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第八話

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ソンタラー公爵夫妻は、ミラン殿下を信頼していたので、将来的な話であれば、受けてもよいと考えた。
ただ、年齢的には、婚約はした方がよかった。
セレナはまだ判断がつかないだろうから、ふたりが決めてしまうしかなかった。

とはいえ、番であるなら、結婚以外の道はない。ミラン殿下の気が狂ってしまっては困る。番に巡り会うことが奇跡なのだ。その番と結ばれない獣人は気が狂ってしまう。ミラン殿下がいかに理性的であっても、こればかりはしかたない。

「殿下。セレナは今はつらいことがあったばかりで、本来の姿ではないのです。今、注目を浴びるのは、またつらいと思います。半年ほど時間をいただきたいのです」
ミラン殿下は、ため息をつきつつも、
了承した。

セレナの半年間は、大忙しだった。
まずは栄養のある食べ物、適度な休憩とゆったりした睡眠。その間に、テーブルマナーなど、生活の中でのマナー。それができるようになると、舞踏会でのマナーとダンス。
健康を取り戻しつつ、ゆっくり令嬢としての教育が行われた。

その間もミラン殿下は通ってきた。
でも、最後の1か月。ミラン殿下は出入り禁止になった。セレナも夫妻も、殿下を驚かせたかったのだ。
セレナは覚えがよかった。マナーもダンスもどんどん上手になる。
見た目もかなり変わった。
最後の1か月が過ぎて、ミラン殿下がすごく慌てて現れた。

「セレナ?」
殿下を迎えた令嬢は、まだ幼いものの、美しかった。最初に会ったときとはまるで別人だ。おじぎも所作も美しい。
ミラン殿下は、セレナの前に跪き、
「結婚してください」
と真剣に言った。

「殿下。まだ婚約で勘弁してくださいな」
「成人したら、結婚に反対はしないから」
ソンタラー夫妻はニコニコ笑顔で告げた。
セレナは、いろいろ教育も受けたけど、座学は半分くらいしか理解できていないので、番についてはよくわかっていなかった。
「セレナ、ダメかい?婚約してほしい」
ミラン殿下の懇願に、三食おやつ付きを思い出しながら、答えた。
「殿下のお申出を、お受けします」

将来、番であるセレナにミラン殿下がメロメロになり、大騒ぎを引き起こすのは別の話。
今回はここまで。さようなら~。
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