上 下
24 / 34

24、彼女の今後

しおりを挟む
 結論とは何のことだろうか? 今回の面会の目的は、彼女の企みを知りたいというのもあったが、あくまでも僕の心残りがないように彼女と別れを告げる事が第一だったはず。

「ふふ、あの何の価値もないクズ以下の、今後についてだ。君はすでに気付いているだろう? ライと共に私も隣室でこの部屋の会話を聞いていた。この面会について息子から聞いた時、あの何の価値もないクズ以下…もう長いから息子を習ってアレと呼ぼうか。とにかくアレの今後について、今のまま監禁だけで済ませていいのかどうか、改めて考える良い機会だと思ってね。と言うのも、事前に調査をしてアレの事は大体把握していたが、実際に会った事は片手で数えられる程しかなく、私の前ではキャメル伯爵夫妻やライラ嬢の慣れたフォローがあったから、最後にしっかり当人を見極めておくのも必要だろう? それと今になって君に会いたがる理由も知りたかったしね」

 疑問が顔に出たのか、アンドレア侯爵が説明してくれた。なるほど、と僕は納得したが、隣のライがこっそり『本当はアレの性格を把握していたからこそ、アレが何かしでかさないかルーが心配で見に来たんだぜ』と囁いてきた。

「ラインハルト、内緒話はもっと隠れてしなさい」

 …まぁ、こっそりも何も目の前に居るのだから丸わかりだろうけど。ライに注意する侯爵の顔は真顔だが目は楽しそうにしているので、大丈夫だろう、たぶん。

「それで、アレについてだが…そもそも除名処分と領地での監禁程度で済ませていたのは、アレがまだ若い娘であり、教育を大失敗したアレの元祖父母と元親の方にも責任があると判断したからだ。これは公表していない事だが、キャメル伯爵夫妻には早々にライラ嬢に家督を継がせ、隠居するよう伝えてある。前伯爵夫妻に至っては、少し事情があって自害出来ないよう監視し生かしてあるだけだ」

「え、それ俺も初耳なんだけど?」

「うむ、今言ったからな。まぁこれは当主となるライラ嬢が優秀であるから出来た事だ。キャメル伯爵夫妻もすでに同意し準備している。前伯爵夫妻に至っては、キャメル伯爵家に任せてあるのは監禁場所の提供とその監視役だけで今後どう扱うかは、王家派こちらで決める」

 僕も驚いたがライも驚いていた。でも、そうか。彼女を切り捨てる事でアンドレア侯爵はその怒りをとは言っていても、キャメル伯爵家に責任を取らせないとは言っていない。

「今回の事でアレの本質が良く分かった。アレを教育するなら、まだ野良犬を教育した方が楽だろう。キャメル伯爵夫妻には運が悪かったとしか言えないね。それに私としては一切許すつもりはないが、わざわざ面会を望むのだから謝罪の一つでもあればいいと思っていた。しかしアレは、最後まで一度も君に謝罪しなかったね? やっと今の己の立場について少しは理解出来たようだが、アレは未だに反省も何もなく、何の自覚さえもしていないままという事だ、全く性質が悪い。きっと今日あった事は日が経てば忘れるか、自分の都合の良いように事実を脳内で作り変えてしまい、演劇や恋物語で出てくる『悲劇のヒロイン』として振舞うだろうさ。監禁は隔離の意味が強いが、これまでを反省し後悔しながら残りの人生をみじめに生きる為の罰だと言うのに、勝手に『悲劇のヒロイン』だと思い込み、夢の世界で楽しく生きられては何の意味もない」

 うわぁ、『悲劇のヒロイン』か…彼女ならあり得るな。悪いのは周囲で彼女自身は悪くないと考えるだろうから、何なら彼女の中では僕が彼女を不幸にした悪役になりそうだ。

「よって、アレは、私はそう判断した」

 侯爵はそう告げると、カップを持ち上げお茶を一口飲んだ。

「とは言え、現在アレに一番怒りを抱いているのは、君だろう、ルーベン君。君は、どう思うかね?」

 ライと侯爵の視線が僕に集まる。僕の意見を正直に言ってしまっていいのだろうかと思ったが、元々ライラとライの二人に僕から頼もうと思っていた事があるのだ。それが叶うかどうかは別として、意見を求められているならここで言ってしまおう。

「僕…いえ、失礼しました。私の考えとしましては――」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫にビッチ認定された夫人は本物のビッチになろうとしたのになぜかイケメン公爵令息の看護人になりました

サイコちゃん
恋愛
病弱なパトリシアはその美しさを妬まれ、淫売だの毒婦だの嘘を言われてきた。しかも結婚相手であるオスニエルはその嘘を真に受け、パトリシアはお飾りの妻で、自分は処女の愛人を作ると宣言した。さらにパトリシアの服を裂き、手術跡を汚いと罵る。我慢の限界を迎えたパトリシアは愛人を作る宣言をしてパーティへ向かった。そこで手術を怖がっている公爵令息を紹介され、看護人の振りをしながら手術へ踏み切らせるように頼まれるのだが、その仕事に夫オスニエルがついてきた。しかし非常識なオスニエルを公爵令息サディアスがけちょんけちょんに扱き下ろす――

【完結】豊穣の聖女な私を捨てない方がいいと思いますよ?あっ、捨てるんですか、そうですか・・・はーい。

西東友一
恋愛
アドルド王子と婚約し、お祝いに必要だからと最高の景色と最高の料理のために、花々や作物に成長魔法を掛けろと言われたので、仕方なく魔法をかけたら王子に婚約破棄されました。 あの~すいません、私の魔法の注意事項をちっとも聞かなかったですけど、私はいなくなりますよ? 失礼します。 イラストはミカスケ様(イトノコ様)の物を使用させていただいてます。(7/8より) 私は見た瞬間感動しました。よろしければ、絵師様も応援してあげてください。 ※※注意※※ ・ショートショートから短編に変更です。まだ私の実力ではショートショートは難しいようです。  25話以内に収まる予定です。お忙しい皆様本当にごめんなさい。 ・一部過激性的表現と思われるかもしれません。 ・ざまぁへのための布石で、不快な思いをされる方がいるかもしれません。 ・朝見るものじゃないかも。深夜にアップするので深夜に見てください?いや、皆さんは目が肥えているから大丈夫かも? ・稚拙な内容でこんな程度で、ここまで注意書きするなよって、なるのが一番申し訳ないかもです。

事情があってメイドとして働いていますが、実は公爵家の令嬢です。

木山楽斗
恋愛
ラナリアが仕えるバルドリュー伯爵家では、子爵家の令嬢であるメイドが幅を利かせていた。 彼女は貴族の地位を誇示して、平民のメイドを虐げていた。その毒牙は、平民のメイドを庇ったラナリアにも及んだ。 しかし彼女は知らなかった。ラナリアは事情があって伯爵家に仕えている公爵令嬢だったのである。

幼馴染みに婚約者を奪われ、妹や両親は私の財産を奪うつもりのようです。皆さん、報いを受ける覚悟をしておいてくださいね?

水上
恋愛
「僕は幼馴染みのベラと結婚して、幸せになるつもりだ」 結婚して幸せになる……、結構なことである。 祝福の言葉をかける場面なのだろうけれど、そんなことは不可能だった。 なぜなら、彼は幼馴染み以外の人物と婚約していて、その婚約者というのが、この私だからである。 伯爵令嬢である私、キャサリン・クローフォドは、婚約者であるジャック・ブリガムの言葉を、受け入れられなかった。 しかし、彼は勝手に話を進め、私は婚約破棄を言い渡された。 幼馴染みに婚約者を奪われ、私はショックを受けた。 そして、私の悲劇はそれだけではなかった。 なんと、私の妹であるジーナと両親が、私の財産を奪おうと動き始めたのである。 私の周りには、身勝手な人物が多すぎる。 しかし、私にも一人だけ味方がいた。 彼は、不適な笑みを浮かべる。 私から何もかも奪うなんて、あなたたちは少々やり過ぎました。 私は、やられたままで終わるつもりはないので、皆さん、報いを受ける覚悟をしておいてくださいね?

砂糖漬けの日々~元侯爵令嬢は第二王子に溺愛されてます~

恋愛
魔界の第二王子ヨハンの妃となった侯爵令嬢エウフェミア。 母が死んですぐに後妻と異母妹を迎え入れた父から、異母妹最優先の生活を強いられる。父から冷遇され続け、肩身の狭い生活を過ごす事一年……。 魔王の息子の権力を最大限使用してヨハンがエウフェミアを侯爵家から引き剥がした。 母や使用人達にしか愛情を得られなかった令嬢が砂糖のように甘い愛を与えられる生活が始まって十年が過ぎた時のこと。 定期的に開かれる夜会に第二王子妃として出席すると――そこには元家族がいました。

私のせいで婚約破棄ですか? 思い当たることがないのですが? 番外編

柚木ゆず
恋愛
私のせいで婚約破棄ですか? 思い当たることがないのですが? の番外編(補完編)です。

天才少女は旅に出る~婚約破棄されて、色々と面倒そうなので逃げることにします~

キョウキョウ
恋愛
ユリアンカは第一王子アーベルトに婚約破棄を告げられた。理由はイジメを行ったから。 事実を確認するためにユリアンカは質問を繰り返すが、イジメられたと証言するニアミーナの言葉だけ信じるアーベルト。 イジメは事実だとして、ユリアンカは捕まりそうになる どうやら、問答無用で処刑するつもりのようだ。 当然、ユリアンカは逃げ出す。そして彼女は、急いで創造主のもとへ向かった。 どうやら私は、婚約破棄を告げられたらしい。しかも、婚約相手の愛人をイジメていたそうだ。 そんな嘘で貶めようとしてくる彼ら。 報告を聞いた私は、王国から出ていくことに決めた。 こんな時のために用意しておいた天空の楽園を動かして、好き勝手に生きる。

継母や義妹に家事を押し付けられていた灰被り令嬢は、嫁ぎ先では感謝されました

今川幸乃
恋愛
貧乏貴族ローウェル男爵家の娘キャロルは父親の継母エイダと、彼女が連れてきた連れ子のジェーン、使用人のハンナに嫌がらせされ、仕事を押し付けられる日々を送っていた。 そんなある日、キャロルはローウェル家よりもさらに貧乏と噂のアーノルド家に嫁に出されてしまう。 しかし婚約相手のブラッドは家は貧しいものの、優しい性格で才気に溢れていた。 また、アーノルド家の人々は家事万能で文句ひとつ言わずに家事を手伝うキャロルに感謝するのだった。 一方、キャロルがいなくなった後のローウェル家は家事が終わらずに滅茶苦茶になっていくのであった。 ※4/20 完結していたのに完結をつけ忘れてましたので完結にしました。

処理中です...