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第一話

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私が望んで、できないこと?
そんなのあるわけないでしょう。
お父様もお母様もお兄様もお姉様も、
必殺上目遣いでお願いすれば、意のまま。
もっと小さいときから、ずっとそう。
私は世界の中心にいるの。
できないことなんて一つもないわ。

「フェリカ、お誕生日おめでとう」
7歳になったの。
家族みんなからプレゼントをもらったわ。お父様から宝石、お母様からドレス、お兄様から靴、お姉様からは刺繍入りハンカチ。
みんな大好きなものばかり。
笑顔でお祝いしてくれる。
私は無敵よ。
「ありがとう、みんな」

7歳になると、神殿に行って魔力の質と量を確認するの。もちろん私も家族そろって行くのよ。
我が家は、お父様が火属性、お母様が水、お兄様は火、お姉様は水。だから、私もどっちかだろうと言われているの。
楽しみだわ。
神殿は混んでいた。身分関係なく順番に並ぶの。
水晶に手を当てると、神官さまが読み取った情報を家族に告げるの。

私の番までかなりかかったわ。眠くなって途中でうつらうつらしちゃった。公爵家の娘としてはだめだわ。いつもちゃんとしてなきゃ。
「さ、こちらに手を」
かざしてみると、水晶は虹色に輝き出した。あまりのまぶしさに、目をつぶった。
「光属性、魔力はこの計測器では足りないので、少しお待ちください」
結局計ってみたら、普通の人の20倍で、
魔法師団長クラスだと言われたわ。

ともかく疲れちゃった。
光属性なのは不思議だけど、お父様が専門の家庭教師をつけてくれることになり、うれしい。
たくさんワガママを言うのにも、光属性の魔法は役に立ちそうだもの。
確か、回復、治癒、防御の魔法なのよね。3つとも使えるようになりたいわ。
「お嬢様、おめでとうございます」
専属侍女のメリナがうれしそうにして、目を輝かせていた。
「私のお嬢様が光属性の魔法使いなんて、メリナはいろんなところで自慢したくてしかたありません」

そういえば言い忘れてたけど、家族だけじゃなくて、使用人も私にメロメロよ。
やっぱり顔が可愛いからかしら。
どんなワガママを言っても、メリナは工夫して叶えてくれる。
他の侍女もそうなんだけど、メリナは特に熱烈だわ。
家族はわかるけど、侍女はなんでこんな感じなのかしら?
お茶を何度も淹れ直させたり、ドレスを選ぶだけに2時間付き合わせたり、私は好きにやってるんだけど。
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