】・・怪我をした時に、すこーしだけ回復する気がする。「唾をつけとけば治る」程度。

++++++++++++



またしてもマイナス効果、それも絶望的なスキルとゴミのようなスキルのセット。

残り1つのスキルがどんなに良くても挽回不可能。
そう判断されたのだろう。

そうして、今の状況に至る。



-------------------------



「お、モンスターがやってきたぞ。母さん、岩陰に隠れるぞ。」

「ま、待って…!」

やってきたのは、吸血ヒヒ。
血を吸うのが好きで、血の匂いがするとやってくる猿のようなモンスター。
そこまで強くはないが、Lv3のロック1人では歯が立たない。

「助けて!助けて父さん、母さん!!!」

当然のように助けには来ない。

ニタニタしながら近づいてくる、吸血ヒヒ。

「く、くるな!!」

その辺りに転がってる石を投げつける。

が、当たらない。
当たったとしても怒りを買うだけ。

わかってるが、恐怖と傷の痛みで立ち上がれないロックにできる、唯一の抵抗だ。

吸血ヒヒは楽しむように、ゆっくりと近づいてくる。

あと数歩。

父さんと母さんが走って行った方を見る。
こんな状況になっても、まだ信じられない。

(きっと、なにかの冗談なんだ。
 助けてくれるに決まってる!)

「ひっ…!!」

そう思い、吸血ヒヒの方を向くと、もう目の前に。

「うわぁぁぁああああああぁぁぁぁぁ…!!」

思わず後退りしたロックは、そのまま崖から落ちてしまった。

「…落ちたわね。」

「これで助からんだろう。万が一助かったとしても、あいつのスキルとレベルでは生きて出られん。」


こうして、ロックは大好きな育ての親に殺された。
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