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第六話 フレアの現在

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 結婚して半年ほど時間を置いてから公爵夫人として夫と供に夜会に出るようになり、周囲に認められるよう積極的に暮らしておりました。


 そして、結婚一年目となりお祝いのパーティーを開く話が出て、お互いに再婚ですし不要だと伝えたのですが、フラット様だけでなく夫も乗り気で、こうして公爵家主催でパーティーを開くこととなりましたの。


 親族や友人達に限らず、夫の仕事の関係者も招待しておりましたので、招待客に大臣の補佐官である元夫の名前もありましたが、仕事でもないパーティーに参加するとは思っていなかったのですが、まぁ立場もありますしね。


 そうして、今。少し休息をと護衛兼メイドの一人と共にテラスへ向かえば、元夫に声を掛けられ改めての挨拶となった訳です。


 元妻であったことを告げてから、元夫であるコルド様は固まってしまい、言葉どころか動きさえありません。


 …この場合、どうしたらよいのでしょうか。私としてはこれ以上話すようなこともありませんし。かと言って、この状況で立ち去るのも変ですし…。



「そ、の話は、ほ、本当に…?」



 お茶の一杯は充分に飲めるほどの時間が過ぎて、ようやく動いてくれました。が、問われた内容は私の言葉を疑うもの。


 私、そんなに信用がないのかしら?



「えぇ、本当のことですわ」


「あ、貴方が、僕の妻…?」


「元、ですわ。コルド様。白い結婚の証明がされ、コルド様からの申し出により離縁が成立しましたので、もうとっくに貴方の妻ではありません」


「そ、それは…!」



 …あぁ、そうだ。これだけは伝えておくべきでしょう。



「コルド様。私と離縁して頂き、感謝致します」



 きっとあのままこの方の妻であり続けていれば、いつまでたっても私は幸せにはなれなかった。コルド様にとっても、顔さえ覚えてもいない元妻の私が、いつまでも妻の座に居座ったままでは良くないことでしたでしょう。


 白い結婚でしたがそれでも離縁と言えば、良いイメージはありません。しかし、今こうして実際に幸せを感じられるきっかけの一つとなった以上、私は感謝の気持ちを伝えるべきでしょう。
心からの笑顔と共に、私は感謝の言葉を伝えました。



「っ…!」



 …また固まってしまわれたわ。先程と同じように動きがあるまでしばらく待つことも考えましたが、コルド様も挨拶しに来られただけのようですし、そろそろパーティーに戻らなければ。


 休憩にはなりませんでしたが、気分転換にはなったと思いましょう。



「それではご機嫌よう」



 メイドに目配せをし、パーティーに戻る為にコルド様の横を通り過ぎようとして、気付きました。


 私の夫がコルド様の後方から、こちらに向かってきていることに。



「あ…ッ、!?」



 思わず足を止めたと同時に、私は腕を誰かに捕まれました。突然の痛みに声をあげそうになりましたが、そこは淑女としてグッと堪えます。



「フレ…」


「私の妻に何故触れている? すぐにその手を離しなさい、コルド・アットソンナ」


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