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5、モナと勉強会
しおりを挟む部屋の前で入れるよう命じても、王宮騎士達は頑として動かず、扉前に立って私の邪魔をする。騒いでいたら父からの使いが現れ、このまま王太子宮に戻るか、授業の邪魔をしないと誓いこの部屋に戻るか、選ぶよう言われた。
この扉の向こう側にようやく会えた愛しいモナがいるのだ。答えは一つしかないではないか。
私は、誓いを立て部屋に戻った。誓いの書にサインまでさせられ、これを破れば父より罰が下されると言われたが、仕方がない。中に入るとモナはすでに資料らしき物を机に並べ、教師の言葉に耳を傾けているようで、私を見る事もなかった。
室内を見回せば、モナの隣に机と椅子が並べられており、そこが私の席なのだろう。そのまま座って、隣のモナを見つめる。モナは笑顔が一番だが、真剣な表情もいいな。出来ればその瞳に私を映してくれないか、そう思ってそっと手を伸ばすと、ビシッと私の机に何かが当たる。私は驚いて手をひっこめた。見れば別の教師が乗馬の際に使われる鞭を持って私の傍に立っていた。モナにちょっかい出そうとするとその鞭で机が叩かれるようだ。
王太子であるこの私に鞭を向けるとは何事かと怒れば、先程サインしたばかりの誓いの書を見せられた。誓いの書には、私に鞭を振るう事の許可が記載されており、それを拒否するなら退室だと言われた。そんなの知らない、騙したのか、と言えば、事前に誓いの書の内容は良く見るよう言われた事で、サインした以上、内容の撤回は不可能であると返された。
いくら私が無効だと叫んでも、では退室を、と促されるだけ。父に言いつけると言っても、この誓いの書の内容は国王夫妻が認めたモノだと言われてしまい、どうにもならない。こうなったらとモナを部屋から連れ出そうとしたら、また王宮騎士を呼ばれたので慌てて席に戻る。結局、モナと共に居る為に授業を受けるしかなかった。
そんな私の事を無視するかのように授業は進められていた。授業内容は我が国の政策についてで、税収がどうの、他国からの輸出量と輸入量がこうのとそれを知って何になるのかと疑問に思う内容だった。時折私も教師に何々のこうした事例の場合どうした政策を取るべきかと問われたが、問いの意味が分からず答えられなかった。しかし、モナに教師が問えばある程度答えていた。モナはすごいなと思ったが、私より賢いように見えるその様に、元婚約者の影が重なった気がした。
授業はどんどん進み、合間の休息も精々お茶を一杯飲む程度しか時間が無かった。自然と私とモナの会話より、モナと教師共の会話の方が多くなる。とてもイライラした。授業中も休息中もモナを眺めているぐらいしか出来ないのだ。触れる事も長く会話する事も出来ず、これでは生殺しではないか。
楽しみにしていたモナとの昼食の時間も、マナーの授業となっておりマナーを失敗すればモナにも鞭が向けられる。直接当たることはないが、音を聞くだけでも身体が強張るのだ。止めろと言いたいが、私も幼い頃は食事の際のマナーだけは同じように身に付けさせられたので、まだマナーが拙いモナに心の中で応援を送る事しか出来ない。
昼食が終われば、また授業だ。授業はいつ終わるのかと問えば、夜遅くまで続くと言われた。では一体いつになれば、私は愛しいモナとイチャイチャ出来るのか。つい勢いで教師共に聞けば、そんな時間の余裕はありませんときっぱり言われてしまった。モナはそんな私を見て、ごめんなさい、と口にした。…元婚約者のように、薄く笑みを浮かべた顔で。
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